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第二話 拡張1


 本に書かれていた最後の指示を実行した。
 それは、ポイントを使って、自分自身にスキルを付与することだ。

 何か、罠があるだろうと考えて、その後を読み進めた。

 推奨するスキルが書かれているだけで、その後は本当に、チュートリアルのような内容はなかった。

 チュートリアル以降は、ポイントで交換できる”物”が説明と一緒に掲載されていた。
 魔物やスキルだ。説明も細かく書かれている。

 ”本”が勧めていたスキルは、”鑑定”だ。本の説明では、細かく書かれているが、俺が考えている鑑定と同じだと思って良さそうだ。チュートリアル限定で、0ポイントで交換できるようだ。もし、チュートリアル中に交換しなければ、通常ポイントになる。通常で交換を考えると、90,500ポイントが必要になる。説明も、びっしり書かれている。今までと違って、細かい文字で書かれている。目が痛くなりそうだったので、スキルで表示されるページで読んだが、問題になりそうな記述は見つからなかった。

 スキルから、スキル鑑定を交換リストに入れる。
 前世で慣れ親しんだ”ショッピングカート”だ。右上に出ているカウントダウンの数字に注意しながら、0ポイントで交換できることを確認して、交換を選択する。”本”の説明通りに、スキルは”スクロール”の状態で召喚される。使い方は簡単だ、内容を読めばいい。適正があればスキルを覚える。適正がない人物だと、スキルを覚えないらしい。スクロールは一回だけ利用できる。適正がある人物が読んで、スキルを覚えたら消滅してしまう。”本”にも、ご都合主義で”そういう物”だと考えるようにと書かれている。

 無事に鑑定を覚えることができた。自分自身を鑑定することは不可能だった。”本”の鑑定も同様に不可能だ。

 さて、第494代目当主の日記を読んで感じたことは、7日というのが最初に訪れる問題のようだ。
 先代たちの中にも、7日目に討伐されている者が居る。

 そして、”スキル カプレカ”で表示されるスキル画面の右上には、今もカウントダウンが進んでいる数字が表示されている。現状は、169,720だ。体感で、1秒で1カウント減っている。約2日後に何かが発生するという予告だろう。”本”には説明が書かれていない。気が付かなければ、怠惰に時間を使って、7日目に討伐されてしまう。
 俺はまだ死にたくない。カプレカの敷地内から出られないが、カプレカの敷地を広げればいい。極端な話として、この世界を、全てカプレカの敷地にしてしまえば、俺はどこにでも行ける。流石に、そこまでは無理だろうが、一つの目標として”世界征服”なんて面白いかも知れない。

 冗談は・・・。
 それよりも、生き残るための方法を考えなくては、幸いなことにポイントはまだ40億程度残っている。ポイントの増やし方は、”本”に書かれていた。カプレカの領域への侵入者を【殺す】か【捕らえる】でポイントが入手できる。侵入者には、人類だけではなく、魔物や獣も含まれる。自分が召喚した魔物や、名前を与えた魔物や獣は除外される。簡単に言えば、ポイントで魔物を召喚しても、ポイントは得られない。召喚していない魔物や獣が、カプレカに侵入した場合に、魔物や獣の存在値でポイントを得ることになる。名前を与えるとは、契約することになって、魔物や獣を支配下に置くことになる。相手が受け入れた場合にのみ契約が成立する。”本”には、(当主)からの契約を断る魔物や獣は存在しないと書かれていた。これらの仕組みは、実際に運営を始めてからでも大丈夫なようだ。

 まず、”本”の中から、カプレカの拡張に役立ちそうな情報を調べる必要がある。
 スキル画面には、現状を外側から見る機能がある。表示させてみると、白い箱が存在しているだけだ。その周辺2mくらいがカプレカの領域なのだろう。色が変わっている。
 これじゃ確かに、いきなりドアが出現したら、殺される未来しかないだろう。

 ここからは、スキル画面での作業となる。

 まずは、領域を広げる。2,500ポイントを使って、白い箱の周りを広げる。そして、10,000ポイントを使って、白い箱を地面に埋める。地下1階に変更する。潤沢にポイントがあるからできる所業だ。

 部屋は、繋がって居なければ、存在できない。部屋と部屋はドアで繋がりをもたせる。通路という概念はなく、通路のような部屋を配置する形になる。

 最初の部屋(”本”には、マスタールームと書かれていた)を、広げる。

 地球由来の物は、マスタールームとマスタールームに直接繋がっている部屋でしか、使えない。
 現状だとトイレとキッチンは大丈夫なのだが、キッチンにドアを作って部屋を設置した場合に、新しく作った部屋に移動したら、地球由来の服を着ていた場合には、全裸になってしまう。なので、マスタールームで戦うことを考慮すると広くしておいて、扉を開けられたら”砲撃”するくらいの覚悟を持つ。

 地下に移動したマスタールームから地上に繋がる部屋を用意する。
 地下に作成すると、ポイントが地上に作るよりも必要になってくるが、必要経費だと割り切る。マスタールームに繋がる部屋は、万が一のことを考えて、メイドや執事の控室になるようにした。外に繋がる扉を半包囲するような形にした。万が一、万が一。メイドが雇えたら、マスタールームの近くに居て欲しいと思う。そしえ、万が一、夜の相手をしてもらえたら・・・。妄想が捗る。
 さて、妄想も大事だけど、命の危険を回避することを先に考えよう。先代の日記では、ハーレムを作った者も居たので、参考程度に、そう、防御のために必要な情報を探すために読み込んでおこう。

 控室の部屋には、それぞれのメイドや執事の部屋を作る予定だけど、今は必要ない。俺が一人なのだから、防衛に関係ない部屋を作っても意味はない。

 控えの部屋から外に向かう部屋は、廊下のように細長くした。
 廊下を直角に曲がらせるようにした。外から向ってくる敵に対して、矢を射る罠を設置する。罠は、カプレカに属する者には反応しない。俺が名前を付けた者や召喚した魔物が該当する。人類は、

 地上には、階段を使って出るようにする。
 地上部は、”魔王”らしく、城を模した建物を用意した。地上5階建て、部屋は50を数える。そこに、通路になる部屋が存在している。迷路のように複雑になっている。

 魔王城(仮称)を形だけとは言え作った。次にやらなければならないヒントは”本”に書かれていた。
 入り口を設定しなければならない。外部と繋がる場所だ。設定しないと、全方位から侵入が可能になる。マスタールームに到達できる扉も作らなければならない。作らないと、魔王城(仮称)が初期化されてしまう。”確定”を押す前にしっかりと確認しなければならない。

 第490代目当主の日記には、帝国から兵士が来ていると記述があった。
 カプレカの場所を地図上で確認する。スキル画面で表示を大きくしていけば、隣接する国が判明する。隣接する国は、5つ。全てが、プレシアと名乗っている。帝国・王国・皇国・神聖国・連合国だ。先代たちの日記にも書かれているが、大国に挟まれている状況だ。帝国が領有している。先代が、ポイントで地形を変えたらしいのだが、現在はリセットされている。大きな森の中心に、カプレカが存在している。森は、それほど深くなく、帝国側からだけ道が作られている。森の広さは、カプレカを中心に半径30kmの円状に広がっている。

 現状のポイントを使い切る覚悟があれば、全てをカプレカの領域に設定できる。やらないけど・・・。

 建物と、扉を作った。通路が問題なく、繋がっていることを確認してから、”確定”を押した。

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