第四話 拡張2
作成は、一瞬で終わった。
マスタールームに居たので、変化に気が付かなかった。
変化は、確実に実行されている。マスタールームが広がっている。
新しく作成した扉もしっかりと作られている。
次は罠だ。
ポイントは、まだ30億以上残っている。維持には、ポイントは必要ないが、再配置が必要な罠にはポイントが必要になる。
残念ながら、マスタールームには”家具”は置けるが、罠の配置が拒否されてしまう。地球から取り寄せる武器を配置するしかない。
罠は、基本な物以外では、先代や他のハウスの当主が設計した物も存在する。他のハウスが設計した罠を配置すると、当主が存命ならポイントが振り込まれる仕組みになっている。罠の特許と言った所だろう。
俺が配置したいと考える罠は、落とし穴を除くと存在しなかった。
設計を行って、申請を行う必要がある。許可を誰がしているのかわからないが、許可されたら、次は公開を【する】か【しない】かの選択だ。俺が討伐された場合には、無条件で公開されるようになる。
部屋の水責めを考えたが、却下された。却下の理由は、説明されないが、ダメなようだ。水責めができるのなら、地下に置いた部屋を水没させておきたかった。進むのに、10分程度必要な長い通路で、墨が流れ出るトラップや、水中で活動できる魔物を配置して、最終的には猛毒を流し込みたかった。
”本”の罠の項目で、気になる物があった。
【転移罠】
任意の場所に転移させる罠。
罠の発動は任意に変更できる。
転移罠を使えば、面倒な通路を作っても問題ないのでは?
試しに、入り口近くに、転移罠を配置する。
条件は、細かく設定ができる。”当主”や”眷属”だけが転移罠を発動する条件になっている。これは、使える。
マスタールームの隣に作った、執事やメイドの待機部屋に繋がる部屋を作る。そこに、転移罠の転移先を設定する。
転移罠を使ったショートカットが出来た。もちろん、転移部屋から、ハウス部分に転移できるようにした。最上階だけではなく、各階に転移先を設定した。
マスタールームの地上部分は、5階建てにした。正直に言おう、デザインセンスが皆無な俺では、城を構築するのは不可能だ。だから、ビルにした。
それも、窓が無いビルだ。外枠だけは作った。気分の問題だ。
広さは、南北に500m。東西に500mだ。ひとまずは、領域を拡張した。700m四方だ。ギリギリの場所に、石壁を設置する。一箇所以上は門を作らないとダメらしいので、適当な場所に門を設置した。
地下には、最上階の入り口近くにある、従者たちの控室(のつもりで作った部屋)に作ったダストシュートから、地下のマスタールームに繋がる場所に
ポイントを使いまくって、罠を張り巡らした。
”罠が承認されました”
いきなり、スキル画面が立ち上がった。
申請していた罠が承認されたようだ。
この罠は、非公開に設定しておく、公開への変更はいつでもできるようだ。公開した罠を非公開にすることは出来ない。
【気体罠】
任意の気体を放出し続ける罠。
単純な罠だ。単純なだけに、凶悪な罠になる。
一見、魔物が出てこなくて、罠もない部屋に、【気体罠】を設置して、探索で疲れた侵入者たちを、二酸化炭素を流し込んで始末する。
セーフティーゾーンは、ラノベではダンジョンに設置されているらしいが、先代たちの情報を読むと、セーフティーゾーンを設置している者は見つけられなかった。セーフティーゾーンという考え方が無いのかもしれない。
その時には、でっかく”休憩所”とでも書いたプレートを部屋に設置するか・・・。
そう言えば、”本”には言葉に関して何も書かれていなかった。
ラノベでは、日本語がそのまま通じるパターンと、勝手に翻訳されるパターンと、言葉は大丈夫だけど読み書きが出来ないパターンと、まったくダメなパターンがあるけど、どれだろう?
あっ!
鑑定と同じでスキルを得ればいいのでは?
スキルの情報を調べると、言語理解というスキルが存在していた。
スキル画面から、言語理解のスキルを取得する。10万ポイントとか、ふざけたスキルだが、必要になる可能性が高いから取得した。
罠だらけにしたビルと広げた領域と同じだけの広さを持つ地下区画。
マスタールームは広くしたが、迎撃を考える部屋ではなくなった。豪奢なベッドと地球から取り寄せた家具や家電。隣接するのは、豪華なシステムキッチン、綺麗で清潔なシャワー付き便座を備えたトイレ、10人は一緒に入ることができる豪奢なお風呂。マスタールームを囲むように、メイドと執事が控える部屋を設置。そこから、地上に繋がる転移部屋設置した。転移部屋からダストシュートで落ちてくる場所は、細長い通路で繋いだ。迷路にはしていない。スキル画面で許される限界まで狭くして天井も低くした通路で繋いだ。グルグルと回ったり、曲がったりしている。
罠は、もちろん【気体罠】だけ魔物も配置していない。距離は測っていないけど、100万ポイントが必要な通路だ。
地下通路は、敷地の四方に作った塔の内部も通るようにしている。
階段を上がって、降りるだけの塔だが、塔だけは外の景色が見られるようにしている。心が休まる場所だ。地下の空気を入れ替えるのに使おうと思っている場所だ。扉は付けていない。重い気体が地下に蔓延すればいいだけだ。水が溜まらないように排水は行っているから、水攻めにもならない。
魔物は配置していない。
先代たちの日記を読んでいると、ゴブリンやコボルトなどの、少ないポイントで交換できる魔物を配置しているのだが、騎士には意味がない。騎士と1対1で対応できるのが、オークになる。しかし、オークは、食料にもなってしまうので、侵入者たちの補給物資になってしまう。食べられない魔物はポイントが高く設定されている。騎士と戦える魔物で、ポイントが低いものは食料になり、高いものは食料にはならないが素材になってしまう。
なので、カプレカは、罠やギミック主体で侵入者を撃退する。
宝物は、置かなければならない設定になっている。中身は、スキル画面から得られる物が中心だが、例外的に地球由来の物も入れることができる。
ギミックハウスとなった、カプレカは、合計4億ポイントを使ってしまった。
まだ、十分なポイントが残されているが、ポイントの残高には注意を払っておく必要が出てきそうだ。
宝物の配置も終わった。使ったポイントの分だけ、宝物の設置が必要だとは思わなかった。
餌がなければ、侵入者は来ない。侵入者が来なければ、ポイントはたまらない。でも、侵入者が多すぎると、攻略されてしまって当主が殺されてしまう。バランスが大事だということだ。
スキル画面を拡大したり、縮小したりして、建物と敷地の不手際がないか確認をする。
4億ポイントを費やした究極のハウスだ。失敗は許されない。
スキル画面の下部に、”保存”という項目が増えている。”適用”とは違うようだ。スキル画面で調べると、作成したハウスの情報を保存しておいて、領域に上書きできるようだ。魔物を配置していないからできる機能だと説明が書かれている。差分を調べて、変更点を元に戻せるような。
そして、保存と適用とは違う”確認”という項目が表示された。保存を行うと出来るようになった。
確認は、欲しいと思っていた機能だ。適用を行う前に、確認を選択すれば、ハウスの問題点がないのか確認してくれるようだ。
明日が、当主になってから、丁度・・・。7日目。
後、数時間後には侵入者が現れる可能性がある。