12.契約に関する衝撃の事実
『へぇ、それで本当に契約できちゃったんだ。 凄いね君!! アハハハッ!!』
ちょっと笑い事じゃないよ! 契約ってそんなに難しいものだったの!? スノーラはそんなこと一言も言わなかったんだけど!
僕はスノーラを睨みます。それから小鳥も。そうしたらスノーラが、2人してそんなにほっぺを膨らませてどうしたんだって。ちょっと僕達怒ってるんだよ。もしかしたら2度と、僕と小鳥が契約できなくなるところだったんだから!
スノーラにさっさと質問をしろって言われたカース。最初に僕の名前を聞いた後、すぐに質問、というか聞いてきました。よく契約できたねって。それで小鳥がすぐにできたよって言ったら。僕に、そんなに小さいのに魔法陣描けるの?って。
魔法陣。スノーラもさっき魔法陣って。僕がその事を聞く前にカースが来ちゃったけど。
スノーラが契約の時の話をします。それを聞いたカースは一瞬驚いて、それからは大爆笑。何も分かっていない僕と小鳥。2人で顔を見合わせていたら、カースが笑いながら教えてくれました。
あのね、契約は本当は大変なものだったんだ。とっても難しいって事。能力として契約の魔法を使える人はたくさんいるけど、でもきちんと使えるようになるまで、た~くさん練習しないといけなくて。
まず最初に、契約の魔法陣を描けるように練習します。とっても複雑な魔法陣で、それを覚えるだけでも大変。ちょっとでも間違うと契約の魔法は使えません。だから契約の魔法を使い始めた頃は、本を見ながら魔法陣をしっかり書いた後に契約をするんだ。
それができるようになると、今度は魔法陣を思い浮かべる練習をします。上級者になると魔法陣を思い浮かべただけで契約ができるように。でもそれもしっかり魔法陣を思い浮かべないといけないから。上級者でも絶対に契約したい時は、魔法陣を描くんだって。
『レン君、魔法陣を知らない状態で契約できちゃったなんて。分かる? これってとっても変な事なんだよ? アハハハッ』
ちょっと、本当に笑い事じゃないんだけど。しかも。
『もし難しいやり方の方で契約に失敗したら、やり直しが効かなくて、君達は2度と契約できなかったかもしれないのに。ボクの話し分かるかな? 本当に凄いね。ハハハハハッ』
上級の契約で失敗すると、理由は分かっていないけど、その契約に失敗した者同士、契約のやり直しが出来なくて、契約できなくなっちゃう事もあるんだって。もちろん絶対にできなくなるわけじゃないけど、半々くらい?
僕も小鳥も今の話しを聞いて、2人でスノーラのお腹に突進しました。ドンッ!! 思いっきり突進したつもりだったんだけど、スノーラには効いていなくて。今度は2人で近くに落ちていた、スノーラの食べた魔獣の骨を投げました。こっちは少し効いたみたい。スノーラがやめろって言って、僕達から離れます。
『我はお前ならできると思って何も言わなかったんだ。言ったところで魔法陣をお前が描けるとは思えんし、思い浮かべるにしても難しすぎる。だったらお前の力でささっと契約してしまえば良いと思ったのだ』
『まぁ、確かにレンからは何か特別な力を感じるし、結果的に成功したからね。でも何も言わないでやらせるなんて。本当に君はアイツに似ているね。くくくっ』
僕達は骨を持ったまま、じりじりスノーラに近づきます。そして最初に小鳥がスノーラに骨を当てたあと、僕が投げて届かなかった骨を空中でキャッチして、スノーラに当ててくれました。カースがそれをみて軽く拍手。
そうそう、この骨キャッチ攻撃が、僕と小鳥の初めての連携攻撃になりました。僕は小鳥よりも大きい骨を投げたんだけどしっかりキャッチ。小鳥はとっても力持ちだったんだ。それにあんなに小さな足で、良く大きな骨が掴めるねと思ったけど。ま、2人で連携攻撃が決まったから良いや。
『言わないとダメ!! 失敗ダメ!!』
「うん! ちっぱいダメ!」
あんまり僕達が怒るもんだから、スノーラが謝りました。でも怒るのは当たり前でしょう?
『す、すまなかった。次から何かする時は説明する』
もう、本当に説明してね。
『でも、この感じ。しっかり契約できているね。それに相性もバッチリみたいだ。君達は良いコンビになると思うよ。良かったね』
今まで散々笑っていたカースが、今度はあの馬鹿笑いじゃなくて、とっても優しい顔で僕達に笑いかけてきました。スノーラも言っていたけど、カースも同じ事を言うなんて。僕達本当に仲良しコンビなんだね。2人で顔を見合わせてニコニコです。
『まぁボクからしたら、君も相性が良いと思うけどね』
小さな声だったから、何を言ったか分からなかったけど。カースはボソッと何かを囁いてスノーラの方を見ました。
『はぁ、で、次の質問は? 今の話しでだいぶ時間を使ったからな。質問は後1つだ』
『ボクは契約の説明しただけなんだけどね。君がしなかったから』
『良し、もう質問はないようだな』
『はいはい、分かりましたよ。じゃあ今日は質問はあと1つで良いよ、今度またゆっくり話しに来るから。う~ん』
カースの質問は、僕が何処から来たの?でした。何処から? 僕考えちゃったよ。地球って言えば良いのかな? それとも日本? それか別の世界? 僕が答えに困っていたら、スノーラが代わりに答えました。
『レンはアイツと同じ所から来たんだ』
『別の世界から来たって事?』
『それで我がレンを守る事になった』
『ああ、それで君、新しい加護を』
『きっと必要になるという事だろう』
『ふ~ん。アイツと同じ所からねぇ。ふふ、面白くなりそうだね。さて、約束だし今日はこれで帰るよ。近いうちにまた遊びに来るから。それか君達が僕の所に来てくれても良いし』
そう言ってカースが立ち上がります。そしてぽんっ! 本当にぽんっ!て感じで、カースが変身したんだ。カースは小鳥が言った通り黒い鳥に変身。うん、やっぱりカラスだったよ。でも僕の知っているカラスの大きさと全然違いました。とっても大きいカラス。今の僕と同じくらいかな。
『じゃあね、2人共』
僕達はカースに向かってバイバイ。カースはそれを見ると飛んで行きました。
『良し! 邪魔者は居なくなった。話しの続きを始めるぞ』