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ハルバートは虚ろな目をしながら床を歩いた。でも、あきらかに彼の顔色は悪かった。まるで薬に依存している者のような顔色だった。ハルバートが部屋の奥から堂々と現れると、一同は彼に敬礼をして道をあけた。そして、部下の1人が彼に慌てて状況を報告した。
「たっ、大変な事態であります隊長! その、スティングが……!」
部下の1人が慌てながら報告をすると、ハルバートは退けと言って彼を威圧した。
「うるさい! いちいち騒ぐな! んなもん見ればわかる! お前の声が頭に響くんだよ!」
ハルバートは怒鳴り声をあげてそう言うと、部下を片手で払いのけた。薬が相当効いてるのか、彼の足取りはふらついていた。まるで酔っぱらいのような足取りだった。ハルバートは瓶に躓いたり、近くにあった物を倒したりした。あげくの果てには立っている置物の鎧にぶつかって、彼はゲラゲラと可笑しそうに笑っていた。彼の情けない姿を見た一同は黙り込んだ。かつての勇ましい姿は何処へ行ったのか? 今はもう、そんな面影すらない。ハルバートは床に落ちている鎧の兜を拾い上げると彼はそれを小脇に抱えたまま、ふらついた足取りでジャントゥーユの方へ向かった。すると、途中で足下が何かにぶつかった。ハルバートは虚ろな目で自分の足下を見たのだった。すると、自分の足下に誰かの遺体が床に転がっていることに気がついた。
「ん、誰だこいつ?」
ハルバートはそう言うと足のつま先で、遺体をひっくり返した。すると死んでいる遺体がスティングだと言うことがわかった。初めは状況がのみこめなかったが、彼はスティングの遺体に哀れみの言葉をかけた。
「おお、スティングなんてざまだ……。見境なく盛って誰とでもヤりたがるからこうなるんだろ? こんな所で寝てたら風邪ひくぞ。誰かコイツに毛布をかけてやれ!」
ハルバートは哀れみの言葉をかけると、近くにいた部下に命令を出したのだった。そして、部下の1人は部屋の奥から毛布を取ってくるとそれを彼の遺体に被せた。周りはスティングの突然の死に酷く戸惑っていた様子だった。ハルバートは薬がようやく体から抜けると、シラフのような状態に戻った。そして、周囲に一言尋ねた。
「――で、誰がコイツを殺った?」
周りは彼の質問に黙り込むと、身長の低い男が彼に答えた。
「あ、あいつです……! あいつがスティングを殺りました……!」
男は怯えた顔をしながらそのことを話すと、震える手でジャントゥーユの方を指差したのだった。
「あの化け物がスティングを殺ったんです……!」
男はそう言うと直ぐに隊長の後ろに隠れたのだった。ハルバートは部下にその話を聞いた途端、いっきに目付きがかわった。
「お前がっ……!」