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513 その頃、天界では

『あらあらまあまあ、よっ!ほっ!』ぴゅーっぴゅーっ
『負けない。ほいさっ』ぴゅーっ

と、地上で凛とみあが水芸を競い合っている頃、天界では


〖おい。主神、バート、ちょっといいか〗カッカッカッ

いつもの軽い雰囲気は一切無く、靴音を響かせて、眉間に皺を寄せピリピリした様子の鍛治神がやって来た。

〖鍛治神、その様子じゃ君も気づいたんだね〗

『今、お呼びしようかと話していたところだったのですよ』
いつもニコニコしている主神イル様と、バートもやはり難しい顔をしてピリピリしている。

〖ああ。あれは、まずいな。どうする?俺が行くか?あれは、誰か行かないとまずいだろ?〗

〖そうだね。武神に頼むことも考えたんだけど、鍛治神、君が行くかい?〗

〖ああ。あれには俺も関わってるんだ。俺に落とし前をつけさせてくれ〗

〖分かったよ。鍛治神、お願いするよ〗

〖ああ。任せてくれ〗

『しかし、まさかあの「鎧」をあのような使い方をするとは···。いよいよ駄目ですね。あの連中は。しかも、占星術か何かは知りませんが、薄々聖域のことに気づいているようです』

〖何だと?それは確かなのか?〗

『ええ。残念ながら』

〖······〗

〖そうか。⋯主神、俺たちが直接、地上に手を出すのを渋るのは分かる。だが、あれはもうこれ以上放って置いたらダメだ。神罰を下すのも、やむを得ないだろう〗

〖⋯そうだね。結葉の件もあるしね。歴史ある種族ではあるけれど、トップがあれではね。何とか、種族消滅だけは避けたいけど、どれだけ残るかな〗

『少なくとも、例の鎧に取り込まれた子とその家族は助けられるのではないですか?まだ若いのです。無駄死にはさせられません。あの鎧の制作に携わったあなたなら、何か策はあるのではないですか?鍛治神』

〖何とかしてやりたいがな、あの鎧は、当時の「精霊の愛し子」の為に、もう何代も前のエルフの王と俺が協力して作った物だしな。あの頃はまともな種族だったのにな。はあ⋯〗

〖それで?策はあるの?〗

〖あることはある。あの鎧の力は宿った精霊の魔力によるところが大きい。だが、あの精霊は今のエルフに力を貸すくらいならと、自ら眠りについてしまった〗

『なるほど。言わば、主不在を今のエルフ共につかれてしまった。ということですか⋯』

〖そうだ。やつらはどこかから拐ってきた、精霊と仲のいいエルフの子を無理やり鎧に押し込み傀儡にしようとしたようだ。だから、眠ってる精霊を起こせれば〗

〖助けられるかもしれないんだね〗

〖ああ。主神が神罰を下してる間も、その精霊が守ってくれるだろ〗

『何とか、家族の元に戻してあげたいですね。今の王の元から去り、ひっそりと隠れて暮らしていた者たちのようですし』

〖そうだな。その集落の場所がバレて、今回のことに発展したみたいだが、どうするよ、主神?助けたあとは〗

〖そうだね。この機会に何人か聖域にご招待しようか。他の集落はどうしようか?いくつか小さい集落があるよね〗

『そうですね。集落の者たちは精霊に導かせれば聖域にたどり着くことも可能でしょうが、もしこの騒ぎにヤツが絡んでいるとしたら』

〖あまり目立つ移動は出来ないよね。聖域にヤツを近寄らせる訳にはいかないからね。絶対に〗

『そうですね』

〖もちろんだ〗

〖じゃあ、神罰を下した後、神託を降ろそうか。君たちはもう隠れて暮らすことはない。腐った自称王族は粛清されたって。そうすれば、いつ見つかるかもしれないと怯えて暮らすことは無くなるから、今までのまま、里で穏やかに暮らすことも、冒険に出ることも自分で選べるようになるよね。それから、救出の人選だけど〗

『どうなさるおつもりですか?』

〖うん。バートと天界樹ちゃんの力を借りようか。ついでに、悪い奴らに捕まってる子たちも助けちゃおう〗にっこり

〖バートと天界樹?〗

『ああ、なるほど。そういうことですか』

〖どういうことだ?〗

〖あっちに占星術師がいるなら、こっちには天界樹ちゃんがいるでしょ?占星術だろうが何だろうが、うちの天界樹ちゃんに叶うはずないよね?〗にっこり

『そうですね。占(うら)の頂点ですからね。天界樹様が視た場所に私が跳べばいいのですね。ついでに、悪事を分かりやすくして差し上げましょう。悪いことをしたらどうなるのか⋯子供にも分かるように』ふふふ⋯

〖バート、お手柔らかにね〗くすっ

〖おいおい。ヤツにバレないように派手にしないんじゃなかったのかよ〗ヒクっ

『ええ。ですから、神罰だと分かりやすく、主神に信託を降ろして頂いて、助け出した方たちの中で優秀な方は一度、こちらに来ていただくのですよ』

〖ああ、まとめて運んじまおうってことか〗

『ええ。その通りです。他の助け出した者たちは、それぞれ何とかしてもらうなり、集落に連れていくなりすれば良いでしょう』

〖そうだな。じゃあ、天界樹を呼んで⋯〗

〖あっ、それなら大丈夫だよ〗

『妾なら既にここに』スゥー

〖さっき呼んどいたんだよ〗

〖そうか。じゃあ、さっそくやるか。まずは俺だな。いっちょ、暴れてくるかな。助け出したら、あとは頼むわ〗

〖うん。派手に潰してきていいよ。絶望がどんなものか教えてやって。神罰はそれからでいいよね〗にっこり

〖主神、そんな虫も殺せないような笑顔で言うことじゃない気がするけどな〗ひくっ

『ふふ。鍛治神様分かってないでおじゃるな。普段にこやかで穏やかな方こそ、怒らせてはいけないのじゃ。主神様はその典型でおじゃるよ』

〖なるほど。言えてるな〗くくっ

〖ええ~?ひどいな~。そんなことないでしょう?〗むぅ

『良いではないですか。そちらが派手にやってくだされば、こちらもやりやすいですしね』フッ

〖違いないな〗うんうん

〖ええ~。なんか納得いかないんだけど~〗むぅぅ

『···皆様方、見つけましたぞよ』

〖流石、天界樹ちゃん。仕事が早いね〗 にこっ

『ありがとうございます。どんどんよろしくお願いしますよ。神罰が下されたのを確認次第、行きますよ』

『畏まりましたぞえ』

〖頼もしいね。どんどんお願いね〗にっこり

〖何やかんや、ここにいる連中はおっかないよな。やっぱり〗くくっ


この日、かつて結葉と精霊樹を苦しめたエルフの国が消えた。遥か、遠くからも確認できるほどの雷が、降り注いだという。

そして、人族のあちこちので、氷の塔が現れたと言う。その中にはいくつかの王宮もあったとか⋯


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お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m
本日、久方ぶりの天界。しかも、事件?あえて、ほぼ会話だけにしてみました。色々、想像してもらえたら嬉しいです。答え合わせは次回⋯?

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