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創作において「キモイ」「ヤバイ」「ヘンタイ」は誉め言葉です。


 反対側に曲がってしまった俺の右腕だが……。
 宗像先生が強引に元の形に戻してくれた。
 やっと腕に力が入るようになったのだが、肌の色が真っ青なんだよね。
 しかも、妙に冷たい……壊死じゃないよね?


 男子の決勝戦は、リキと一。
 お互い、テーブルに肘をつけると、相手の手をがっしり握る。

 最初に口を開いたのは、リキの方だ。
「なぁ、一。悪いけど、俺は本気なんだ。負けても泣かないでくれよ」
「え、えぇ……僕なんかじゃ、リキ様の相手になりませんよ……」
 そう言いながら、頬を赤くする。
「なら全力で行くぜ?」
「は、はい!」

 そこへ宗像先生が現れて、2人の拳に手をのせる。

「よぉし! これが男子の最終決戦だ! 勝った奴がイブを過ごす相手を選べるからな。出し惜しみするなよ!」

 まだ言っているのか。そんな権限ないくせに。

「始めぃ!」

 ~10分後~

「くぅぅ……」
「……」

 苦悶の表情をするのは……一ではなく、リキの方だ。
 スキンヘッドは、汗でびしょ濡れ。
 顔を真っ赤にして、一の腕を倒そうと必死だ。
 しかし、彼の華奢な細い腕は、ビクともしない。

 むしろ余裕すら、感じる。
 その証拠に、もう片方の腕で頬杖をついている。
 頬を赤くして、潤んだ瞳でリキを見つめる。

「はぁ……」

 とため息をつく。
 だが、試合に疲れているからではないようだ。
 多分……愛しのリキ様に見惚れているから。

 リキはそんなことも知らず……というより、相手の顔を見る余裕がない。
 瞼をぎゅっと閉じて、一を倒すことで精一杯のようだ。
 
「くっ、強えぇな……一」
「……」

 うっとりとした目でリキを見つめる一。
 左の小指を噛みながら、呟く。
「はぁ……このたくましい手で、僕は……」
 先ほどの“情事”を思い出しているのだろうか。
 なんだかこの2人の周りだけ、ピンク色に見えてきたよ。

 ~更に10分後~

「ぐあああ!」
「……」

 アームレスリングの試合を良いことに、愛しのリキをたっぷり堪能する一。
 しかし、このままでは、あまりにもリキが可哀そうだ。
 遊ばれているだけだからな。

 試合中だが、俺は一の方へ静かに近寄る。
 そして、彼に小さな声で耳打ちを始めた。

「おい、一。そろそろ、決めてやれよ。勝つのか、負けるか……」
 俺がそう言うと、ようやく我に返ったようで、いつもの彼に戻る。
 ビクッと震えて慌て出す。
「ひぃっ! し、新宮さん!? どうして、隣りに?」
「お前がさっさと試合を決めないからだろ……もう30分近くも戦っているぞ? リキを想うなら、真面目に戦ってやれ」
「あ……ごめんなさい」

 正気に戻ったことを確認した俺は、自分の席に戻ろうと、彼に背中を向ける。
 次の瞬間だった。

「勝者! 千鳥 力! 優勝は、千鳥だっ!」

 振り返ると、汗だくになったリキが、自身の拳を高々と天井に突き上げていた。
 一はと言えば、わざとらしく自身の腕を痛そうにさすっている。

 なんだっんだ、この茶番は?

  ※

 男子部門が終わったところで、次は女子だ。

 女子の第1回戦は、マリア対ほのか。

 どう考えても、マリアに武があるのだが……。
 ハイスペックな彼女でも、苦手なものはあるようで。
 怪しく眼鏡を光らせた腐女子のほのかを見て、顔を引きつらせていた。

「よ、よろしく。私はマリアよ……」
 そう言って、対戦相手に手を差し出す。
「うひょおー! 本物の金髪美少女やん! めっちゃ可愛い! ペロペロしたくなるわ!」
 机に大量の鼻血を垂らす変態。
 よっぽど、マリアのルックスが気に入ったようだ。
「あ、あなた。大丈夫なの? 鼻から血が出ているわよ?」
「気にしないでぇ! これは癖みたいなものだから……それより、ミハイルくんにそっくりだね。もしかして、双子とか?」
 鼻息を荒くして、身を乗り出すほのか。
 これには、さすがのマリアもドン引きだ。
「い、いえ。彼とは……他人よ?」
「ハァハァ……今日は大量の素材を手に入れたわ。一くんはBLに使えそうだけど、あなたは完璧に百合ね!」

 真面目な帰国子女には、理解できない世界のようだ。
 困惑した様子で、ほのかを見つめている。

「ゆ、ゆり? なんのこと? あなたはお花が好きなの?」
「ええ! もちろんよ! マリアちゃんみたいなお華を、びしょ濡れにさせて、咲かせまくるのが大好きなの!」
「え……もしかして、あなたレズビアン?」
 
 とこちらに視線を向けてきたから、俺はそっぽを向いた。
 あんまり関わりたくないから……。

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