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コンビニおもてなしのNEW その4

 コンビニおもてなしの各支店・出張所ならびに関係部門の責任者を集めて週に1度開催している責任者会議ですが、その前に本日はコンビニおもてなしの一大イベント『バレンタインデーフェア』の最終日が控えています。

 まずは、こちらに注力しないといけません。

 すでにチョコレートケーキなどの予約品のお渡しは最終日前日の昨日からはじまっているのですが、本番は今日。
 予約品の受け取り予定の、実に9割がバレンタインデーフェア最終日である今日に集中している次第です。

 僕が店長を務めていますコンビニおもてなし本店でも、バレンタインデー関連商品専用のお渡しレジを臨時に1つ開設して、対応にあたる予定にしています。

 このお渡しレジは、ヤルメキスとケロリンのヤルメキススイーツコンビが交代で務める予定にしていまして、厨房では、アルカちゃんと新しくヤルメキススイーツ部門に加わったばかりのミクランの2人が店頭販売用のバレンタインデー関連商品を追加作成する予定になっています。
 もし、これでも人手が足りないようなら、僕も調理に参加しないと……そう思っていたのですが、

「店長さん、今日はバレンタインデーフェアの最終日ですよね? 何かお手伝い出来ることありますか?」
 そう言いながら駆けつけてくれたのは、オトの街のラテスさんでした。

 ラテスさんはこの日、コンビニおもてなしに卸しているロールケーキの納品に来ていたんですけど、そのついでに申し出てくれたわけです、はい。

「僕としてはありがたいんだけど……ラテスのお店の方は大丈夫なのかい?」
「はい、あっちは親友のヨーコさんと、テマリコッタちゃんが対応してくれていますので」
 そう言ってにっこり笑うラテスさん。

 そんなわけで、今日はそのご厚意に甘えさせていただくことにした次第です。

◇◇

 そして、そのご厚意をお受けさせていただいたのが大正解だったのを、僕は開店後1時間もしないうちに身をもって体感することになりました。

 ……いえね

 バレンタインデーフェアとして予約を受けていた分は、開店前に全支店ならびに出張所へ配布してあったのですが……店頭販売分をもとめてすごい数のお客様が、各地のコンビニおもてなしに一斉に殺到していきまして……

「店長やばいって、スイーツが早くも完売しちまったよ」
「店長様、チョコレート関連商品の補充を大至急お願いいたします」
「店長ちゃん! チョコレート関係のヤルメキススイーツがマジやばい、みたいな!?」

 といった具合に、各地の店長がスアの転移ドアをくぐっては、次々にバレンタインデーフェアの当日販売分の補充を求めて来た次第なんですよ……

 そんなわけで……

 この日のコンビニおもてなし本店の厨房では、アルカちゃんとミクラン、それにラテスさんと僕。
 そこに、ヤルメキスとケロリンの、店内で予約品を手渡ししていない方が加わって作業を行っていた次第なのですが……

「リョウイチお兄様! チョチョチョチョコレート関係のスイーツが完売してしまいましたわぁ」
「店長殿、スイーツ関連が品切れです。至急追加を……」
「て、て、て、店長さ~ん! ヤルメキススイーツが完売してしまって……って、ひゃん、す、スカートがぁ!?」

 と、作っても作っても、次々に各地の店長が転移ドアをくぐって本店の厨房に駆け込んできていました。
 これでは、作成するのが手一杯で包装まで行っている時間が……

「ったく、しょうがないわね! 包装はアタシ達スア様の使い魔が担当してあげるんだからね!」
 いつものツンデレを全開させながら厨房に姿を現したのは、さっきから出来上がったヤルメキススイーツのピストン輸送を繰り返し続けてくれているハニワ馬のヴィヴィランテスでした。

 その後方には、いつもはこの世界とは別の世界にありますスアの使い魔の森の中で、スアビールの生成や野菜類の栽培、ウルムナギやジャッケの養殖などを行ってくれているスアの使い魔達の姿がありました。

 その使い魔達は、贈答用のスアビールの梱包作業などを日頃から行っているおかげで、梱包作業を得意にしているみなさんなんだそうです。

 ……タクラ酒には贈答用の要望なんて一度も来たことはないんですけどね……

 それはさておき、使い魔のみんなのおかげで、ヤルメキススイーツを作成するグループと、出来上がったヤルメキススイーツを梱包するグループ。
 そして、ヤルメキススイーツをピストン輸送するヴィヴィランテスという役割分担が出来上がりまして、そのおかげでようやく各地の本支店へ、安定してバレンタインデーフェア関連商品を配達出来るようになった次第なんです。

 ……とはいえ、それでも調理人の数が若干足りない感じなのですが……

「タクラ店長さん、ここはヤルメキスさんとケロリンさんのお2人に同時に厨房作業へ回っていただきましょう」
「え? でもビナスさん。そうなるとヤルメキススイーツの予約分のお渡し係は……」
「期待の研修生を抜擢いたしますわ」
 そう言って、本店の副店長の魔王ビナスさんが指名したのは、パラナミオでした。

 パラナミオは、学校卒業後、すぐにコンビニおもてなしで働けるようにと、今から新人研修を受けていたんです。

 で

 その指名を受けたパラナミオは、
「はい! 精一杯頑張ります!」
 そう言って、気合いの入った表情を浮かべていた次第なのですが……

 その奮闘ぶり……すごかったです。
 これはもう、親としてではなく、コンビニおもてなしの店長として、マジでそう思いました。

「いらっしゃいませ! バレンタインデーフェアの予約分の引き換えはこちらでございます!」
 満面の笑顔で、臨時レジで声をあげるパラナミオ。
 そこに、

「あぁ、じゃあこれを……あと、当日追加って出来るのかしら?」
「あの、これを受け取りに……あとね、チョコレートをこれに変更って出来るかしら?」

 そんな感じで、いきなりいろいろな要望を言ってこられるお客様が結構な数おられたのですが、それに対してパラナミオは、

「はい、すぐに確認して参ります!」

 そう言って、深々とお辞儀をすると、その足で即座に厨房へ。
 そこで、僕に在庫の確認をしてですね、可能なら即座にその場で商品を手渡し、準備に時間がかかる際には、後で臨時レジに届けることにして、パラナミオにはお客さんにその旨を説明して、少しお待ち頂くように対応してもらっていたのですが、その全てをパラナミオは一生懸命にこなしてくれていたんです。

 時折、お客様が押し寄せすぎて、パラナミオの前が大渋滞になりかけたことが何度かあったそうなのですが、その都度魔王ビナスさんがフォローに入ってくれたり、スアが自分の分身であるアナザーボディを派遣してくれたりと、みんながパラナミオをフォローしてくれたおかげで、大きな混乱もなく、無事に業務をこなすことが出来た次第でした。

 他の支店や出張所でも、先日雇用し各地の支店に配属したばかりのマキモ10人姉妹のみんなが予想以上に奮闘してくれたおかげで、全店無事にバレンタインデーフェアを乗り切る事が出来た次第です、はい。

◇◇

 そんな、怒濤のバレンタインデーフェア最終日の営業時間を終えた後……

 オザリーナ村にありますコンビニおもてなし6号店2階の大会議室の中に、コンビニおもてなしの本支店ならびに出張所等関連部門の皆さんが集合していました。

 毎週恒例の責任者会議のためです。

 全員が揃ったところで、僕は
「今日は、バレンタインデーフェアの最終日だったわけですが、皆さんのおかげで無事にこれを乗り切ることが出来ました。本当にありがとうございます」
 そう切り出しました。

 これを受けて、みんなから一斉に拍手が湧き上がっていった次第です。

 なんと言いますか……僕が元いた世界でコンビニおもてなしを経営していた際にはですね、すでに本店1店しか残っていなかったせいで、こうして責任者が集まることもなかったもんですから……まさか、こんな拍手を受けることが出来るなんて……そんな感じで、感無量だった僕なわけです、はい。

 ひとしきり、みんなの拍手に感動したところで、僕は次の議題に入っていきました。

 はい、コンビニおもてなしの新店舗出店に関する話題です。

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