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わたくし、アンナマリーですわ

オレンジの甘い香りのモーニングティー。セバスチャンの入れる紅茶は極上の味わいですわ。白魚の手というのかしら、完璧に手入れされた指先に満足しながら、金ぶちの薄い陶器で素敵な朝の始まりです。今朝も窓際に青い小鳥がさえずっていて、わたくしをほっこりさせますの。

可愛いもので溢れたこの部屋も、そろそろ模様替えの時期かもしれません。わたくし、もう直ぐ16歳、社交界デビューを迎えます。待ちに待った大人の仲間入りですわ。わたくしが今まで胸に秘めていた野望を実行する時が来たのですね。

そんな事を考えていると、ドアがノックされてお気に入りのメイドのパティが来ました。


「アンナマリーお嬢様、おはようございます。ご機嫌はいかがですか?」

歳の頃は19のパティは私から見ても頼りがいのあるメイドです。

「パティ、おはよう。ほら見て?今朝も青い小鳥達が私に朝の挨拶しに来てくれましたわ?素敵な朝ね?」

わたくしは皆から天使の微笑みと言われる、邪気のない微笑みをぶちかましてやりましたわ。案の定、パティは心なしか顔を赤らめてうっとりしてますわ。ふふふ、今日もわたくしは絶好調ですわね。


パティに手伝って貰って姿見の前で着替えながら、わたくしはそろそろ野望開始の時期が来たことを再確認しました。丸みを帯びた身体はもうすっかり女の子から女性へと移行していて、胸元ひとつとっても十分に膨らんでいます。きっとどの殿方が見ても、ご自分でわたくしを花開かせたいとお思いになりそうですもの。

私は少し子供っぽく思える衣装の数々を見回して、こちらもそろそろ作り直しが必要だと確信しました。お父様と、お母様に頼まないといけません。…それとも少し子供っぽい方が、隙があって誘惑するのに好都合でしょうか?


わたくしが難しい顔をしていると、パティが心配顔で手に持っていた衣装を別のものに変えました。まぁパティに誤解させてしまいました。どの衣装でも大丈夫ですのに。でも今日は気分が良いので、小鳥の色にしましょうか。

「パティ、今日は可愛い青い小鳥色のドレスにしたいですわ。きっと素敵な1日になりそうですもの。」

パティは一瞬息を止めると何度も頷いてサッと綺麗な青いドレスを着せてくれました。

背中までの艶めく真っ直ぐな黒い髪と瑠璃色というのでしょうか、お母様と同じ深い青い目はわたくしのチャームポイントですわ。唇は昔から赤くて、わたくしは前世の記憶が蘇ってから自分を見る度に白雪姫の様だと思うのですわ。

さぁ、野望への第一歩の始まりですわ。
わたくしはパティを引き連れてファミリールームへ足を踏み入れました。


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