326 そこから?
ドワーフさんたちに迫力負けしたサーヤです。
おいちゃんや神様たちが目を光らせる中、おばあちゃんのお裁縫箱を取り出します。
サーヤのハサミとお道具箱は、おいちゃんがハサミをちゃんとお手入れしてくれて、しまいました。
『はぁ~。この入れ物は木で出来てるのかい?』
『素晴らしいね。見てごらんよ。この細かい彫刻』
おばあちゃんは、お花の模様が好きだったから、お花の彫刻がしてあるんだよ。
『しかもどこもかしこもツルツルだよ。ささくれなんかありゃしない』
気持ちよくてなでなでしたくなるよね?
『角という角の処理も凄いな』
『全部、角が取ってある』
『そうか。こうすりゃ、怪我もしにくいな』
あれ?あの~、まだお裁縫箱開けてないよ?ハサミ見る前に箱で止まってるよ?たしかにお裁縫箱きれいだけどね?
『コケやすいサーヤがいたからな。机とかだけじゃなく、こういった小物まで、なるべく丸みのあるものを選んでたな。サーヤの持ち物はもっとこだわってたぞ。サーヤのお道具箱、あれはおばあちゃんの手作りだしな』
そうかぁ、それでみんな角っこ丸かったり、ふわふわだったりしたんだね。おばあちゃん、ありがとう~
『は?あの二段の箱かい?』
おかみさんが目を見開いて聞いてます。
『そうだよ。厚紙っていう丈夫な紙でな?箱を作って、友禅⋯布の端切れを張ってあるんだよ。蓋はちゃんと柔らかくなるようにクッションも入れてな』
おいちゃんが説明すると
〖紙と布で出来てたのね〗
『何でできているのか不思議だったんですよね』
おいちゃんの説明にジーニ様とフゥも話に加わって来ました。
『そうだったのか?こっちにも紙も布もあるんじゃないのか?』
今度はおいちゃんがびっくり!
〖だって、あんな綺麗な色と模様初めて見たもの。興味は持つわよ〗
『触り心地も素晴らしいですしね。でも、外と中で触った感じが違うから、不思議だったんですよね』
へえ、そうなんだ~
『厚紙が剥き出しのままだと綺麗じゃないからな。ちゃんと地が見えないように和紙が張ってあるんだよ』
〖その和紙っていうのは紙なのよね?〗
『それも綺麗でした』
みんながうんうんってしてます。
サーヤも和紙好きだよ!おばあちゃんが作ってくれたあのお道具箱大好き!にこにこ
『そうか。和紙の原料は植物だからな。手間はかかるが、その内作るか。サーヤも紙漉き覚えてるか?』
紙すき?覚えてるよ!
「あい!はっぱ、いれちゃ!」
『そうだな。紅葉入れたりしたな』
「あい♪」
楽しいよ!本物の紅葉入れた紙で、障子とか、ハガキとか、明かりの周りのやつ、んと?
『行燈、ランプシェードだな』
そう。あんどんキレイ!それを作ったよ!
〖できるの?あれが?〗
『私にもできるんですか?』
あれ?おめ目きらきら?
『まあ、俺も本職じゃないから簡単なのしか出来ないけどな?それでいいなら出来るぞ』
〖やりたい!〗
『私もやりたいです!』
きゅるる『私も』
やる気満々なジーニ様たち。と、あれ?絹さんも?
『もちろん』
『『私らもいいよね?』』
『『『俺らもな?』』』
お、おおぅ⋯ずずいっと、ドワーフさんたちも⋯
『お、おう。まあ、大したもんは出来ないからな?』
おいちゃん⋯頑張れ!
それでそろそろ開けていいですか?開けますね?お裁縫箱オープン!
『すごい!持ち運べる棚のようだね』
『美しい上に、なんて機能的なんだい』
『計算尽くされてるね』
『上が横に開いて仕切り?これ取り外せるのか!』
『下は引き出しで、中が布張り?』
『見た目以上の収納力だな』
おお!食い付きがすごい!
『これは、色々試したいね』
『そうだね。腕の見せどころだよ』
『これは四角いけど丸くしても、可愛いんじゃないかい?』
奥様方、作る気満々!そこに
『あるぞ?丸いのも。ハート型なんてのもあったな。あとは木にこだわらなくても、編みカゴにしたりな』
あっ!お、おいちゃん、今そんなこと言ったら
ギランッ!
『ゲンさん』
『そこんとこ』
『後で詳しく』
あ~やっぱりぃ
『え?いやその⋯』
『『『よろしくね!』』』ずずいっ
『あ、ああ⋯』
あ~あ。まただね~
『見ろよ。この針』
『こんな細く』
『こんな正確な物が何本も』
ん?親方達は針?
『あ~。針か⋯針も刀と同じ技法で作れるって聞いたことある気がするな。ただ、それこそ門外不出の技術だったような?』
お、おいちゃん、また⋯
『『『⋯っ』』』ギランッ
ドワーフさんたちキラーンしてるよ?キラーン?ギラーン?
『て、ことは、刀鍛冶を覚えれば』
『この針も』
『作れるかもしれないってことだな?』
『『『ふふ、ふははははは』』』
こ、こわこわ⋯笑い出しちゃったよ?悪役みたいに笑ってるよ?悪代官?
『し、しまった』
おいちゃん、気づくの遅いよ!
そして、いよいよ
『ほぉ、このハサミはまた、この重量感がたまらないな』
すごく恭しくハサミをそっと手に取ってる親方
『刃に模様?美しいな』
『サーヤ、ちょっと動きを見てもいいか?』
それを食い入るように見る弟さんたち
「あ、あい。いーよ」
こ、こわこわ⋯おめめがぁ
『ありがとな。それじゃ』
シャキーン⋯っ
『おお⋯』
お、親方?なんか、陶酔してる?
『兄貴、俺にも貸してくれよ』
シャキーンン⋯っ
『ああ⋯』
お、弟さんも、目を閉じて何かを噛み締めてる?
『な?すごいだろ?』
『次は俺だぞ』
『はぁ。なんて澄んだ音なんだい』
『余韻がいいね。心が洗われるようだよ』
『これは、切れ味も最高なはず⋯!』
お、おぉ。音だけで?
『それは裁ち鋏。布を切るハサミだよ。その刃の模様は刃文って言うんだ』
刀にもあるよね。刃文。
おばあちゃんは、そのハサミで、じょきって切ることもあったけど、シャーッて、ハサミが滑るように一瞬でキレイに切ってたよ。
『これもすごいな』
『刃の先の先までこだわってるな』
『握り心地もいいな。ちょうど手の平に収まるサイズもいい』
シャキシャキっ
『いいねぇ』
『細かいところまで切れそうだね』
『うんうん』
またもや音だけで!
『それは握り鋏、糸切り鋏とも言うな』
ちょっきんちょっきんちょっきんにゃ~♪縫った糸だって切れちゃうよ!
『すげえな。可能性は無限だな』
『学びてぇなぁ』
『腕がなるな』
ドワーフさんたち目が、ギランギラン⋯
『俺からしたら、この世界の鍛治のが気になるけどな?』
そうだよね~。おいちゃん研究者肌だしね。
『とりあえず、さっきの石もあるし、バリカン作れそうか?』
そうそう。大事なのはそれだよね~
『それなんだけどよ?バリカンってなんだ?』
『え?』
「ふあっ?」
ええ?そこから~?
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