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8話 受ける以上、絶対に勝ちにいく

現在、奴との距離は6メートルほど、今の時点で奴のギフトの間合いに入っている。

「まずは、先手必勝!!」

ロブスは僕に接近するどころか、距離を保ちながら右へと駆け出し、木刀を振りかぶると、剣がゴムのようにニュルと急速に僕に目掛けて伸びてくる!! しかも、ただまっすぐ伸びてくるのではなく、曲線を描きながら向かってくるので、軌道が読みにくい。ギリギリまで見据えてから、僕が上半身を左へとやや傾けた途端、切っ先が僕の顔の右横を通り過ぎる。

彼のギフト名は[伸縮自在]、ロブスが持った武器全てが、どんな材質であろうとも、自在に形態を変え、伸縮させる事ができる。武器と込める魔力によって、間合いも異なる。現在の奴の間合いは、大凡7メートルほどだ。

「その最小限の回避能力は、本当に厄介だな」
「元々、兄や君と戦闘を繰り返したおかげで身につけたものだよ」

特に、兄たちとは7歳の頃から何度も模擬戦を実施しているおかげで、相手の動きを先読みして、瞬時に回避できる行動が取れるようになったんだ。その経験が活きて、スキル「動作予知」へと昇華したのだと思う。

「今度は、こっちの番だ!!」

僕は駆け回るロブス目掛けて、土から壁を形成させて、突き出していくのだけど、ことごとく回避されていく。

「は、予想通りの攻撃方法だな。言っておくが、俺を周囲を壁で覆うことは無理だぜ。ほらよ」

くそ、駆け回りながら武器を操作して、うねうねした木刀が僕目掛けて襲いかかってくるせいで、僕も回避しながら壁による攻撃を放たないといけない。あいつは動き回りながら、武器を操作することで、僕のスキル[動作予知]を攻撃側に転じさせないようにしている。今のままじゃあ、スキルを回避行動への行使だけで手一杯だ。

でも、今はこれでいい。
奴に勝つためには、まずこの土からの壁攻撃に慣れてもらわないといけない。

僕たちは、一進一退の攻防を5分ほどとり続ける。どちらの攻撃も紙一重で回避し、互いの隙を窺っている状態だ。ただ、ロブスは常に全力に近い走りで動き回り、攻撃をしている分、いずれ体力にも限界がくる。普通なら、相手の体力を限界まで使わせて、隙を見て攻撃することが、セオリーな勝ち方なんだろうけど、僕はそれを望まない。

僕は、女神様から貰ったギフトの力で勝ちたい!!

「さすがだよ、ロブス。それじゃあ、こいつはどうかな?」

そろそろ、頃合いかな?

今の僕の力じゃあ、足止めが精一杯だろうけど、確実に隙が出来るはずだ。僕の放った見えざる攻撃で、木剣の動きが途端に鈍くなり、軌道も不規則に変化する。うん、上手く作動してくれている。

「なんだ? 武器が何かにぶつかったような? あ!! 何故、そっちに動く!?」

よし、奴自身も軌道の不規則な変化に、頭が追いついていない。
これならいける!!

……そこだ!!

『ばーーーーーーーーーん』
「ぶは!? え、なんだ!?」 

ロブスが木剣の動きに注視した途端、それは起こる。彼が走りながら武器に集中していたこともあり、死角となる空中に張っておいた半透明な罠に気づかず、そのまま突っ込み、罠を砕いた。これにより、奴の動きが止まる。

「そこだ!!」

僕はこの隙を見逃すことなく、奴の周囲を壁で覆うけど、一箇所だけ小さな穴を開けている。そこにはウネウネと動く木剣があり、今でも普通に動き、僕を探している。

よし、それでいい。
こいつには今から役に立ってもらおう。

奴が[しまった!!]というような顔をしたけど、今はどんな表情を浮かべているのか、もう壁に覆われているせいでわからない。ここからは勝利を掴み取るためにも、迅速な判断が求められる。訓練学校での模擬戦も、意外と奥が深い。先を読まないと、ここからでも逆転を許される。

そう、僕の敵はロブスだけじゃないのだから。

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