312章 エマエマとお別れ
エマエマは療養するために、自宅に戻ることとなった。他人の家で生活するよりも、自宅のほうがくつろぎやすい。
二人で過ごした一番の思い出は、デュエットできたこと。超一流歌手と、一緒に歌えるとは思っていなかった。
時間に余裕があったからか、なかなかOKをもらえなかった。自分の将来をかけているとあって、一ミリたりとも妥協しなかった。ミサキはひいひいいいながらも、どうにかこうにか乗り越えることができた。
他にもたくさんの思い出をもらえた。エマエマには感謝しても、感謝しきれない。
「ミサキちゃん、いろいろとありがとう」
「エマエマちゃん、こちらこそありがとう」
エマエマとのひとときは、何物にもかえがたい。ミサキにとって、一生の宝物となった。
「ミサキちゃん、10年後に会おうね」
30近くになった二人は、どのようになっているのか。取り巻く状況は大きく変わっていることだけは確実だ。
「うん。そのときは、いろいろな話をしたい」
「ミサキちゃん、ハグをしよう」
「私もしたい・・・・・・」
エマエマとハグをする。とっても柔らかい感触が、体を包み込んでいく。
ハグをしていると、玄関のベルが鳴らされる。ミサキは体を離したあと、来客対応をする。
扉を開けると、20くらいのきれいな女性が立っていた。
「ミサキさん、はじめまして」
「はじめまして・・・・・・」
「エマエマさんのお迎えに来ました」
エマエマは車にのせられ、ミサキの家をあとにする。一人になったことに対して、ちょっとした寂しさを感じた。