第九十五話 帝都入城式
--入城式当日
早朝にラインハルトは目が覚める。
ラインハルトの腕の中で寝息を立てていたナナイも、程なく目覚める。
「まだ早いのに、起こしてしまったか?」
ナナイを気遣うラインハルトに対して、ナナイは昨夜の行為の余韻に浸っていた。
ナナイは、ラインハルトの腕の中から顔を見上げて、指先でラインハルトの胸に文字をなぞる。
「いいのよ。・・・昨夜は激しかったわ。後ろから抱かれたのは初めて」
「そう?」
「そうよ。・・・赤ちゃん、できちゃうかも?」
ナナイは上目遣いにラインハルトの反応を伺う。
「それは嬉しいな」
ラインハルトは思わずニヤける。
「最初は男の子が良い? それとも女の子?」
「どちらでも。君との子供だ。きっと可愛いだろう」
「ふふ。そうね」
ラインハルトの答えにナナイは安心する。
「ひとつ、聞いていい?」
「ん?」
「後ろからする時は、どうして私の腰を掴むの?」
「ナナイの腰は、くびれていて掴み易いからね。お尻も大きくて、突いた時の具合も良い」
ラインハルトの言葉にナナイが恥じらいを見せる。
「・・・もう。具合が良いなんて。いやらしい」
「ははは」
「ふふふ」
部屋をノックする音がする。
「なんだ?」
ラインハルトの問いに侍従がドア越しに答える。
「殿下。そろそろ、入城式の準備のお時間でございます」
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入城式パレードのため、帝都郊外で小隊は二人乗りのパレード用の馬車に乗る。
要人馬車列の先頭はユニコーン小隊であり、先頭にラインハルトとナナイ。二台目にティナ、ジカイラ。三台目にハリッシュ、クリシュナ。四台目にケニー、ヒナが乗り込む。
ユニコーン小隊に続いて帝国四魔将の馬車列が並ぶ。
先頭にアキックス伯爵、ヒマジン伯爵が、二台目にエリシス伯爵とナナシ伯爵が乗る。
帝国四魔将の馬車列の次に第506飛行輸送隊の馬車が並ぶ。
カマッチ少尉とセイゴ軍曹もパレードに加わることとなった。
第506飛行輸送隊の次に冒険者ギルドの馬車が並ぶ。
先頭にフオフオとロマイヤー。二台目にユーブラックとプルアップが乗る。
要人馬車列の次に帝国竜騎兵団の竜騎士達が
続いて帝国機甲兵団の
続いて帝国不死兵団の
続いて帝国魔界兵団の
続いて
最後に帝国軍の諸兵科の部隊が隊列を組んで並ぶ。
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帝国軍入城式パレードが始まった。
軍楽隊が行進曲を演奏しながら先導し、車列は街の大通りへ向けて、ゆっくりと入口の門へと進む。
ラインハルト達の馬車が入口の門をくぐると、門の上と街の建物の二階の窓から撒かれたであろう、空を舞う無数の紙吹雪と花びら、大きな拍手と歓声がパレードの車列を迎えた。
沿道にはたくさんの人、人、人。先の凱旋式よりも人の数が多い。
凱旋式と同じように街の大通りには兵士が一定間隔で並び、パレードの隊列が通れるように規制していた。
子供たちが手を振りながら走ってパレードの馬車を追い掛ける。
街の大通りをゆっくりと進む馬車に沿道の人々から花が投げ込まれる。
市民の大きな歓声と拍手がパレードの車列を包む。
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<帝都を守り、革命政府を倒した『救国の英雄』は皇太子だった>
帝国軍の発表に帝都の市民達は熱狂していた。
若き帝国の英雄達が勝利と栄光をもたらし、傍らに美女を伴って馬車で大通りを凱旋している姿は、市民達の目に『帝国の栄光』そのものを想起させた。
先頭のラインハルトとナナイは、馬車から沿道の市民に笑顔で手を振っている。
二人共、軍服を着ていたが、市民達からは既に皇太子と皇太子妃として見られている。
ジカイラも紙吹雪と花びらの舞う、晴れた青空を眩しそうに目を細めて見上げながら、傍らのティナに話し掛ける。
「『街を守った英雄』の次は『国を救った英雄』か。・・・悪くねぇな。」
ティナも笑顔でジカイラに答える。
「私達、頑張ったもんね!」
ハリッシュも傍らのクリシュナに話し掛ける。
「我々が歴史の教科書の一頁になりますね」
沿道からの歓迎の様子を眺めるクリシュナが微笑みながら答える。
「歴史にどう記されるかしらね」
市民からの熱狂的な歓迎に感極まったヒナがケニーに話し掛ける。
「二度もパレードに出られるなんて・・・」
「ラインさん達に出会わなかったら、こんな事は無かっただろうね」
市民達からの熱狂的な歓迎の様子を見たヒマジンが隣のアキックスに話し掛ける。
「パレードは成功だな」
「うむ」
沿道を一瞥したナナシがエリシスに話し掛ける。
「大した人気ではないか。やはり彼らは民衆から愛されているのだ」
「絵になるでしょ? あの二人は。帝国に勝利と栄光をもたらした美男美女の組み合わせ。民衆は熱狂するわよ」
沿道からの熱狂的な歓迎にカマッチは感動していた。
カマッチ達の飛行船は革命軍から対空砲火を浴び、市街地を抜けた所で不時着。北部方面軍によってカマッチ達は救出されていた。
「夢みたいだぜ・・・。オレ達が皇太子殿下や帝国四魔将と並んで、帝都を凱旋しているなんて!」
「夢じゃありませんよ! 少尉!!」
「軍曹! オレたちの旗を掲げろ! 第506飛行輸送隊の旗を!!」
「判りました!!」
「・・・なぁ、軍曹。泣いてもいいか?」
「良いですよ!!」
「オレは祖国を守る軍人やってて、良かったぜ!!」
カマッチは感動して男泣きに泣いていた。
帝都の大通りの上を
巨大な
シュタインベルガーを先頭に帝国竜騎兵団が
帝国機甲兵団の後ろに帝国不死兵団の大きな蝙蝠に似た
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やがてパレードの車列は、皇宮前に作られた特設ステージ前で停まった。
ラインハルトとナナイを中心にユニコーン小隊のメンバーと帝国四魔将が並び、叙勲式が始まる。
ラインハルトは皇太子として、カマッチとセイゴに『帝国銀翼突撃章』を授与した。
そしてラインハルトは皇太子として声明を発表する。
自分が皇太子であること。
革命政府が行ってきた麻薬取引の禁止。人身売買の禁止。奴隷貿易の禁止。
バレンシュテット帝国の全軍を挙げて革命党を討伐し、大陸の動乱に終止符を打ち、アスカニアの秩序と平和を取り戻すことを国民に約束した。