第七十話 帝国軍要塞『狼の巣』
--翌朝。
ラインハルトは目が覚めた。
傍らではナナイが穏やかな寝息を立てて眠っている。
ラインハルトはキスしてナナイを起こす。
「・・・んんっ」
キスでナナイが目覚める。
ラインハルトはそのままナナイの胸を吸い、掌で揉みしだく。
ナナイはピクンと敏感に反応し、直ぐに先が固くなって喘ぎだす。
「んぁっ。・・・ああっ。ごめんなさい。許して。朝からすると、私、動けなくなる」
そう言ってナナイはラインハルトの頭を撫でる。
「それは困るな」
ナナイの言葉と振る舞いがラインハルトの支配欲と征服欲をくすぐる。
ラインハルトは行為を止め、毛布をめくり起き上がった。
すると、シーツに昨夜の性交による跡があった。
親指の爪程の大きさの血の跡が三つと、ラインハルトの指先を広げた両手の広さほどの体液の染みが出来ていた。
どちらもナナイのものであった。
ナナイもそれに気付き、バッと起き上がると、頬を赤らめ、慌てて両手でシーツの染みを覆い隠そうとする。
「見ないで! 恥ずかしい!!」
破瓜による血の跡より、体液による大きな染みが恥ずかしいようだった。
ラインハルトは毛布を染みの上に被せる。
「見ないよ」
そう言うと、入浴しようとガウンを羽織って立ち上がる。
「ねえ・・・。私のパンツ、知らない?」
「ここにあるよ」
ナナイからの問いにラインハルトは枕元のナナイのパンツを手に取る。
ラインハルトが両手で広げると、パンツにも体液による大きな染みが出来ていた。
「嫌ああぁ! 返して!! お願い!!」
ナナイはベッドの上から両手を伸ばして、必死に染みの付いたパンツを取り返そうとする。
「・・・いや。ほら。返すよ。」
そう言うとラインハルトはナナイにパンツを返した。
ナナイは返されたパンツを両手で胸に抱くと、頬を赤らめたまま、膨れたように涙目でラインハルトを上目遣いに見詰めていた。
ナナイはパンツの染みによって、ラインハルトと性交する前から、自分が欲情して濡れていた事を知られたくなかったが、ラインハルトには既にバレていた。
「入浴してくる。先に行ってるよ」
「ええ」
ナナイの額にキスすると、ラインハルトは部屋を後にした。
飛行甲板に小隊全員が集まった。
ジカイラが呟く。
「いよいよだな」
「ああ」
ラインハルトが出撃命令を出す。
「時間だ。これより二班に別れ、
「「了解!!」」
全員が小走りで飛空艇に向かい乗り込んだ。
小隊が乗り込む四機の飛空艇は、飛行甲板から飛び立つ。
ラインハルトとナナイ、ハリッシュとクリシュナの組と、ジカイラとティナ、ケニーとヒナの組で『
眼下には北西街道と、その両脇には広葉樹の森林に覆われた穏やかな丘陵が広がる。
「あれか」
北西街道上に関所のような石造りの大門が見えてくる。
「30メートルまで高度を下げるぞ!」
ラインハルトの指示をナナイが手旗で僚機に伝える。
ナナイが航法を報告してくる。
「現在、高度30メートル! 進路、北西!」
四機の飛空艇は、閉じている大門を飛び越え、
ラインハルトは伝声管でナナイに話し掛ける。
「やけに静かだな・・・」
「無人?」
「いや、建物の煙突から煙が出ているし、動いている物がある。『誰か』は居るな」
敷地には、先の尖った尖塔や石造りの建物、防空塔などが見える。
また、広大な敷地の地表は『妙な物』で覆われていた。
(ぶどう棚? いや、
『妙な物』の下で、モゾモゾと動くものがあるのは判る。
だが、動くものが、人なのか、動物なのか、或いは怪物なのか。空からでは判らなかった。
ラインハルトは疑問を抱えたまま、作戦行動の指示を出した。
「これより、二班に分かれて偵察する。ナナイ、指示を!」
ラインハルトの指示をナナイが手旗で僚機に伝える。
飛空艇は二機一組で「時計回り」と「反時計回り」に空から敷地を偵察する。
敷地の地表は、全て『妙な物』で覆われていた。
『妙な物』の下で、モゾモゾと動くものは、敷地内全域に居た。
この
「この高度で飛行しているのに、防空警報も対空砲火も無い。何か変だな」
「確かに。おかしいわね」
二機づつ別れて行った偵察は、広大な敷地を一周して合流し、無事に終わった。
「偵察は完了した。撤収しよう」
ラインハルトの指示をナナイが手旗で僚機に伝える。
合流した小隊は、航空母艦へ引き上げた。
昼食の時間になり小隊のメンバーが揃って食事を摂ると、そのまま打ち合わせを行う。
ハリッシュが
ラインハルトが見取り図を見て呟く。
「鉄道や飛行場があった。駅周辺は防備が硬そうだな」
ハリッシュが答える。
「重要施設だけに、防御はしているでしょうね」
ナナイが尋ねる。
「この六ケ所の尖った塔は?」
ハリッシュが答える。
「『結界塔』ですね。
ラインハルトが苦笑いする。
「結界塔が六本に、防空所が四箇所。重要施設らしい石造りの建屋が三箇所。厄介だな」
ハリッシュも苦笑いする。
「要塞ですからね。それに重要施設は地下でしょう」
ラインハルトが尋ねる。
「生身の人間や機械に結界は作用しないが、
ハリッシュが解説する。
「結界を
ジカイラが偵察の感想を口にする。
「あの地面を覆っていたモノは何なんだ?」
ラインハルトも付け加える。
「
ハリッシュが苦笑いする。
「航空偵察の限界ですね。これ以上は
ナナイが意見を述べる。
「乗り込むとしても、この人数で要塞の制圧は無理よ。この航空母艦にも、そこまでの兵員は居ないわ」
ラインハルトが結論を出す。
「要塞の『制圧』までしなくて良い。『探索』が目的だからな。航空母艦で乗り付けるのはリスクが大きいし、地上から
ハリッシュが見解を口にする。
「揚陸艇と地上戦装備の準備に二時間くらい必要ですね」
ラインハルトが答える。
「判った。各自、地上戦装備を用意して二時間後、再び飛行甲板に集合しよう」
「「了解!」」