543 いたいのいたいのとんでけ~?
小鬼ちゃんたちがやって来て数日。今日も畑では
『らいちゃんたちのおかげで、水撒きがとっても楽になったんだな』
『そのぶん、やさいたちのおせわできるようになっただよ』
『やさいたちもよろこんでるんだな』
『『『ありがとなんだな』』』にこにこ
『『『ぇ、ぇへへ』』』てれてれ
ぽぽちゃんたちと、小鬼ちゃんたちのおかげで、ぽやぽやほんわか空気があふれています。
ちなみに、サーヤが作ったゴーレムのごーちゃんたちもすっかり仲良し。最近では小鬼ちゃんたちが水やりをしやすいように、小鬼ちゃんたちを背中に乗せて飛んでくれてます。
癒されたり、感謝してるのは、ぽぽちゃんたちだけじゃありません。
ガーガー
『野菜がつやつやがー』もふ
『生き生きしてるがー』もふ
『ぽぽちゃんたちもがんばってるけどがー』もふ
『小鬼ちゃんたちもすごいがー』もふ』
畑に主張中のがーがーさんたちも、雑草をパクっとしつつ、すれ違う度に自慢の羽毛で、もふっと撫でていきます。それは
さわさわ『ありがとう』
さわわ『たすかる』
わさ『あたらしいともだち、うれしい』
トレちゃん、ゴラちゃん、キャラちゃん達も同じです。枝や葉っぱでやさしく撫でていきます。
『『『ふ、ふわわ』』』てれてれくねくね
『『『ぅぅぅ~』』』ぺたん
でも、こんなにみんなに優しくされたり、触れ合うことにまだ慣れない小鬼ちゃんたちは、嬉しくて恥ずかしくて、ついに真っ赤なお顔を両手で隠してしゃがみこんじゃいました。
そこへ
ぴゅいきゅいと、モモとスイの鳴き声のような音をさせながら、赤い小ちゃいお靴が、しゃがんでる小鬼ちゃんたちの目の前に。
なんだろうと顔を上げると
「らいちゃん、ちゅむちゃん、ひょうちゃん、にゃにちてりゅにょ?」にぱあ
しゃがんで目線を合わせてるサーヤのドアップ!
『『『ふわわっ』』』こてんっ
「ほああっ」
慌ててサーヤが手を伸ばすけど、サーヤの短いおててじゃ間に合わなくて、こてんっと転がっちゃいました。
『大丈夫~?』
ぴゅいきゅい『『ころんじゃった?』』
ハクたち、ちびっこたちも駆け寄ってきました。
『大丈夫か?』ひょいひょい
『どこか痛くない?』ひょい
一緒に来たフゥとクゥが小鬼ちゃんたちを起こしてくれます。
『『『ぁ、ぁり、がと、だいじょぶ、です』』』
『どういたしまして』にこ
『なんともなくて良かったわ』にこ
どうやら大丈夫そうかな?
「ふあっ?ちっ!ごめしゃいっ」
大丈夫じゃなかったみたいです。サーヤがつむちゃんの指から血が出てるのを見つけました。あれ?でも指?肘とかじゃなくて?
『ぁ、ちがう、これ、さっき葉っぱで』
どうやら、お野菜のお世話の時に、葉っぱで切っちゃったようです。
「しょにゃにょ?」
『ぅん』
「しょっか~、じゃあ、いちゃいにょいちゃいにょ、ちょんでけ~」ぽいっ
痛いの飛んでっちゃえ~
サーヤが、おばあちゃんが教えてくれたおまじないを唱えました。
『サーヤ、さすがにそれは···』
クゥがそれじゃ痛いのはなくならないと言おうとすると
『え?待って待って、クゥっ』
フゥから焦るような声が
『え?』
『ぁ、ぁれ?ぃ、ぃたくない?』
つむちゃんが、不思議そうに指を見ると
「ふえ?」
『『ぇ?』』
『『『『『え?』』』』』
な、なんですと?
『ぃ、いたく、ない』
切れてたはずの指がなおってる?
「ふえええええっ?」
『『ぇぇぇ?』』
『『『『『えええええっ?』』』』』
みんなで、思わず大絶叫。さすがに、これには
だだだだだだっ
『なんだなんだ?どうした?』
ずざーっ!
『あらあらまあまあ?サーヤが何かしたのかしら?』
おいちゃんとおばあちゃんが慌てて飛んできました。しかも、おばあちゃんたら、何気に当たってるし。
「ふ、ふええ?」
サーヤ何かした?したのかな?
『ん?なんだ本当にサーヤが何かしたのか?』
『あらあらまあまあ、サーヤ、何があったの?』
「ふ、ふええ?」あわわわ
何がどうなってるのかな?
『サーヤ?あらあらまあまあ?ちょっと落ち着きましょう』なでなで
「ふええ?」
おばあちゃんが落ち着かせようとしてみたけど、あまり効き目がないようです。
『みんな、何があったんだ?』
これじゃ話にならないと思ったおいちゃん。ちびっこたちに聞くと
『サ、サーヤちゃんが、つむくんの指を』
『なおしちゃっただ』
『いちゃいのいちゃいのとんでけ?っていっただ』
ぽぽちゃんたちが代表して説明してくれたけど
『『え?』』
おいちゃんとおばあちゃんも、話に着いて行けません。でも、つむちゃんを見ると
『な、なぃ···』
『『なぃ、ね···』』
三人で呆然と傷が消えた指を見てます。さっきまでたしかに血が出てなのに
『あ、あああ、あの、私、エル様呼んできます!エル様ーっ』ばびゅんっ
フゥがエル様を呼びに飛んで行っちゃいました。
『あ、おれも』ガシッ
『クゥ、どうなってるんだ?』
おいちゃんがフゥを追いかけようとしたクゥの肩をガシッと・・・
クゥ捕まりました。
『え、えっと、オレもよく分からなくて、つむの指からは確かに血が出てたんですけど、サーヤが「痛いの痛いの飛んで行けー」って言ったら、ほんとに傷が消えたんです』
『···おまじないで治しちまったってことか?』
『は、はい。多分?』
『あらあらまあまあ、サーヤったら、やっちゃったのね』なでなで
「ほええ?」
おまじないがほんとに効いちゃった?
〖ふむ。興味深いですね〗にゅっ
「ふぎゃあああっ」
『うわあっ?』
知らないうちにエル様がっ
クゥも一緒に悲鳴上げちゃいました。
『ぜぇぜぇ、よ、呼んで、きましたっ···』
フゥがぜぇぜぇしてます。
『だ、だって、呼んだ途端に転移で先に行っちゃう、からっ』ケホッ
あ~置いてかれちゃったから、慌てて戻って来たんだね。
『ぁ、ぁの、サーヤちゃん、ぁりがと』
呆然としてた、つむちゃん。治してもらったお礼を言ってくれました。
「ふにゅ?」
でも、ほんとにサーヤが治したのかな?
『『間違いないぞ(わよ)』』
そう?フゥとクゥが言うなら間違いないのかな?
『ぁり、がと』
「あい!いちゃいの、とんでっちゃ?」
『ぅん。とんでっちゃった』
「しょっか~。よかっちゃね」
『ぅん。ぁりがと』にこっ
「えへ~♪」
そんなにお礼言われたらてれちゃうな~。でも、痛いのなくなって良かったね。
〖ふむ。確かに魔力の残滓を感じますね。リノとアイナから見ても、いかがですか?〗
『はいですわ。確かに魔力が残ってますわ。けれど、お姉様、これは?』
『ええ。私たちの知る光魔法とは少々違いそうですわね。近くて遠いような、不思議な魔力ですわ』
〖ふむ。実際に見てみたいですね〗
「ふええ?」
実際に?
『実際にってそんな都合よく怪我してる奴なんかいないだろ?』
『あらあらまあまあ、そうよね?』
そうだよね?逆にいたら大変
『あ、あの、そんだら、ちょうどさっき父ちゃんが』
『転んじゃったんだな』
『えんがわでやすんでるんだな』
『いたのか、けが人』びっくり
「ふえ?」
そうなの?それは大変
「おみみゃい」
『あらあらまあまあ、そうね。お見舞いに行きましょう』
「あい」
すぐ行こう!
『そうだな。でも、ぽぽ、そういう時はすぐ俺たちを呼ぶんだぞ。遠慮はなしだ』
〖そうですよ。幸い私を含め、光魔法や治癒魔法を使える者が沢山いますからね。軽いものでしたらハクたちの練習をお願いすることもできますし。次回からはちゃんと教えてくださいね。何より、あなた方はもう家族なのですから〗
『そうですわ。家族が辛い思いをしているのは、みんな辛いですわ。家族はみんなが幸せでなくてわ』
『は、はいなんだな』
『わかっただ』
『これからはすぐいうだ』
ぽぽちゃんたち、おいちゃん、エル様、リノ様に言われて、しゅんってしちゃいました。
とてとて
ぱたぱた
ぎゅっぎゅっぎゅっ
「ぽぽちゃん、つくしちゃん、なずなちゃん、いこ」にぱっ
ぴゅいきゅい『『いこ♪』』にこっ
ぽぽちゃんたちのおててを握って、レッツゴーです。
『『『う、うんなんだな』』』
さあ、ぽぽちゃんのお父さんのところに行こう♪
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
お読みいただきありがとうございます。