第5話 過去の雑な扱い
「え? さ、サポーター?」
俺はギルドのカウンターで今までこなしたクエストの履歴を確認してもらって、衝撃の事実を目の当たりにしていた。
パーティでクエストに挑むとき、パーティメンバーとは別にサポーターという人をつけることができる。
アイテムを使った補助や、魔物の解体をしてくれる便利屋のような存在だ。しかし、魔物との戦いには参加しないことから、冒険者の中では軽視される存在だ。
俺はそのスペシャリストのような働きをするサポーターを尊敬しているのだが、どうもそういう裏方はあまり良い目で見られないらしい。
それとは別に、サポーター職のデメリットが二つほどある。
一つ目がサポーター職に支払われるクエスト達成時のお金が少ないこと。もう一つは、冒険者ランクが上がりにくいことだ。
サポーターとして参加したクエストは一回としてカウントされないようになっており、何度も同じランクのクエストをこなすことで、やっと一回としてカウントされるのだ。だから、いくらクエストをこなしても、中々冒険者ランクが上がらない。
「いや、俺普通にクエストに参加してましたよ!?」
「パーティ加入時にサポーターとして登録されてしまうと、その後はずっとサポーターとして扱われてしまいます。もしかしたら、そのときからずっと……」
「……はぁ、まじですか」
そういえば、初めにギース達のパーティに加入させてもらった時、アイテムボックス持ちのことを評価されたんだったな。
初めから俺のことをサポーターとして使うつもりだったのか。
あれだけ魔物退治したときに動いていたのに、それに対する対価もまともに貰えてなかったとは思いもしなかったな。
いや、まだこの機会に気づけただけよしとするか。
「『黒龍の牙』……少しギルドの方でも注意して見るようにしますね」
「いや、もう関わりたくないんで、どっちでもいいです」
「いえ、そう言う訳にはいきません……少し調査が必要ですね」
ミリアは真剣な顔つきで何かを考えると、独り言のような言葉を漏らした。それからすぐに目の前にいる俺に意識を戻して、小さな笑みを浮かべた。
「とりあえず、紹介できそうなパーティがないか見ておきますね」
「ありがとうございます。俺は……何か採取系のクエストでも受けることにしますよ」
「あ、採取系のクエストでしたら、今手元にこんなのありますよ」
ミリアはそう言うと、これから張り出す予定だったのか数枚のクエストが記載されている紙を見せてくれた。
見せてもらったクエストの中で、一番難易度が低いのは薬草の採取のようだった。場所的にも危険そうな場所で行うようなクエストではないようだし、これが一番いいか。
薬草10本採取で4000ダウ。本来、何個か同時並行してやるべきクエストな気もするが、今回は報酬目当てでクエストを受けるわけでもないし、これでいいだろう。
このクエストで自分のスキルについて色々と試してみよう。
「それじゃあ、その薬草のクエストをお願いします」
「薬草? これ、かなり初心者向けのクエストですけど、いいんですか?」
「ええ、急にステータスが上がったんで、色々と試したいことがありまして」
「なるほど。確かに、急にステータスが上がったなら、そっちの方がいいかもしれませんね」
ミリアは俺の言動から、俺が嘘を言っていないと信じてくれたようだった。
ステータスの向上もギース達の件も俺は被害者のようなものだ。最後には少しだけ憐みの目のようなものを向けてくれていた。
こうして、俺は急に上がったステータスと進化したジョブを試すために、クエストにでるのだった。