ララコンベ温泉祭り その4
コンビニおもてなしが運営している定期魔道船は、現在のところ、
コンビニおもてなし本店があります辺境都市ガタコンベを出発した後、
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テトテ集落 ー出張所
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辺境都市ブラコンベ ー2号店
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辺境都市ララコンベ ー4号店
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オザリーナ村 ー6号店
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魔法使い集落 -3号店
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辺境都市ナカンコンベ ー5号店東西店
こんな感じで、コンビニおもてなしの各店舗がある都市などをまわった後、再びガタコンベへと戻っています。
で、朝と夕方の便だけ、チウヤゲレンデまで出向く便が加わる感じです。
特に、人口が非常に多いナカンコンベから乗船する人の数がすごく多いんですが、そういった乗客のお目当てはララコンベとオザリーナ村にあります温泉なんですけど
・テトテ集落の果物狩り
・魔法使い集落の魔法使い戦隊キュアキュア5ランド
・チウヤゲレンデの雪遊び
こういった場所も人気になっています。
また、中には定期魔道船から眺める景色を満喫するために乗船なさるお客様も少なくありません。
そんなお客様のために周遊券も販売しています。
これは、乗船した都市をスタートにして、経路をぐるっと一周して戻ってくることが出来るというチケットになっています。
他都市で下船出来ない分、料金を少し安めに設定しているのですが、そういったお客様の多くは、他のお客様を気にすること無く空の船旅を満喫出来るようにと、個室を予約なさることが多いんです。
定期魔道船の個室は全部で10室ありまして、当初は家族用に準備していたのですが、今ではそんな船旅を楽しむお客様の予約で常時満室状態だったりします。
個室には特別サービスがありまして、お酒や料理を部屋までお運びしているんです。
この料理は、ブラコンベにありますコンビニおもてなし食堂エンテン亭で働いています猿人四人娘の1人こと、パーララが担当してくれているんです。
グー子がララコンベの温泉宿で
チョキーナがチウヤゲレンデのおもてなしゲレンデ宿で
それぞれ転勤して、そこですっごく頑張っているもんですから、パーララもそれに影響されたみたいでして、
「今度、定期魔道船の中で料理を提供するようにしてみようと思っているんだけど……」
って、毎週始めに開催している責任者会議で僕が発言したところ、その日のうちにパーララが僕の元に駆け込んできてですね、
「はいはいはーいッキ! やりますキ! やりたいキ! やらせてくださいキ!」
そんな感じで立候補してくれたんですよ。
パーララの料理は、空の旅を満喫なさっているお客様にも大変好評でして、個室と周遊券の売り上げがさらに伸びているもんですから、都合一ヶ月先まで予約で満杯になっている次第です、はい。
そんなパーララが作った食事の配膳係は、今のところスアが運営している人材派遣部門のチュ木人形にお願いしています。
ただ、彼女達の場合、話すことが出来ない上に単純作業しか出来ませんので、お客様から
「あれも追加で欲しいんだけど」
「料理の内容を変更してもらえるかしら?」
とか言った、ちょっとした申し出に対応出来ないことが無きにしも非ずなもんですから、ここにも人材を補充出来たらなぁ、と、思っている次第です、はい。
まぁ、まだまだ色々問題はありますけど、こうして定期魔道船も日々リニューアルを行いながら、頑張って営業を続けている次第です、はい。
特に、辺境都市ナカンコンベに出向いて商売を行う人々にとっては今では欠かすことが出来ない交通手段にまでなっていますからね。
ホント、頑張らないといけないわけです、はい。
◇◇
そんな定期魔道船の中、一般客室の一角では最近ちょっとした催し物が開催されています。
この一般客室は、個室とは違いましてだだっ広い部屋の中に、椅子がずらっと百近く並んでいます。
目的地に着くまで、その椅子に座ってもらっているわけです。
まぁ、定期魔道船の場合、行路を1週するのに1時間程度、チウヤゲレンデを経由して帰ってくる便にしても1時間半ほどで戻ってきますんで、そんな簡単な席でも、あまり問題はないわけです。
その分、個室よりも安くしてありますので人気は高いんです。
で
その客室の一角で、オザリーナ村で踊り小屋を経営していますシャラさんの一座が踊りと演奏を披露しているんです。
シャラさん達の踊り小屋って、毎日夕方から営業を開始していますので、昼間は手が空いているわけです。
以前は辺境都市ララコンベからやってきていた定期駅馬車便を踊りと演奏で出迎えていたりしてくれていたんですけど、定期魔道船の運行がはじまったせいで、駅馬車便の数がすごく減ったもんですから、踊り小屋の宣伝とオザリーナ村の温泉の宣伝を兼ねて、この踊りと演奏を行っているんです。
最近は、ララコンベ温泉祭りが近いもんですから、
「辺境都市ララコンベの温泉祭りにお越しの際には、少し足を延ばしてぜひオザリーナ温泉郷へもお越しくださいな」
踊りながら、そんな宣伝を連日行っている次第なんですよ。
で
その踊りと演奏なんですけど……元々、旅の一座として各地で踊りと演奏を披露し続けていたシャラ達だけありまして、すっごく上手なんですよ。
芸術とか、そういった物に疎い僕がみても、
「うわぁ、これはすごい」
って、一目でわかるくらいですからね。
そんなシャラ達のアピールのおかげもあってか、辺境都市ララコンベだけでなく、オザリーナ村の温泉宿にも予約が殺到している次第なんですよ。
あわせて、シャラ達が演奏の後に手売りしている踊り小屋のチケットも飛ぶように売れているそうでして、
「これはもう、温泉祭りが終わってからもやらないとね」
って、シャラ達もこの定期魔道船での営業に手応えを感じているようでした。
ちなみに
この営業に関しましては無料で場所を提供しています。
これは、シャラ達が温泉祭りのPRと、オザリーナ村の宣伝を兼ねて行っている営業なので便宜を図らせてもらったわけなんです。
何しろ、辺境都市ララコンベにも、オザリーナ村にもコンビニおもてなしのお店がありますからね。
大きな視点からいいますと、シャラさん達が行っている行為って、コンビニおもてなしの宣伝をしてくれているといえなくもないわけです、はい。
まぁ、もし今後も同じような申し出はあった際には、その都度値段交渉などを行っていかないとと思っているんですけど、これは今後の課題にしようと思っている次第です、はい。
◇◇
そんな中……
辺境都市ララコンベとオザリーナ村の中に、チラホラと屋台が出店し始めています。
ララコンベ温泉祭りの開催が数日後に迫っていますからね。
それに合わせて、ちょっと早めにやってきたみなさんがお店を出し始めているわけなんです、はい。
ちなみに、昨日あたりからちょっと雲行きが怪しくてですね、
「この雲行きだと……せっかくのお祭の期間が雨になっちまいそうだなぁ」
って、辺境都市ララコンベ周辺に何百年も暮らしている4号店店員の思念体、ララデンテさんが言っていたのですが……
そんなララコンベ……一夜明けた今朝から超快晴です。
空には雲一つない青空が広がっているんです。
その光景に、ララデンテさんも
「うっそだろ……あの雲行きで雨が降らないどころか、こんなに晴れるなんて……」
って言いながら目を丸くしていたんですけど……
そんなララデンテさんを、苦笑しながら見つめている僕……そんな僕の足下では、スアが水晶樹の杖を手にニコニコ微笑んでいた次第です。
……もうおわかりだと思いますけど……そうなんです。
スアが魔法で辺境都市ララコンベ一帯に立ちこめていた雨雲を魔法で消し去ってくれた次第なんですよ。
「……お役にたてた?」
そう言いながら、ニコニコしているスア。
そんなスアに、僕は、
「うん、おかげでお祭の人出もバッチリだし、みんなも喜ぶよ……もちろん、僕も嬉しいよ」
そう言いながら、スアの頭を撫でていきました。
身長差がかなりありますので、こうして頭を撫でるのがちょうどいいんですよね。
子供扱いしないでって怒られてしまうんじゃ、って思ったりすることもあるんですけど……
僕に頭を撫でられているスアは、頬を赤くしながら嬉しそうに微笑み続けています。
スアってば、こうして僕に頭を撫でられるのが大好きなんですよね。
「……旦那様、夜もご褒美よろしく、ね」
って、まぁ……そんなわけで、子供っぽくないことも当然要求してくるスアなわけです、はい。