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第四十五話 設定?


 扉を抜けると、階段が見えた。
 下の階層に向うようだ。

 降りていくと、途中で二つに別れていた。

 一つは、扉で塞がれている。
 もう一つは、扉はついていない。

「扉がないのは、地上に戻る部屋か?」

「わかりませんが、その可能性が高いでしょう」

 扉に触れると、面倒な”箱”が現れた。寄木細工だ。

「兄ちゃん?」

「ん?アル。やってみるか?」

「うん!」

 アルバンに寄木細工の箱を投げ渡す。簡単に説明をするが、俺もそこまで詳しくない。
 振ると、何か入っているのが解るが、そのまま蓋を開けたのでは、鍵は取り出せない。

 俺も、何度か触ったことがある程度だから自信はないが、それほど複雑な細工はないと思っている。

 そんな考えが俺にもあった。
 甘かった。

 途中で、箱の破壊も考えたが、ダンジョンのオブジェクトになっているようで、破壊ができない。思いっきり切りつけても傷が付かない。もちろん、スキルも意味がない。

 動かせる場所は4箇所。4箇所がスライドする。スライドは、7段階。その組み合わせなのか、順番なのか?

 アルバンは、途中で飽きてしまった。
 カルラも試したが、自分には向いていないと早々に諦めてしまった。

 最終的に、この手の単純作業に向いているのは、エイダだと結論が出た。
 エイダが黙々と試している。こんな面倒だったか?もっと楽しかった思い出がある。

 2時間後、エイダが鍵を取り出した。
 寄木細工は、鍵を取り出したら消えてしまった。欲しかったがしょうがない。

 扉を開けて、階段を降りると、俺たちの予想通りに、制御室に辿り着いた。

「X1turbo?それに、X68Kか!SUPERか!SCSIインターフェースがある!PROでもいいけど、やっぱりSUPERだな」

 奥を見ると、ポケコンの山が出来上がっている。
 これは嬉しい。宝の山だ。

 MZシリーズまである。シャープの展示場か?

 え?あれは・・・。SM-UX8000?嘘だろう?UNIXを積んだ機種だ。
 俺も、実物は触ったことがない。博物館か?

 ふぅ・・・。
 興奮してしまった。

「旦那様?」

「なんでもない。ポケコン・・・。そっちの山になっている物を頼む。エイダ、いつものように、ウーレンフートに繋いでくれ」

『了』

 これからは、手慣れた作業だ。
 問題は、データの互換性があるのかだけど、大丈夫だろうと勝手に思っている。

 今までも、PC88やPC98でダンジョンが動いていたことがあった。
 管理端末の入れ替えを行って、徐々にデータの移行を行えば多少の問題は発生したが、移行は完了した。

 今回は、最難関だけあって、X68Kに拡張ボードが入っている。

 管理している端末のスペックに依存した深さになるのだろう。
 概ねの感触なので、間違っているのかもしれない。

『マスター。ボスと仕掛けはどうしますか?』

「最下層のボスと仕掛けは継続」

『了』

 あのボス戦は面倒だけど、考えられている。
 確かに、途中で辞めてしまいたくなる。

「エイダ。ボス戦だけど、途中で、地上に戻る魔法陣は出せるか?」

『可能です』

「頼む」

『了』

 設定を変更して、ウーレンフートに繋ぐ前に、”黒い石”の調査を行う。
 全フロアのチェックなので時間が必要だ。

「旦那様。お食事にしますか?」

 俺の返事を聞く前に、カルラが準備を始めている。
 確かに、時間を考えれば、食事をして仮眠をとっても十分な時間だ。

 エイダに後を任せて、仮眠をすることにした。



「旦那様」

 カルラが起こしに来たようだ。

「終わったのか?」

「はい」

 カルラでは、正確なことは不明だろう。
 作業していた場所に向うとエイダがケーブルを繋げて作業を行っている。

「エイダ」

『マスター。移行作業は終了しました。黒い石の探索および駆除も終了しました』

「そうか、黒い石は?」

『37個の存在を確認。動作していた物は、13個でした。駆除(ワクチン適用)は終了しています』

「魔物は?」

『駆除が終了しています』

「わかった。移行は・・・」

 見れば、ヒューマノイドが居るのだから、ウーレンフートと繋がったのだろう。
 ネットワークの構築も終了しているようだ。

 以前に伝えたように、サブ拠点として使えるように、ハードウェアを持ち込んでいるようだ。

「ネットワークの構築か?」

『是』

 ウーレンフートが落ちた時のためのバックアップ環境が欲しかった。
 確かに、このダンジョンがボスの難易度から適切だろう。

「エイダ。前室を作って、ダミーの制御室を作ろう」

『是』

 エイダがヒューマノイドたちに指示を出して、部屋を構築する。
 俺たちは、何もすることがないから、作業を見ているだけだ。

 もう少しだけ寝ていられるな。
 今日は、寝て過ごそう。

「カルラ。アル。俺は、もう少しだけ寝る。自由にしていいぞ?あっ外には行くなよ」

「うん」「はい」

 丁度、パイプ椅子が3つあったので、贅沢に3つ使って寝る事にする。
 二つだとバランスが悪い。3つあれば寝るのには十分だ。

 カルラは、連絡用の資料をまとめるようだ。
 アルバンは、何もやることがないので、前室に戻って訓練をすると言っていた。

 まぁ問題はないだろう。
 ボス戦のトリガーを引かなければ大丈夫だ。

 階段を使った模擬戦を行うようだ。



「旦那様。旦那様」

 カルラが、パイプ椅子の前で跪いている。

「ん?カルラ?」

「はい。エイダから、旦那様にご報告があるようです」

 エイダから?
 なら、エイダが起こせばいいのに、何か問題が発生したのか?

「どうした?」

 エイダは、相変わらずコネクトした状態で作業を行っている。

『マスター。前室の設置が終了しました』

 前室の設定は終了したのか?
 前室の様子はモニタリングが出来ているようだ。

 既に、X1turboやX68Kは持ち出されている。
 移行も終わったようだ。細かい設定は違っても、問題にならない。問題になっても、なんといっても、不思議空間のダンジョンだ。大騒ぎするほうが問題だと思われてしまう。

「わかった?それで?」

『はい。予期せぬことですが、ダンジョンの中にダンジョンが発生してしまいました』

「ん?ダンジョン?それは大丈夫なのか?」

『ログを調べていますが、大きな問題にはなっていません。リソースの食いあいも発生していません』

 ログ?
 モニターには表示ができないのか?

「何が違う?」

『設定が違うダンジョンの設置が可能です』

「ん?ウーレンフートでもできるのか?31階層を海にするのとは違うよな?」

『はい。処理の分散が可能になります』

「うーん。わかった。ひとまず、現状を維持、様子を見よう。あっ!前室は、スタンドアロンだよな?」

 そうか、それでログでの監視になってしまうのだな。
 ログを見るためのツールが必要になりそうだ。

 面倒だな。現状で監視を強化しておこう。
 端末で見ていないと、リアルタイムでの監視ができない。ログでは、タイムラグが出てしまう。問題にはならないとは思うが・・・。

『はい』

「わかった。遊びのダンジョン以外では、メリットが少ない。ここも、あまり大きくならないように調整してくれ」

『了』

 ログだけなら、リモートでも確認ができる。
 これで、設定は終わったかな?

 最初に決めていた通りに設定が行われた。

 これで、このダンジョンからもドロップが渋くなる。採取も難しくなるだろう。

 パーティーの問題は、何も設定が行われていない。
 デマではないが、偶然が続いたことで、禁則事項になったのかもしれない。

 ダンジョンの設定には、人数で区切っている場所は見当たらない。
 引き続いて、ヒューマノイドタイプには調査をしてもらっている。該当するような機能が見つからなければ、設定を作ってもいいと思っている。少しだけ厄介だが、スタート時点のプロパティを監視すればいいだけなので、出来そうな気がする。

 さて・・・。

「カルラ!アルを拾って、地上に帰るか?」

「かしこまりました」

 階段で、ヒューマノイドタイプと模擬戦をしていたアルバンを拾って、もう一つの階段を降って、魔法陣が書かれた部屋に辿り着いた。

しおり