バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第三十二話 翻訳


 装置を見ると、少しだけ面倒だと思える。

「カルラ」

「はい」

「素数って解るか?」

「”そすう”ですか?聞いたことがありません」

 アルバンには、聞く必要はない。
 そうか、素数は基礎だと思ったけど、スキルの起動時にも意外と関係するのだけどな。

「カルラ。スキルの発動時に、1つ。2つ。3つと発動はできるよな?」

「はい」

「でも、4つの重ねは失敗する」

「はい。神々の喧嘩です」

 そう、この世界では、重ね掛けは、素数で管理されている。道具を作るときに気が付いた。同じ素材に4つの付与は失敗する。だから、複数の素材に分けて付与を行う。複数の素材を組み合わせれば、それが連結して4つのスキルが交わった|よ《・》|う《・》|な《・》道具が完成する。

「でも、素材を選ぶが、5層なら可能だよな?」

 俺が行っているプログラムになると別だ。今後の研究次第だとは思うが、魔法をプログラミングすれば制限が外れる。理由は解らないが、実現ができるので、現在は利用している。

「え?5?」

「次は、7だ。その次は、11だ。13。17。19。23。29。31。37」

「え?え?マナベ様!」

「それが答えだ。アル。この答えは、41だ」

 13番目の素数と書かれた問題の答えは、41で合っている。
 こんな問題をここに設置している意味がわからない。それに、今度は”英語”で問題が書かれていた。各国語対応でもしているのか?FIGSとかで書かれると、読めるだろうけど・・・。まだ英語だから助かった。翻訳機能が伝えるようにしておこうか?

「エイダ!」

『はい』

「この問題を読み込んで、翻訳はできるか?ウーレンフートの端末に接続してもいい」

『可能です』

「FIGSでもか?」

『はい。フランス語。イタリア語。ドイツ語。スペイン語。CCJKも可能です』

「道具にはできるか?」

『無理です』

「わかった。次は、エイダに頼む」

『了』

 エイダに確認をしていると視線を感じた。
 アルバンとカルラが、機械を見てから、俺を見ているようだ。

 パネルを見ると、次の問題が表示されている。
 早速、エイダの出番だ。フランス語のようだ。

 読めるのは、数字だけだが、多分答えは、”Yes”だ。
 そもそも、こんな問題。あとは、問題文次第だ。

 エイダに解読をお願いした。
 やはり、”素数”なのか判定しろとのことだ。

 それから、連続で9問。

 問題文をしっかりと読まないと答えが定まらないのも嫌らしい。

 ”該当する数値は素数か?”という問題と、”該当する数値は素数ではないか?”が入り混じっている。

 問題は続いた。
 次の問題の数値は、いろいろ・・・。
 最初と最後が”1”で真ん中に3つの6があり、真ん中の数字を13個の”0”で括られている。回文素数だ。

「兄ちゃん?」

「カルラ。アル。”0”の数を数えてくれ、アルは左から数字の6まで、カルラは右から数字の6まで・・・」

 何度か、数えてもらって間違いはない。
 ベルフェゴール素数だ。

 知識として知っていなければ、突破は難しい。

 問題文をもう一度、エイダに翻訳してもらった。

「アル。答えは、”No”だ」

 アルバンが答えを入力した。
 階段が出現したので、問題が終了したと考えてよさそうだ。

 面倒な問題だったが、クリアできてよかった。

 階段を降りると、扉が存在している。
 ボス戦か?

「兄ちゃん。開けていい?」

「あぁ」

 アルバンが、扉に手をかける。
 俺とカルラは左右に別れて、戦闘態勢を取る。階層も深いわけではない。対処はできるだろう。ウーレンフートの20階層と考えると・・・。

 ボスが待ち構えていた。うん。ボスだけど、ゴブリンの上位種?

「兄ちゃん。おいらにやらせて」

「そうだな。カルラ。サポートを頼む」

「はい」

 アルバンとカルラがゴブリンの上位種に対峙する。俺は、部屋には入るが、後方で観察だ。エイダに部屋の中をサーチしてもらって、怪しい所がないか確認をしてもらっている。

 5分もしないで、アルバンがゴブリン(多分、ソルジャー)を倒しきった。

 さて、コアルームだ。
 接続が出来たら嬉しい。出来なければ、コアを破壊して終わりだ。

 今回も接続が可能だ。
 問題の設置も可能になり、もっと複雑な問題に変更した。2択問題ではなく、記述式にして、プログラムの問題を差し込んだ。これで、突破はほぼ不可能だろう。

 ウーレンフートのダンジョンとの接続はできたが、アルトワダンジョンとの接続は出来なかった。
 今までと同じで、ウーレンフートを経由すれば接続が可能だけど、無理に接続する必要はなさそうだ。

 ゲートを通して、ヒューマノイドタイプを何体かこちらの管理を行わせる。
 こうなると、一度ウーレンフートに戻って、セントラル機能を持たせたサーバルームを作成した方がいいかもしれない。監視用のサテライトは必要だろう。運営は現地スタッフに任せて、セントラル側では負荷と収支の監視だ。遠隔での構築は無理そうだから、共和国のダンジョン制覇が終わったら、ウーレンフートに戻るか?
 約束の期限も近づいているし、丁度いいかもしれない。

「よし!次に向かうぞ!」

「え?」

「ん?アル。どうした?」

「えぇーと」「マナベ様。アルトワダンジョンの様には、しないのですか?」

「あぁ上に村を作って、実効支配?」

 二人が頷いているので、俺がダンジョンを実効支配するのだと思っていたようだ。

「ここはいいかな?資源が出るダンジョンは、実効支配を考えたけど、ウーレンフートの支配下になるのなら、実効支配するよりも、特産物を絞ったほうがいいだろう」

 二人も納得してくれた。
 問題を書き直したし、最下層前と最下層のボスを強くした。リソースはウーレンフートで有り余っている。アルトワダンジョンも、徐々に貯まる傾向にあるので、自然回復するだろう。

 地上の様子を確認すると、暗くなってきているので、今日は最下層で過ごすことにした。わざわざ野営をするよりも、最下層のほうが快適だ。
 ウーレンフートから、ヒューマノイドに依頼して食事を持ってきてもらう。向こうに行けばいいとは思うが、カルラとアルバンには見せていない物も多い。サーバ室に繋がっている場所をいきなり見せるのは難しいだろう。
 こちらでも、接続している部屋は立ち入り禁止にしている。コアルームも扱いは同じだ。

 一晩で、ダンジョンの再構成は終了した。
 あとは、ヒューマノイドに監視を行うように指示を出した。運営に関しては、現状を維持しつつ、ウーレンフート経由で設定を変更してみようと思う。

 翌日も、ユニコーンとバイコーンで移動を行い。次のダンジョンに向かう。

 俺たちは、順調にダンジョンを攻略していった。
 問題は、EFIGSCCJKのどれかで書かれている。よかった、クリンゴン語とかで書かれたら難しかった。地球のネットに接続が出来れば、翻訳ができるだろうけど、オフラインでは難しい。

 クイズも、いろいろだ。豆知識的な問題は出てこない。殆どが数学や物理の問題になっている。少ない場所で5問。多い場所では100問も解かされた。誰が作っているのか面倒な問題が多い。

 今の所、8つのダンジョンを攻略したがウーレンフートに繋がらない場所は1か所だけだ。
 その1か所は、クイズの設置がなくいきなりボス戦だった。様式美である。ボス部屋がなかった。コアが見える場所にあり、コアを守るようにボスが鎮座していた。

「兄ちゃん」

「また黒い石があったな」

「うん」

 攻略したダンジョンで、コアを破壊したダンジョン以外には、最初に攻略したダンジョンと同じように、黒い石が存在していた。ダンジョンによっては、下層だけではなく、途中にあるセーフエリアにも置いてあった。気持ちが悪いので破壊して居る。魔石ではないのは、鑑定して解っているし、何かのスキルが付与されている様子もない。サイズも違うので、ただの偶然かと思ったが、”ダンジョンで吸収されない石”があるのが異常なことだ。攻略して、配下に置いたダンジョンでも”黒い石”は吸収不可能だった。

 おれが、黒い石を破壊した理由も、”吸収が不可能”だという事実を知ったからだ。

 残り、三ケ所。
 町に隣接している資源ダンジョンが残った。共和国に属している国の首都に近い場所にあり共和国の屋台骨を支えるダンジョンだ。

しおり