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第二話 本?プレゼン資料?


 豪華なベッドで目が覚めた。時計がないので、時間はわからないが、寝て起きても、状況は()()変わっていない。

 これは、困った。
 腹が減って起きたり、トイレに行きたくなったり、生理現象で目が覚めたわけではない。寝返りを何度か行ったのだろう、布団が乱れている。一人で”何か”をやったわけではない。寝返りだろう。起きて、大きくなる男性の生理現象も発生していない。使えるのか?いや、妄想したら大きくなったから使えるのだろう。使えたら嬉しい。

 現実逃避は、ここまでにしよう。

 サイドテーブルを見ると、本が置かれている。
 確認はしていないが、寝る前と何も変わっていない。薄くなっていることもなければ、”本”が俺に話しかけることもない。

 重厚な本の前に立つ。

 よくアニメで見ていた、魔法書と言われるような物に近い。
 魔法陣は書かれていないが、壁にも書かれている不思議な文様が描かれている。

 手を添える。
 残念なことに、頭の中に思念が流れてきて、本の内容を一気に解釈できるような物ではないようだ。
 ”本”なら、索引や目次があるはずだ。

「そうだ!奥付!」

 最後のページを見れば・・・。

 本の最後を見るために、持ち上げようとしたが、重くて・・・。

 ”平”を見るけど、何も書かれていない。タイトルが書かれていたら嬉しかった。天も地も小口も、裁断されていない。アンカットだ。横から見ると、紙質は同じに見える。

 表表紙をめくると、そでがある。表紙にはカバーが掛けられている。帯はない。でも、しっかりとくっついているように見える。
 ”見返し”が、ある。しっかりした作りだ。まともな”本”だと嬉しい。

 ページをめくる。

”当主へ”

 と、書かれている。
 当主?誰のことだ?それにしても、それだけ書かれたページに違和感を覚える。1ページが大きいのに、それだけの情報量だ。ページを捲る。目次でも有ってくれたら嬉しい。

”新しく当主になった君へ”

 ”新しい”が加わった。俺が、当主なのか?
 前のページから、加わった情報はあるが、得られた情報としては変わっていない。

 ページをめくる。

”君が当主だ”


”そう、君だよ”


”なんだ・・・。これ?と、思っているだろう?”


”君は、第495代目当主だ”

 なんだ・・・・。これ?
 一時期、流行った、プレゼン資料を作るメソッドに似ている。


”高○メソッドだと思ったね”


”そう、○橋メソッドだ”

 皆まで書きやがった。
 ページ数を見ると、15になっている。見返しは、0ページで、”当主へ”が1ページ目ということは、目次は用意されていない。


”目次も索引もない”

 おい。意味がわからない。
 100ページ先を開こうにも、一度読んだページしか開けない。


”あっ先のページは見られないからね”

 あぁもう。
 なんだか、イライラする作りだ。プレゼンの時なら、良いけど、本でやられると、イライラする。
 それに、書き方が、どこか”人を見下している”ように読める。


”さて”

 は?


”困惑しているだろう?”

 ・・・。面倒になってきた。


”最後まで目を通してから、実行して欲しい”

 お!
 新しい情報だ。やはり、マニュアルのような意味もあるのかもしれない。


”君が考えている通り、これはマニュアルだ”

 マニュアル?
 俺の考えを読み取っているのか?


”考えは読めない。494名の先代たちの知恵と経験だ”

 それは、どうでもいい。早く、マニュアル・・・。現状を説明してくれ!


”・・・”

 え?なんだ?


”・・・”

 悪かった。どうでもいいとか思っていない。現状を知りたいだ・・・。


”わかった。説明しよう”

 お!
 やっぱり、魔法的な方法で、俺の考えがわかるようになっているのだな。”本”の中の人が考えて答えてくれているのだろう。
 でも、俺ならこう考えるとして、次に”本”が書くことは、”本の中の人はいない”とでも書くな。俺なら、そうする。


”本の中の人はいない”

 うーん。考えが読めていれば、俺の考えのままの返しはおかしい。やはり、考えは読めていないのだろう。


”本当に居ないのだからね!”

 はいはい。もう疲れた。全部を読まないとダメなのか?


”当主様。全部をお読みください。絶対に必要なことです”

 ・・・。


”全部をお読みください。大切なことなので、二度、書きました”

 そうだろうと思った。
 全部を読むのが既定路線なのだろう。他に、手がかりもないし、必要なことだから、全部を読むけど・・・。全部で何ページ?


”ありがとう。この本は、549,945ページです”

 は?


”でも、文字数は63,317,664文字と少ない”

 多い!
 ラノベだと、1冊で5-10万文字だと聞いた。10万文字だとして633冊分?読める気がしない。
 ページ数から考えると、そのくらいの文字数なのだろうけど・・・。めくるだけで体力を使ってしまいそうだ。


”この場所はハウス6174です”

 ん?新しい情報だけど、また意味がわからない。ハウスと言うからには、”家”なのだろう。でも、窓もドアもない。


”この世界は、プレシア”

 お!世界の名前がわかった。”プレシア”よくわからないが、わかった。地球ではないのだな。異世界という認識で良いのだろう。


”異世界です”

 そうか、異世界転生で間違い無いのなら、地球での俺は死んだのだ。


”死んだ保証はありませんが、知る必要は無い”

 ”知る必要は無い”か、たしかに、俺が俺として、ここに存在しているのなら、地球での俺がどうなったかは、必要ではないな。死んでなくて、苦しんでいるのだとしたら、胡蝶の夢でも無い限りは、俺は俺だ。


”プレシアは、新しい世界です”

 ん?いきなり、本当の説明に変わった。


”プレシアは、産まれてから、9967年です”

 本当に若いな。


”神々が作られた世界です”

 それは、そうだろう。9千年くらいで、建物があるような世界は考えられない。


”説明が面倒です。時間や日付は地球と同じです”

 地球と同じ?
 1年は365(6)日で、12ヶ月で、1週間が7日。一日が、24時間。


”その通りです”

 ははは。もういいかな。


”地球人なら、ファンタジーの世界と言えば解りやすい?”

 お!


”変態が多い日本人なら、ラノベの定番と考えろ!”

 変態は無いだろうけど、理解した。いきなり命令口調なのも気にしたら負けなのだろう。
 中世ヨーロッパ程度の文化基準で、ご都合主義、ハーレム要素があり(一夫多妻/多夫一妻)、魔法やスキルがある。魔物も居れば、獣人やドワーフやエルフが居る世界!剣と魔法と冒険の世界!ヒャッハーなスキル!エロバンザイ!貧乳はステータス!


”はい。はい。だから、日本人は・・・”

 本に呆れられた。


”はい。文化は合っていますが、他はハズレです”

 え?


”まず、君はハウスから出られません”

 は?


”敷地内なら可能です”

 敷地?


”君は、495代目の当主です”

 おぉ・・・。だから?


”このプレシアは、産まれてから9,967年です”

 そう書いてあったな。


”ハウスは、プレシアに9,923施設、存在していました”

 ん?過去形?


”現存しているハウスは、83です”

 100分の1以下?
 壊れた?


”ハウス6174の495代目当主”

 え?あっはい。


”君が最後の当主です”

 は?最後?意味がわからない。


”君が討伐されたら、ハウス6174は消滅します”

 え?どういうこと?討伐。それじゃ・・・。


”そうです。君は、人族の敵です”

 ・・・


”討伐対象です”

 ・・・


”地域に寄っては、魔王とも呼ばれます”

 ・・・


”おめでとう!魔王爆誕!”

 ふざけるな!


”ふざけていません。少しだけ戻します。この世界は、9967年です。君は495代目”

 あっ・・・。
 平均で20年?


”平均で20年です。最初の3000年は人族も多くありません”

 え?そうか、一度に多数の人が存在したわけじゃないのだな。


”8000年までは、人類は生きるのに必死でした”

 そうだよな・・・。ん?でも、地球と同じなら、発展も似てこなかったのか?
 あっそうか、魔法やスキルがあるから・・・。科学的な発展はしないし、人としての差が出るから、発展する必要性がなかったのだな。


”直近1000年では、当主は、平均2.7年で交代している”

 え?2-3年で討伐・・・。殺されていると言うのか?


”君の先代。494代目は、7日で討伐された”

 え?7日?今日は、2日目だとしたら、俺・・・。余命5日?


”第495代目当主。君が1日でも1時間でも1分でも1秒でも長く生きられるように、情報を伝える”

 ふぅ・・・。やっと情報に入るのか?


”あっこれから、7,699ページは先代たちの日記(出来事)だから読み飛ばしても構わない。しかし、先代の494代目は読んだほうがいい”

 ・・・。
 わかった。読もう。読んだほうが良いのなら、読んでおこう。

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