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アンナが考えたリキくんの理想像


 どうにか、アンナの秘蔵動画を確保できた俺は、強引にアンナをレストランへと誘導する。
「ははは! 楽しみだな、お子様プレート!」
「うん☆ タッくんも食べたかったんだね☆」
「そうそう! 俺も食べたくて夜も眠れなかったんだよ」(棒読み)
 こうやって嘘で自分を塗り重ねて、大人になっていくのさ。

  ※

 昼食を終えて、アンナは追加でデザートを注文。
 テーブルに置かれたズキンちゃんのパフェを嬉しそうにスプーンですくう。
「おいし~☆」
 相変わらず、ブレないな。このお子ちゃまな趣味は。
 大人である俺にはしんどい施設だが、悪い取材ではなかった。
 俺ひとりだったら、絶対に来ないし新鮮な体験を味わえたと思う。

 ふとスマホを確認すると、一件のメールに気がつく。
 相手はリキだ。
 すっかり彼のことを忘れていた。

『タクオ。今一本目の映画を見終わったんだけど。隣りのおじさんがやけに話しかけてくるんだよ』
 ファッ!?

 受信した時刻は一時間ぐらい前か。
 うっ……リキ、まあ頑張ってちょうだい……。

「アンナ。そう言えば、リキが映画館に入る前、なんか話していたろ? なにを言っていたんだ?」
「ん? あ、リキくんがほのかちゃんとラブラブになれるように、ちょっとだけアドバイスしておいたんだよ☆」
 言いながらも、パフェの生クリームを美味しそうに頬張る。
「ほう。ちなみにどんな助言をしたんだ?」
「んとね……とりあえず、映画館に入ったら、たくさんのおじさんと仲良くなってねって言ったよ☆」
「……マジか?」
「ホントだよ☆」
 緑の瞳をキラキラと輝かせる。

 オーマイガー!
 ヤバい。俺としては、映画館の風景とか、どんな人たちが観に来ているかぐらいのレベルで考えていたのに。
 アンナはスナック感覚でマブダチを界隈に放り込む気だったのか。

 テーブルの上で頭を抱え込む俺。
 対してアンナは無邪気にパフェを食べ続ける。

「どうしたの? タッくん?」
「いや……リキの奴。今ごろ大丈夫かなって」
「大丈夫だよ☆ だって恋する男の子だよ? 好きな人のためだったら、なんでもやれるのが恋のチカラだもん! ほのかちゃんのために、リキくんは何が何でも取材してもらわないと☆」
 鬼だな、この人。
「そ、そうか……恋ってそんなに人を変えるものなのか?」
「うん☆ あ、そうだ! おじさんと仲良くなれた後はどうしよう」
「え? 後ってどういうことだ? まだリキに何かをさせるのか?」
「だってさ。ショタっ子とも仲良くなれないと、ほのかちゃんが興味持ってくれないでしょ? うーん、どうすればいいんだろう……。ショッピングモールで手当たり次第ショタッ子に声をかければいいかな。リキくんに甘いお菓子を持たせて」
 事案ってレベルじゃねー!
 犯罪だよ……。

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