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第10話 ウォンの策(2)

 またそれを知らない二国の王健太と、彼の側室の一人ミライは、と言うことはないか? 

 先程も二人は入念にウォンの様子を猜疑心のある目で窺っていたから。特に二国の王健太の側室の一人であり。主の護衛の任も務める間者の長であり。彼女の主から領地を頂いたミライは事実上のインプの女王と言っても過言ではない女性なのだが。彼女達翼のある小鬼、インプ族は、ゴブリンと同じで、大変に暗闇でも目が利く。瞳が暗闇の中でも見て確認ができるのだよ。

 そんな種族のミライがウォンの横たわる姿を、猜疑心のある目で注意深く見て観察しても。『多分、死んだか? 衰弱仕切って動けない状態では?』と、太鼓判を押す。押してしまうほど。ウォンは、上手く偽装、化ける。二人を騙すことに成功したと言う訳なのだ。

 だって健太自身が安心しきり。気が抜け、いつも野外。日の当たる場所での優艶、艶やかな、ミライの誘い。妃の一人として可愛がって欲しいと要求してきても。

『ごめん。今はだめだ!』、

『だから後でね。ミライ』と。

 健太は断るのに。

 今日は熱い陽を浴びながら健太は、二人は、日輪の、陽の熱さのように熱く、激しく、獣化し。己の気を緩ませながら嬌声を大きく叫び続けるほど。ウォンは上手く二人を騙すことに成功をしたと言う訳だから。

(しめしめ馬鹿な奴等よ……。せいぜい今の内に健太のクソガキは、この世の春や優雅さを楽しんでいろ。遅かれ早かれ。この俺がお前を殺し、骸にしてやるからな)と。

 自身の心の中で、(くくっ)と、苦笑を浮かべる。ウォンなのだ。


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