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第二十六話 少女驚愕!


 信頼ができる大人?
 イザークたちが聞けば、サンドラさん達の名前を上げるだろうけど・・・。彼女たちは”信頼”はできない。

 ババ様?
 大人で、私たちの話を聞いてくれるのは、ババ様だ。イザークたちは近づかない。大人たちも、ババ様の悪口をいうけど、私には優しいし、いろいろと教えてくれる。間違っていることも有ったけど、ババ様に話をしたら、しっかりと教えてくれた。ババ様が知っていた話が古かっただけで、値段の違いはあるだけ・・・。しっかり、ババ様は謝ってくれた。そして、間違えていた内容を教えてくれて”ありがとう”とお礼を言ってくれた。
 厳しいこともいうけど、私は、ババ様なら信頼できる。

「どうした?」

「あっはい。一人、私に、薬草の事や、食べられる物を教えてくれる人が居ます」

「そうか、今まで、どんな事を教わった?」

 まーさんに、私が今までババ様から教わった事を話した。
 怒られた事や、ババ様が間違えたことを含めていろいろ話した。

 イザークたちも、信頼できる大人を聞かれて、やはりサンドラさんたちの話をしている。

 まーさんは、皆から話を聞いてから、私の方を見た。

「そうか・・・。君の信頼する人に”俺が会いたい”と言ったら会えるか?」

 イザークたちには、サンドラさんたちにも興味はあるが、順番だと言っている。

「ババ様?」

「名前は解らないのか?」

「はい。最初に、自分の事は、”ババ”と呼べと言われて、それから、ババ様と呼んでいます」

「住んでいる場所は?」

「スラムの近くです」

「そうか、俺が会いに行けるか?」

「わかりません。でも、大丈夫だと思います」

「そうか、会って話がしたい。明日には戻るだろう。そうしたら、案内してくれ」

 明日?戻ったら?
 まーさんは、ここで野営するつもりなの?

 イザークたちに話しかける。

「さて、君たちは、解体ができると言っていたよな?」

「うん。ナイフが有れば・・・」

 まーさんが、どこからかナイフを取り出して、イザークに渡した。
 ファイアリザードの解体を指示する。まーさんも解体ができるようだ。そのうえで、イザークたちにやらせている。失敗しても怒らない。何のために?イザークたちを試している?それなら、口出しはしないはず、まーさんの行動が解らない。
 イザークたちの解体を見ている時に、野営の準備を指示された。
 主には、解体したファイアリザードの肉を焼く場所の作成だ。寝る場所は、まーさんが準備をしてくれると言っている。

「準備が出来ました」

 まーさんに、指示された焼き場を作った。これで、本当に有っているのか疑問だったけど、確認したまーさんは合格だと言ってくれた。

 それから、イザークたちがまた騙されていたことが判明した。
 ファイアリザードの買い取りに関して、安いのは”肉”だとまーさんは断言した。

 イザークたちは、肉を貰う時に、”買い取り価格が高い尻尾の肉”を渡されていた。

 イザークたちは、自分たちが騙されていたと納得できないのか、まーさんに食ってかかっていた。

「それなら、食べ比べてみれば解る」

 これほど明確な違いがあるとは思わなかった。
 私たちは、”お肉”は貴重な食べ物だ。イザークたちが貰ってくる、リザードの尻尾肉でも十分においしくて、貴重で、大切に食べていた。でも、首肉やお腹周りの肉に比べると、硬くて、味がしない。尻尾もおいしいけど・・・。
 焼き方だけじゃなくて、切り方でも味が変わった。まーさんは、塩まで振りかけてくれた。それに、塩だけじゃなくて、貴族でもあまり使わないと言われている。”胡椒”まで使ってくれた。

 おいしい。
 イザークたちも夢中で食べている。

 食べているイザークたちを見て・・・。

「どうした?」

「え?」

 まーさんが、膝を折って、私の目線に合わせて話しかけてきた。

「なんでも・・・」

 あれ?
 なんで、涙が?

「そうか、拠点に残っている子たちにも食べさせてやろう」

「え?」

 まーさんは、私の頭に手を置いて撫でてくれる。
 嬉しい。なんで?

 ”怖い”と思っていた。

 周りを見ると、皆が眠そうにしている。

「残った肉は、持って帰ろう。あと、ファイアリザードの素材は、君が持って帰って、ババ様に見せればいい」

「え?」

「俺が持って帰って換金してもいいけど、君たちは素材の価値を知っておいた方がいい」

「・・・」

 年少組は、肉が刺さっていた枝を持ったままで寝ている。
 イザークも、さっきから必死に起きようとはしているけど、寝ているのは解っている。だんだん、目を瞑っている時間の方が長くなっている。

「寝床を用意するか」

「手伝います!」

「いいよ。小さい子を見ていてくれ、イザークと言ったか?彼が起きたら手伝うように言ってくれ」

「起こします」

「いいよ。疲れているだろう。それに、バステトさんが居れば安全だ」

”にゃ!”

 いつの間にか、まーさんの近くに居た猫が、私の足下に来て鳴いている。
 それだけではない。私たちが、ファイアリザードの肉を食べている時には居なかった。

 どこに行っていたのか・・・。周りを見て納得した。
 魔物の山が出来ている。ファイアリザードだけではない。ビックボアも居る。ホーンボアやアルミラージが倒されている。安全という意味も解った。見たことがない魔物も・・・。こんなに、この近くに魔物が居たの?
 まーさんに助けてもらわなければ、私たちは本当に・・・。
 ババ様が、昼間だけだと言っていた理由が解った。

 え?
 テントが出来上がっている?なんで?

 布を取り出したのは解ったけど、まーさんが木の枝を地面に突きさしているだけに見えた。布を被せると、テントになっていた。

「悪いけど、小さい子を移動させてくれ」

「わかりました!」

 私でも抱えられる子から移動させた。
 イザーク以外の子は、移動できた。テントの中は、少しだけ安心できた。

 皆を移動させたら、イザークも起きた(寝ていないと言い張っていた)。自分でテントに移動していった。

「まーさんは?」

「少しだけ予定がある」

「え?」

「君たちをここに呼び寄せるのが目的じゃないよ。元々、ここが目的で着ているからね」

 そういえば・・・。
 私たちが、まーさんの後を付けたから・・・。

「手伝います!」

「うーん。そうだな・・・」

 まーさんが少しだけ困った表情をしています。
 私では手伝えないこと?

「明日、起きたら手伝ってくれるか?」

「え?」

「今日は、バステトさんが狩ってきた魔物の中に目的の魔物が居るか探すだけだからね」

「??」

「頼まれている魔物が居たら、それを持って帰る。居なければ、居なかったと報告するだけ」

「ギルドのお仕事?」

「あぁ違う違う。個人的に頼まれている事だ」

 何か、ごまかされているように感じたけど、”先に寝なさい”と言われてテントに押し込まれてしまった。

 明日は・・・。

---

 寝ちゃった!
 起きていようと思ったのに、イザークたちはまだ寝ている。

 テントから出ると、まーさんが起きて何か作業をしていた。

「ごめんなさい」

「寝られたか?」

「・・・。はい」

「それならいい。昨日の残りがあるから、皆が起きたら朝ごはんにしよう。朝から肉でいいか?果物が良ければ、取って来たものがある」

「え?」

 まーさんが枝で指した方を見ると、果物が置いてあった。
 何時?なんで?

「約束した魔物が居なくて、起きて、身体を動かしがてら森に入って取ってきた。魔物も約束の数が揃えられた」

「魔物?」

「正確にいうと、魔物の核だな。魔石とか呼ばれている物だ」

 もしかして、まーさんは夜に魔石を取り出していた?

 まーさんに聞こうかと思ったタイミングで、イザークたちが起きだしてきて、ごはんになってしまった。
 男子は、肉をおいしそうに食べている。私は、果物も食べたいから、お肉を少しだけにして果物を貰った。甘くて、みずみずしくて、おいしかった。

 まーさんが解体した魔物を運ぶ事になったが、量が多い。

「君以外に、ババ様の店を知っているのは?」

「え?一応、イザークは・・・」

 イザークを見ると頷いているから大丈夫だ。

「ふむ・・・。イザーク。君に頼みがある。報酬は、ここにある魔物・・・。魔石だけは、俺が必要だから、それ以外の全部だ」

 え?
 魔物全部?魔石以外?

「!!」

「今から、俺がババ様に手紙を書く、君はそれをババ様に届けて欲しい」

「それだけか!」

「違う。手紙を読んだ、ババ様の指示に従って欲しい。そうしたら、この魔物を全て君たちに渡そう」

しおり