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第十二話 セバス登場


 本当なのか?
 引き戸になっている門を抜けるのに、4時間掛かっているぞ?罠じゃないぞ、ただの”引き戸”だぞ?

 こいつら・・・。頭は大丈夫なのか?
 いきなり、門を攻撃し始めたときには、何をしたいのか迷ってしまった。

 急遽、引き戸への攻撃で、頭上から石が落ちる罠を配置する。これは、引き戸への攻撃がトリガーになって別の罠が発動するだけの物だが、効果的だ。罠の発動場所を、引き戸の近くではなく、一つの門と引き戸の間でランダムに発生するようにした。

 奴隷っぽい奴らに引き戸を攻撃させていた奴らが、自分の頭上から石が落ちてきて、慌てるのは見ていて面白かった。
 石の大きさもランダムにした為に、法則性を求めているように、やっていた。

 こんな状態が続いて、時間が必要だったのかもしれないが、4時間はかかり過ぎだと思う。引き戸への攻撃が辞めてからも、門を開けようと必死になっていたが、引き戸という発想はなかったようだ。

 奴隷の一人が、引き戸に手をかけた状態で、倒れてやっと引き戸に気がついたようだ。
 しっかりと見ていれば、ヒントは有った。

 それに気が付かないで、倒れるという偶然でやっと突破が出来た。

 最初が、外開き、次が引き戸。最後も外開き。

 今度は、しっかりとしたギミックが仕込んである。
 寄木細工で、門が開くようになっている。引き戸の時と同じように、門を攻撃したら石が落ちてくるようになっている。寄木細工部分への攻撃は落とし穴が発動するようになっている。

 寄木細工の仕組みに気がつくまで、3時間。寄木細工の動かし方は、解った様子だが、パズルという考え方がないのか、軽く動かしているだけだ。攻撃は、さすがにしてこないが、この調子ではパズルを解くまでに数日は必要になるだろう。

 先に進まない。

 監視していたけど、暇だ。
 岩を落として、当たって怪我をする奴がでるが、攻撃を控えるようになると、本当に動きがない。こんな罠は辞めておけばよかった。

 そうだ。
 子どもたちは大丈夫か?

 映像を切り替える。
 まだ寝ているようだ。よかった。奴隷の首輪は、下手に外すとダメと書かれていた。闇スキルを使って、解除出来るらしいが、術者が強いと失敗するらしいが、解除のスキルはノーリスクだと書かれている。

 あまりにも、暇なので、”本”で奴隷やポイントの項目を読みふけっていた。

 うーん。
 従者が欲しいな。俺が出ていくのは、なんか違うけど、子どもたちを導く人材が欲しい。

 ”本”にかかれている魔物を検索する。交換に必要なポイントは増えている。
 現状で、2億ポイントまで増えている。何人か、奴隷や騎士が石に当たって死んだことや、長い間、一箇所に留めていることが影響して増えている。

 子供の前に出すから、獣型や魔物だと認識されやすい物は避けたほうがいいだろう。
 そうなると、人間と同じような姿だけど・・・。

 候補は、ヴァンパイアか獣人の上位互換のような魔物か、魔人だな。

 俺の代わりに、魔王をやらせることを考えると、魔人がいいかな。
 家令のような立ち位置になれるような・・・。

 よし、魔人を召喚しよう。
 本に、やり方が書かれている。魔物を呼び出す方法は2つ。
 一つは、攻略の邪魔を行うために使う。魔物ポットだ。これは、罠の一部で、魔物を定期的に召喚する。必要なポイントは、魔物によって違うが、ポットから召喚される魔物の強さは、ランダムになっていて、設置するときに強さの指定が出来ない。

 もう一つのやり方が、今回の本命で、任意召喚だ。
 ポットでの召喚とちがって、一回だけの召喚だけど、オプションの指定が可能になっている。種族で違ってくるが、タイプを指定してから、オプションを設定する。スキルを覚えるので、必要な技能を覚えさせることが出来る。ポップの魔物は、成長限界が設定されているが、任意召喚では成長限界は設定されていない。上位種への進化も可能だ。

 魔人に、魔王をやってもらおう。悪い考えではない。

 スキル画面ではなく、初めてだから、”本”を使おう。
 召喚した魔物は、主人である俺に従うようになる。

”召喚:魔人”

 スキル画面のように、マスタールームの指定した場所に、魔法陣が表示される。
 魔法陣には、設定を行うようになっている。

 これは、10分以内に決めないと、ランダムで選ばれるようになっている。使うポイントは、1億ポイント。魔人の上限だ。上位ドラゴンに匹敵するポイントだ。エンシェントラゴンの最低値と等しい。

 次は、名前だ。執事と言えば、”セバスチャン”だ。ただ、長いと呼びにくいので、”セバス”にする。真命という項目に、”セバス”と設定する。呼称は省略が出来て、真命と同じ物ではダメなようだ。
 職業は、魔王は選択肢に無かったので、(筋肉)僧侶にする。所謂、モンクだ。魔人で、ヒーラーで、格闘家で、闇スキル使いだ。面白いと思える。

 あとは、知能を高く設定する。ポイントを盛大に使ったからなのか、高い水準でまとめることが出来た。

 ギリギリまで悩んで、召喚を行う。

 魔法陣が光りだした、強く光った。光が収束していく、魔法陣があった場所に、一人の男性?が立っていた。

「マイマスター」

「俺は」「マイマスター。お名前は、わかります。そして、ご尊名は、お名乗りにならないようにお願いいたします」

「それは、なぜ?」

「人の国には、真命を媒介にして支配する呪法があります」

「え?怖・・・。ハウスの主人でも?」

「ハウスが何を意味するのかわかりませんが、魔王様でも支配が可能です。レジストするには、より強い意思が必要です」

「わかった。わりがとう。セバスで大丈夫だよな?」

「はい。マイマスターから頂いた、”セバス”が私の真命です」

 執事服を着ているが、一部が主張している。
 男性かと思ったが、間違いなく女性だ。女性に、俺は”セバス”なんて名前をつけてしまった。それに、男性だと思っていたから、オプションにあった”夜伽”はNGに設定した。罠だな。完全に、罠だ。性別の設定が無かったから気になっていた。でも、男性で夜伽をOKにしていたら・・・。

「わかった。セバス。現状は理解できているのか?」

「マイマスターの記憶を覗かせていただく許可を頂ければ・・・」

「いいよ」

「ありがとうございます」

 セバスが俺に近づいてきて、”おでこ”と”おでこ”を接触させる。
 いい匂いだ。
 記憶・・・。あっ・・・。

「終わりました」

「どうだ?」

「はい。攻め込んできている者たちを殲滅しろと言われたら、実行に移ります。子どもたちの処遇を決めて頂ければ、対処をいたします」

「一人だけど大丈夫?」

「マイマスターが、最大ポイントを使っていただけたので、エンシェンドラゴンでも連れてこなければ、負ける要素はございません」

「あっ・・・。そう・・・。外の連中は、魔王城(仮称)を突破しそうになったら考えよう。それまでは、放置だ。子どもたちを頼みたい」

「かしこまりました」

「うーん。子供たちが居るだけで、ポイントが入ってくるから、希望者は残したいな」

「現状と同じですか?」

「それと、闇スキルを使って、子どもたちの奴隷を解除したい」

「それはよろしいかと思います。解除されれば、入手ポイントが増えます」

「そうか、セバスに闇スキルと鑑定と格納スキルをつけよう。他に、必要なスキルはあるか?」

「あと、身体強化系と耐性系があれば嬉しく思います。あと、手甲があると戦闘で困りません」

「わかった」

 セバスの要望通りのスキルを交換する。 
 武器と防具も聞きながらポイントで交換した。

「あぁ子供たちはまだ寝ているから、寝ている間に、檻の近くに家を作るから、案内と聞き取りを頼む」

「かしこまりました」

 セバスが優雅に頭を下げる。
 夜伽をOKにしておけばよかった。

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