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瑛介の遺産

瑛介が遺した石の鑑定結果が出た。
貴仁は彩川真琴の研究室に向かった。
研究室の中央にはプロジェクターが設置されており、その映像には回路図のような模様が鮮明に浮き出ていた。らせん状の回路も見える。X線画像のようだ。

貴仁は真琴に尋ねた。「これは一体どういうものなんですか?」

真琴は眉をひそめながら答えた。「正直、私もこんなものは見たことがありません。ただ、放射性炭素年代測定法の結果から言って、この石は1億年以上前のものであることがわかりました。」

貴仁は驚きのあまり言葉を失った。1億年前のものだとすれば、これは地球上に存在するはずのない技術だ。彼はさらに真琴に質問した。「これが何を意味しているんですか?」

真琴は深くため息をついた。「これだけでは何とも言えませんが、少なくともこの石は地球上のどの文明とも関係がない、非常に古い技術を示していると考えられます。もしかすると、地球外の技術かもしれません。」

貴仁はその可能性を考え、戦慄が走った。
もし瑛介が地球外の技術に関わっていたのだとしたら、それは彼が死ぬ理由になるのだろうか?
そして、その技術が何かしらの危険をはらんでいたとしたら、彼らも巻き込まれるのではないか?

貴仁は電子研究部の部室に戻ると、啓太、純礼に石のことを報告した。
1億年以上前のもの、回路図のような模様、地球外の技術かもしれないという彩川の言葉。
貴仁は1つの結論に至っていた。結論はRFIDではないかというものだった。

貴仁:「この石の表面に刻まれたらせん状の模様は、RFIDのアンテナに相当すると思われるんだ。」

啓太:「確かに、この模様は電磁波を受信してデータのやりとりをする機能を持っている可能性が高いね。」

純礼:「でも、1億年以上前のものだというのはどう説明するの?地球外の技術だとすれば、なぜこんな古い物が今ここにあるの?」

答えは見つからない。

貴仁、啓太、純礼の3人は瑛介が遺した石がRFIDだとした場合、古代人、もしくは地球外の誰かが何のためにこれを残したのかについて、様々な仮説を立てた。

貴仁は、「もしかしたら、これは何らかの情報伝達手段だったのではないか?」と考えた。彼は、昔の人々や地球外の存在が、この石のRFID技術を使って情報を共有し、遠く離れた場所や時代を超えてコミュニケーションを図っていた可能性があると主張する。
例えば、彼らはこの石に特定の情報や知識を記録し、それを別の場所や時代に持っていくことで、情報の伝達や共有が可能になっていたのかもしれない。
石のRFIDが古代文明や地球外の存在による非常に先進的な通信技術のかもしれない。現代の人々にとっては理解しがたいが、過去の文明や地球外の存在が持っていた技術や知識は、現代人が想像する以上に進んでいたのかもしれないと貴仁は考えた。

啓太は別の見方を提案した。彼は、石の中に刻まれた回路図のような模様が、エネルギーを伝達し、蓄えるための仕組みを持っている可能性があると考えた。古代の文明や地球外の存在が、この石を利用してエネルギーを効率よく伝達し、蓄積することで、彼らの社会や技術の発展を支えていたのかもしれない。
石のRFID技術が古代文明や地球外の存在による高度なエネルギー技術であったことになります。現代の人々が石油や太陽光エネルギーを利用しているように、過去の文明や地球外の存在が独自のエネルギー技術を持っていた可能性があると啓太は考えた。

一方、純礼は、「もしかしたら、これは古代人や地球外の存在による何らかのメッセージだったのでは?」と考えた。彼女は、石の中に刻まれた回路図のような模様が、情報を記録し、伝達するための仕組みを持っている可能性があると考えた。古代の文明や地球外の存在が、この石を利用して重要な知識や情報を保存し、他の個体や地域と共有することで、彼らの社会や技術の発展を支えていたのかもしれない。
また、この仮説では、石のRFID技術が古代文明や地球外の存在による高度な情報伝達技術であったことになる。現代の人々がインターネットやデータストレージを利用しているように、過去の文明や地球外の存在が独自の情報伝達技術を持っていた可能性があると純礼は考えた。

純礼: 「この石と通信を行うことはできないの?」

啓太: 「通信する方法があれば、石に秘められた情報にアクセスできるかもしれないね。」

貴仁: 「その通信方法を見つけることができれば、メッセージの意味も理解できるはずだ。」

純礼: 「そうね、この石には何らかの方法でアクセスできるはず。」

貴仁: 「この石に幅広い周波数の電波を当てるのはどうだろう。RFIDとすれば、電波を当てれば反応があるはずだ。」

啓太: 「それはいいアイデアだね。試しに電波を当ててみよう。」

純礼は腑に落ちない表情をしている。電源もないのに。ただ電波を当てるだけで何ができるのか。

貴仁: 「まず、パッシブ型RFIDについて説明しよう。」

啓太: 「そうだね、パッシブ型RFIDは、電源やエネルギー源がなくてもデータを取り出すことができるんだ。」

純礼: 「どうやって?」

貴仁: 「パッシブ型RFIDタグは、外部から電波を受け取ることでエネルギーを得る。読み取り装置が電波を発し、タグがその電波をアンテナで受信するんだ。」
啓太: 「その受信した電波エネルギーを使って、タグ内の情報を読み取り装置に送信する。」

純礼: 「なるほど、だから電源がなくても情報が取り出せるのね。」

貴仁: 「そうだ。今回の場合、この石がRFID技術を使っているとすれば、適切な周波数の電波を当てることで、石からデータを取り出すことができるはずだ。」

貴仁は実家に戻り、瑛介が遺した研究設備を使って石に様々な周波数の電波を当てる装置を組み上げることにした。彼は瑛介の遺品の中から、資料を見つけた。過去に瑛介も同じことを試していたようだ。

貴仁: 「ほんとうに父さんはすごいな。」

啓太: 「やっぱり瑛介さんは何か特別なことに気づいていたんだろうね。」

貴仁は瑛介のノートを参考にしながら、石に電波を当てる装置を完成させる。完成した装置は、石を固定し、様々な角度から電波を当てられるように設計されていた。

装置の構成は次のようなものだ。

高周波発振器:装置の中心となる部分で、様々な周波数の電波を生成するために使用する。発振器は、周波数の範囲や出力レベルを調整できるように設計されており、数十MHzから数GHzの幅広い周波数範囲に対応しています。この高周波発振器によって、石に対して様々な周波数の電波を照射できるようになっている。

送信アンテナ:発振器から生成された電波を石に向けて送信する役割を果たす。装置には、異なる周波数帯域に対応するために、複数の送信アンテナが設置されている。それぞれのアンテナは、石に対して効率的に電波を伝播させるように設計されており、石の表面に対して最適な角度で電波を照射できるようになっている。

受信アンテナ:石から反射された電波を受信するために使用される。受信アンテナは、石が特定の周波数に反応しているかどうかを捉えるための重要な部分であり、その情報を電文解析装置へ伝送する。

電文解析装置:受信アンテナから送られてきた電波を解析し、その周波数成分や信号強度を測定するために使用されます。この装置によって、受け取った電波が特定のパターンを持っているかを解析する。

回転式台座:石を固定し、様々な角度から電波を当てることができるように設計されている。台座は、水平および垂直方向に360度回転することができ、石の全方向から電波を照射することが可能だ。これにより、石の表面に存在する回路図のような模様に対して、最適な照射角度を見つけることができる。

制御ユニット:装置全体を操作・管理するためのインターフェース。制御ユニットには、高周波発振器、送信アンテナ、受信アンテナ、電文解析装置の設定を調整できるように、様々な操作ボタンやディスプレイが設置されている。また、電文解析装置から得られたデータを解析・表示する機能も備えており、石が反応した周波数や信号強度をリアルタイムで確認することができる。

このように、石に様々な周波数の電波を当てる装置は、送信アンテナから電波を照射し、受信アンテナで反射された電波を捉え、電文解析装置でその情報を解析するという一連のプロセスを経て、石の内部情報や性質に関する手がかりを得ることを目的としている。

貴仁が部室で自ら組み上げた装置を見て、啓太と純礼は驚いた。貴仁は瑛介の研究設備を参考にし、さらに改良を加えて装置を作り上げたのだ。

貴仁は装置の説明を始める。「これで、石に様々な周波数の電波を当てることができるんだ。そして、受信アンテナで反射された電波を捉え、電文解析装置でその情報を解析する。そうすれば、石が反応する周波数や信号強度をリアルタイムで確認できるはずだ。」

純礼は興味津々で聞いていた。「それで、どのくらい時間がかかるんですか?」

貴仁は少し考え込んだ後で答える。「実際に解析が始まれば、最低でも数週間はかかるだろうね。ただ、それが最短でも、石がどの周波数に反応するかわからないから、もしかしたらもっと時間がかかるかもしれない。」

啓太はうなずいて、「それでも、この装置が完成すれば、あとは解析するだけだね。よくやったよ、貴仁!」と励ました。

貴仁は笑って、「ありがとう、啓太。でも、これがうまくいくかどうかはまだわからないからね。これからが本番だよ。」と返した。

3人は石の謎を解明するために、装置の解析作業に取りかかる。

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