休み時間になり、女子生徒達が話している内容を聞いていると、ある男子生徒達の話が聞こえてきた。
休み時間になり、女子生徒達が話している内容を聞いていると、ある男子生徒達の話が聞こえてきた。
「おい!知ってるか? あいつの事!」
「え!?なになに!?」
一人の女子が聞くと、
「お前、あいつとは話さない方が良いぜ」と言われた少女は首を傾げた。
「何で?」
「あいつはなぁ、俺の母さんの妹の娘さんなんだけどな、そいつの家が金持ちらしいぞ。
しかも、あいつが住んでたとこなんて豪邸だぜ!」
(私ったら、そんな風に言われてるんだ……。
「そうなんだ。
知らなかった……」少女の声は小さいので、男子生徒達には聞こえない。
「でもさ、あの子だって、私達と同じ高校生じゃん。
なんでそんなこと分かるのよ?」もう一人の女子生徒が言うが、
「いや!俺もそう思って、調べたんだよ。
そしたらよぉ、やっぱり凄い家だったよ。
だから、絶対に関わらない方が……」と言い掛けた男子生徒を遮った生徒がいた。
「うるせぇよ」と言う声に遮られてしまった男子が言った生徒は誰なのか分からないようだ。
「えっ? 何が?」聞き直す男子生徒に答えたのは、やはりというべきか彼だった。
「お前らが関わるかどうかの話だろ?」彼はそう言うと、教室を出て行った。
残された生徒の一人が聞く。
「どういうことなんだよ」すると彼が答えてくれた。
「どういう事って、お前も言ってたじゃないか。
俺達より裕福な生活をしてるってことだろ?」と当たり前という顔で答える。
「それが、どうしたんだ?」と尋ねる彼に、女子生徒が詰め寄った。
「だからさ、なんでそんな事が言えるのかって事でしょ?」と言うと、彼も分かったようで、説明することにしたようだ。
「……まぁ、それは、あれだ。
あのお嬢様はな、親がいないらしいからな。
一人で暮らしてるんだって」と答える。
しかし彼女は不満そうに言う。
「へぇーそうなんだ。
でもさ、それと、あんたが言ってることって関係無いんじゃないの?」彼の態度が変わったのが分かったらしく、口調を変えずに続ける彼女だが、彼女も少し不安そうな様子が伺える。
そんな彼女達を見て言う彼に続けて聞いた。
「……で、他には何か分かったのかい?」
「あーっ、あとはだなぁ……確か、お金持ちのお祖母さんの家に住んでるとかだったな。
後は……」と言うと、急に口を閉ざした彼に女子生徒が尋ねた。
「他に何かあるの?」
「あぁ~そうだなぁ……あ!そう言えば、その親戚のお婆さんが死んでるって話もあったよな」彼の言葉を聞き、一人が言った。
「ねぇ、それ絶対嘘でしょ?あんた騙されてるよ……」と他の生徒も同意し始めた時、チャイムが鳴った。
皆は自分の席に戻り始めた。
彼も戻ろうとすると声を掛けられる。
振り返ると彼女が立っていた。
「……さっきはありがとうね。
なんかお礼した方が良いかな……?」と聞かれてしまうが、慌てて言う彼女に笑顔で言った。
「いや!いいっていいって!俺は別に何もしてないからさ!じゃ!」そう言い、急いで席に座った。
彼女の方は少しの間見つめていたようだが、チャイムが鳴り始めると、急いで席に着いた。
昼休みになるといつものように娘は食堂へ向かった。
いつもは弁当なのだが、この日だけは、昼食代を渡されていたのだ。
と言っても、三千円も渡されたのだが。
(これじゃあお弁当作れないじゃない)と思い、娘は思ったことを呟いたが、直ぐにやめた。
娘は財布の中を確認しながら歩いていると誰かにぶつかってしまった。
顔を上げるとそこには今朝見た顔が……。
(どうしよう……)と思っているうちに向こうから話しかけてきた。
「すみません……」
と言われてしまい、少し驚きながらも謝る娘に彼は更に謝った。
そして彼は娘の持っていた財布を見て言った。
「あっ!すみません!!僕のせいですね!!」と言いながら、彼の手が伸びるのを見た娘はとっさに身構えたが、その手は彼の頭の上に乗せられた。
キョトンとする娘に対し、笑いながら彼が言う。
「あははっ!大丈夫ですよ。
お金を取って食べようなんて思っていませんから」そう言われた瞬間、安心と共に恥ずかしさを感じた娘の顔は赤く染まった。
それを見た彼は慌てて謝りながら言った。
「ごめんなさいね!別にそういうつもりでは無かったんですけど、……あの……すみませんでした」
頭を下げる彼を前にした娘は慌てるばかりでどうしていいのか分からなかったため咄嗟に口走ってしまった。
「べ、別に大丈夫です!」そう言った瞬間だった。
彼の頭がゆっくりと上がるのを見て、ホッとしていた娘の視界にある物が映った途端固まってしまう。
なんと彼の頭にあった手が動き出し始めようとしていたからだ。
(まずいわ!このままだと叩かれる!)そう思い目を閉じるも一向に痛みがやって来ない。