【エピローグ】天国と地獄
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|♥《ハート》王国
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「ふんふんふんふん♪」
城内の露天風呂に
軽快な鼻歌が響き渡る...エーデルだ。
「エーデル様」
「なんぞや〜?」
着衣所からエーデルを呼ぶのは
|♥《ハート》の9、プリンシの声。
と、エーデルが
浴場から扉を開け着衣所へ上がる。
「エ、エーデル様!」
「なんぞや」
透き通った声。
綺麗なロングヘアに可愛らしい顔。
お湯でふやけたエーデルの姿は
まるで天使のようで、
プリンシには刺激が強かったらしく
エーデルに背を向け、
顔を赤らめながら小さく咳払いをした。
「え、もしかして恥ずいの?」
「......はい。」
「ワハハっ!こー見えて紳士ですー」
「存じております」
「クフフっ!かわいい〜!」
エーデルは男性だ。
それはプリンシも知っていたのだが
やはりその美貌美声は同じ男性の心をも
射止めてしまうほどに美しかった。
「ところで用事を
聞かせてもらおうかな」
「......はい。では、まず一つ。
禁断の果実での選別が成功しました」
「おぉ...!」
「次に、選別によりこちらの世界に召喚した小年は既にこの城内で保護しております」
「少年?...名前は?」
「シロツメ・ハヅキ...
そう名乗っておったそうです」
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|♠《スペード》王国
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「アブラカタブラァー!!」
「アブラカタブラー」
「アブラカタブラァー!!」
「アブラカタブラー」
「アブラカタブラァー!!」
「アブラカタブラー」
おどろおどろしい祝詞が響く
ネックオーブ大聖堂。
司教の一人である|♠《スペード》の|Q《クイーン》ベラドンナが
「アブラカタブラ」と叫ぶと
信者の魔女らは後に続いて
「アブラカタブラ」と唱えながら
お辞儀をする。
「アブラカタブラァー!!」
「アブラカタブラー」
「アブラカタブラァー!!」
「アブラカタブラー」
「アブラカタブ......」
大聖堂の扉が勢いよく開く。
「ひぃっ!」
突如のことにベラドンナも驚く。
「ベラドンナ、二つほど報告だ」
「な、なんですかぁ...!」
「こっち来い」
「......はい」
大聖堂の外。
暗く冷たい風が吹く大きな庭に
ベラドンナは呼び出された。
対してベラドンナを呼び出したのは
|♠《スペード》の|K《キング》、ダチュラだ。
目つきが悪く、無精髭も目立つ。
「お早めに、
崇拝の儀はまだ終わっていないので」
「そんなお前らが信じる
『神様』からの朗報もあるぞ。」
「......!」
弱々しく驚くベラドンナ。
「まずは俺達の国の話からするとだな
禁断の果実を使った選別が成功した。
召喚した奴は牢獄に閉じ込めている」
「え、すごいっ!でも牢獄に閉じ込めるのは罰当たりなのでは......
召喚したのは、天界の者ですよ?」
「何をするか分からない。
分からないことほど怖いものは無い...
この国にとって有益に働いてもらえば
経緯を込めて謝罪と詫びをするつもりだ」
「......ちょっと可哀想」
「でだ、『神様』からの朗報だが」
ベラドンナが息を飲む
「『自由の水晶』が反応し始めた」
「!」
「分かっていると思うが
これは俺らの運命に関わる情報だ
公言はするなよ。いいな?」
「は、はい!」
ダチュラは不敵な笑みを浮かべると
冷たい風と共に
闇夜に溶けるように姿を消した。
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三つの国と幹部
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〝|♦《ダイア》〟〝|♥《ハート》〟〝|♠《スペード》〟
この三つの国には幹部が存在する。
|A《エース》
2
3
4
5
6
7
8
9
10
|J《ジャック》
|Q《クイーン》
|K《キング》
の計十三人からなる幹部は
各国最高峰の大魔道士の集まりである。
基本、数が大きいほど
権力や実力が大きいものとされている。