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第三百一話


 俺たちのボス戦を見学して、これ以上は付いていけないと判断をした。
 イェレラとイェルンとロッホスとイェドーアは、途中で引き返す事にした。ファビアンと一緒に待っている。武器と防具は、持たせたので途中で県令や戦闘訓練を行っているように伝えた。物資も持たせたので、1週間くらいなら大丈夫だろう。

 俺とカイとウミとライだけになると、ダンジョンの攻略は気持ちが悪いくらいに順調だ。

 途中ですれ違った攻略者たちから聞いた、最高到達階層に到着した。
 ここまで、俺は戦っていない。

 ライは、ほぼ荷物持ちだ。
 カイとウミ。正確に言えば、ほぼウミだけで戦っている。ボスは流石に、カイとライも戦うが、俺の出番は殆どない。

 攻撃を避けるので、回復も必要がない。

 ライの分体が、最高到達点の1階層上でキャンプを張っていた者たちを偵察してきて、攻略が進まない理由がわかった。

 魔物の強さも障害になっているのだが、魔物が強い為に、武器や回復薬などの消耗が激しい。
 そして、人の損耗率も無視ができない状況になっている。

 キャンプ地も、セーフエリアではなく、通常のフィールドで作成しているために、見張りや魔物の撃退にも時間が必要になってしまっている。
 通常のダンジョンでは、魔物を倒せばスキルカードがドロップする。そして、下層の入口だが、レベル5-6くらいのスキルカードがドロップするのだが、このダンジョンでは、ドロップがかなり渋い。俺たちの感覚で言えば、4-5%だと思われる。しかも、レベルの低いカードが多い。

 物資が不足して、キャンプ地では地上から持ってくる必要がある。
 俺たちは、ライが物資を抱え込んでいるので、物資の心配がない。食料も水も、武器も必要な量をライが持っているのは大きなアドバンテージだ。

 キャンプ地では、派閥争いまで発生している。
 レベル2の水や火を使って、維持を行っているが、スキルカードのドロップが少ないので、キャンプ地では少なくなる資源の割り振りで揉める事が多くなっている。崩壊に繋がるような争いごとではないが、下層でのキャンプは難しいと判断が下される時期が近づいてきている。

 キャンプ地を避けるように下層に降りた。
 現状の最下層は、森林フィールドになっている。

『カズ兄!』

 ウミの索敵に何かが引っかかったようだ。

「ミノタウロス?」

『カズト様』

 今度は、カイか?

「なんだ?」

『任せてもらえないでしょうか?』

 カイが自分で戦うと言い出した。

「ミノタウロスか?」

『はい。試したいことがあります』

 試したい事?
 何か確認しなければならない事ではなくて、試したい事?
 カイが試したいことなら、試しておいた方がいいだろう。敵には、ある程度の強さが必要なのだろう。周りに人が居なくなるのを待っていたのかもしれない。

「わかった」

『ウミは、カズト様の護衛。ライ。一緒に来てもらうぞ』

 ウミを残して、ライと一緒に戦闘の方法を試すようだ。

『うん!わかった』『はい』

 カイは、俺の護衛をどうしても付けたいようだ。
 このくらいの階層なら、護衛の必要はない。しかし、”必要ない”というと、カイが哀しそうにする。ウミもライも・・・。だから、護衛を受け入れている。相手にもまだ余裕があるから大丈夫だ。余裕が無くなってきたら、護衛ではなく共闘してさっさと倒してしまったほうがいい。

 ミノタウロスが3体

 ほぼ瞬殺だ。
 カイが何を試したかったのか、解らなかった。

 それから、3-4回は同じフォーメーションで戦った。
 カイが確認をしたかったのは、ライとの共闘のようだ。

 ライの分体を使った戦略をいろいろ試しているようだ。

 次の階層に進んだ。
 ここからは未踏破の階層になる。

 カイの実験は続いた。
 ウミとライに戦略の指示を行った。ライだけで戦うこともある。

 次のフロアボスから俺も戦闘に加わる。
 カイからの要請だ。戦闘に加わるが、カイとウミとライが順番で護衛を行う。その時の、フォーメーションを確認する。

 魔物は強くなっているが、何か調整が入っているのか・・・。俺たちが安全マージンを取った状態でも大丈夫な敵しか出てこない。

『兄様』

「どうした?」

 珍しく、ライが何かあるようだ。

『ペネムが、コアの動きがおかしいと言っている』

「コアの動き?」

『人数の3倍までしか魔物と戦わないようになっている。らしい』

「・・・」

 ペネムがどうして、知ったのか気になる所だけど、思い当たる事がある。
 しかし・・・。

「ライ。俺たちは・・・。もしかして、眷属は除外か?」

『うん』

「他には?」

『このダンジョンの崩壊が始まっている』

「え?」

『コアの力を越える状況になっている。らしい』

「どうしたらいい?」

『コアを確保して、”できそこない(新種)”を排除する』

 明確な答えだ。
 攻略しなければ意味がない。

 潜っている俺たちも、ダンジョンが崩壊したら・・・。考えるだけで恐ろしい。

「カイ。ウミ。聞いていたな」

『はい』『うん』

 スキルカードも使って、ダンジョンの攻略を行う。

 魔物の数が多くないのは楽でいいが、下層に降りると罠が増え始める。
 森林フィールドでは下層に向かう場所を探すのに苦労する。

 フィールドも徐々に広くなっているので、探索に時間が必要だ。

 ライの分体を使って、下層に向かう階段を探す。

 問題が発生した。
 全力で最下層に向かう。

 コアに合わせなければならない。

「ライ!コアは?」

『ダメの様です。ペネムからの呼びかけに応じない』

 コアが制御のできない状況になっているのか?
 それとも、もっと深刻な状況なのか?

「時間がないのかもしれないな」

 ”戻る”方法も考えられるが、今からなら最下層に向かったほうが早いと判断をしている。
 あと、10階層もないだろう。

『兄様!』

「見つけたか!」

『次が最下層です』

「カイ。ウミ。ライ!」

 なんとかなる。
 なんとかする。

 最下層は、”ダンジョンのボス”だけが居るような雰囲気だ。チアル・ダンジョンと違っていてよかった。

「いくぞ!」

 ボスは、オルトロスだ。
 脅威ではあるけど、問題ではない。

 ライが防御を担当して、カイとウミが左右から攻撃を加える。

 カイとウミは囮の役割だ。
 どちらかに向かったら、ライが補助や防御を行います。俺が横から攻撃を行う。

 基本は、この繰り返しだ。
 範囲攻撃は注意が必要だが、範囲攻撃は”溜め”が必要だろう。いきなり、ブレスでの攻撃はもっと上位の魔物だろう。

 体力を削っていく、オルトロスもボスだ。膨大な体力を持っている。
 第二形態にはならないと考えていた。第二形態を得るにはダンジョンが浅い。

「ライ!」

 防御に徹していたライが攻撃に参加する。

 今までは三方向だった攻撃を4方向からの攻撃に変える。

 俺のレベル3の雷を受けて、オルトロスが絶叫を上げて倒れる。

「ライ!コアは!」

『確保します!』

 ライが、オルトロスを無視して開いた扉から奥に進む。

 チアルから受け取っていたコアを合成する。
 意識があるコアなら、新しいコアを吸収すれば・・・。

 崩壊が防げる。

「ライ!コアを吸収させろ!」

『はい』

 俺とカイとウミは、魔法陣の上でライからの報告を待つ。

 待っている時間が、数秒だとは思うが、数分にも感じられる。
 崩壊が始まってしまえば、魔法陣が使えるとは限らない。

 魔法陣を使って脱出が出来なくなれば、全力で階層を上がっていく必要がある。死ぬ気はないので、全力で逃げる、途中で遭遇する魔物や人は無視する。

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