25章 実食
焼きそばを待っていると、20歳くらいの女の子に声をかけられる。
「焼きそばの量がすごいですね」
「そうですね」
「これは誰が食べるんですか?」
「私が食べます」
「10人前の焼きそばを、一人で食べるんですか?」
「はい。10人前の焼きそばを食べます」
女性は苦笑いを浮かべる。
「超人的な胃袋ですね」
超人的といわれたことに対して、苦笑いを浮かべるしかなかった
焼きそばを注文した男性から、
「ミサキさん、大食いガールの本領を見せてください」
といわれた。
ミサキは水を口に含むと、焼きそばを食べすすめていく。汗を流したからか、前回よりもおい
しく感じられた。
初めての手料理であることも、おいしさを倍増させている。自分の作った料理は、他人の作った料理よりも格段においしい。
喉を詰まらせないよう、適度に水分補給をする。水分、食べ物のバランスは非常に重要だ。
焼きそばを食べてから、5分が経過する。全体の40パーセントほどの、焼きそばがなくなって
いた。
焼きそばを食べていると、女子学生から声援を送られた。
「ミサキさん、ファイト」
「ミサキさん、頑張ってください」
「いいペースなので、その調子でいきましょう」
焼きそばを食べてから、10分経過。全体の70パーセントほどが、すでになくなっていた。
周りにいる人たちは、応援の声をかけた。
「ミサキさん、すごいです」
「完食まであと少しですね」
一部では心配する声も上がった。7人前の焼きそばを食べたことに対する、不安の声である。
「おなかはいたくないですか?」
「無理をしなくてもいいですよ」
「そんなに食べてしまったら、仕事できなくなりますよ」
10人前の焼きそばを食べたあとに、しっかりと仕事できるのだろうか。そのことについては、
大いなる不安を感じることとなった。
10人前の塩焼きそばは、15分程度でなくなってしまった。前回の半分未満のタイムで、完食す
ることができた。
短時間で完食できたのは、焼きそばの量が半分になったから。大食い用、提供用で、焼きそばの量が分けられている。
15分で食べ切った女性に対して、たくさんの拍手が送られることとなった。
「ミサキさん、すごいです」
「完食、おめでとうございます」
一部は不安そうな表情を浮かべていた。
「おなかはいたくないですか?」
「はい。心配してくれて、本当にありがとうございます」
ゆっくりとしようとしていると、シノブがこちらにやってきた。
「焼きそばを食べたら、食器を片付けてください」
「はい。わかりました」
ミサキは客に一礼したのち、仕事に戻っていく。