誰のせいだ?
奇怪な生物どもが現れるようになった原因と、エリーナが現れた原因が、目の前にいる自称神様のガキンチョだと言うことは分かった。
だがしかし、俺が住み始めたのは数か月なんて最近じゃない。もう、かれこれ五年にはなると言うのに、なぜここ最近で、いきなり怪奇現象が立て続けに起こるようになったのか……それがいまいちわからなかった。
とりあえず、エリーナを指名した理由に同情した俺は、再び三人で机を囲むことにした。
「大体の事は分かった。だが、まだわからないことがある」
「なんじゃ、まだあるのか?」
机を挟んで向かい合った瞬間に、いきなり横柄な態度になりやがって……まぁいい、今はそれを気にしている場合じゃない。
「ある日突然、この部屋に奇怪な背物が現れるようになった理由、それを聞いてない」
「あぁ……そのことか……」
ガキンチョは小さくため息をつき、なぜか視線を伏せた。
その横で、エリーナは牛の頭を撫でていたんだが……なぜかその牛は、頭に角じゃなくて耳があった。さらによく見ると、なにかだぶついた布みたいなのを被ってる……。
「かわいい猫ちゃん」
いや、エリーナさんそれ牛……。
そう思った瞬間、振り返った牛は猫耳のついたフードをかぶっていた。これが猫を被るって事なのか……と言うか、そのフードどこから持ってきた。
目が合った時に、猫がしてやったりと言う顔をしていた気がするが、俺の気のせいだろうか……?
「話せば長くなるが……よいか?」
「え? あ、あぁ、構わぇよ」
神妙な面持ちでそう言うと、ガキンチョは息を吸いこんだ。
「実はな、見回りの途中でちょっとしたことがあってな」
「ちょっとしたこと?」
「うむ。ちょっとした法具を作る材料なのじゃが……」
法具ってのは、神様が持つ道具の事かなんかか?
それの材料っていうなら、それなりになんか変な力があったりすんだろうな。
言いかけた感じで言葉を止めたガキンチョは、手のひらから何かを落とすようなしぐさを繰り返していた。このジェスチャーってもしかして……。
「まさか……それを落としたってのか?」
「うむ、簡単に言うとそう言うことになる」
「いや、それ以外に言いようがあるのか?」
「儂としては、一刻も早く見つけ出さねば……」
こいつ無理やり話を続けやがった。
ガキンチョが言うには、その材料と言うのは虹色に光るハマグリと言うことらしいが、俺はそんなもの見たことはない。
「あの~探してるのって、これですか?」
「え?」
そう言ってエリーナが差し出したのは、確かに虹色に光るハマグリみたいなものだった。
「それは!!」
「本当に虹色に光るのか」
「あぁ!!」
ガキンチョが取るより早く、俺が掴みあげる。
虹色に輝く、ちょっと大きめのハマグリ。たしかに、こんなもの見たことないし、何やら変な力とかありそうな気もする。
「なんてことしてくれたんだ貴様!」
「な、なんだよ? どうしたんだよ?」
突然大声を出したガキンチョは、立ち上がったまま口をパクパクさせてる。震える右手で俺を指さしながら、今まで以上に目を吊り上げてる……これって、緊急事態が?
「人間が神の物に触れたら、どういう形であれ授けたことになってしまうんじゃ!!」
「え? それって……」
「回収不可能じゃないかぁぁぁぁ!!」
絶望的な状況に、拍車がかかった。いや、これは知らなかったとはいえ、盛大に自爆したと言うべきだろうか……。