デラマンモスパオンを求めて その4
スアが召喚してくれた転移ドアをくぐった僕達。
そこで、ボクは思わず目を丸くしました。
「うわぁ……すごいです」
僕の横で、パラナミオも目を丸くしています。
それもそのはずと言いますか……転移ドアをくぐった僕達の目の前には、巨大なかまくらがいくつも出来ていたんです。
「あ、パラナミオちゃんクマ!」
その中の1つから姿を現したのは、クリッタちゃんでした。
おもてなしゲレンデ宿を経営してくれているクマタンゴさんの孫娘のクリッタちゃんです。
パラナミオと年齢が近いこともありまして、前回やって来た時にすっかり仲良しになっていたパラナミオとクリッタちゃん。
リョータやアルト、ムツキ・アルカちゃんといった面々もいるのですが、クリッタちゃんはまっすぐパラナミオの元へ駆け寄ってきました。
2人は、
「お久しぶりですクリッタちゃん!お元気でしたか?」
「はい、元気ですクマ! パラナミオちゃんも元気そうで嬉しいクマ!」
互いに手を取り合って、その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら笑顔を交わし合っています。
すると、そんなクリッタちゃんに続いて、クマタンゴさんがかまくらの中から姿を現されました。
「あぁ、タクラさん、それに皆さん、お待ちしてたクマ」
そう言いながら、嬉しそうに笑っているクマタンゴさん。
僕も、そんなクマタンゴさんに笑顔を向けていきました。
「お久しぶりですクマタンゴさん、今日からお世話になります……ところで、この雪のドームはいったい……」
「あぁ、これはカマクラと言いまして、昔、宿で少しの間働いていた者が教えてくれたものなんですクマ。
宿の前のモニュメントとして、毎年作成していたクマけど、久しぶりにつくってみたクマ。希望される方がおられたら、この中で食事を食べてもらうことも出来るんクマ」
「へぇ、そうなんですね」
クマタンゴさんの説明を聞いた僕は、思わず首をひねってしまいました。
いえね
この形状といい、その使用方法といい……まさにこれ、僕が元いた世界の北方でよく作られていたかまくらそのものにしか思えないわけです。
……となると、このかまくらをクマタンゴさんに教えたっていう、昔宿で働いていた人って……まさか、僕が元いた世界からやってきた人なんじゃ……
って……少し思ってしまったんですけど……まぁ、それはまずないでしょうね。
スアが教えてくれたんですけど、僕達が今住んでいるこのパルマ世界という異世界は、神界の下部にたくさん存在している世界の1つに過ぎないそうなんです。
そんな中の1つでしかないこの世界と、同じく、そんな世界の中の1つでしかない僕が元いた世界が、何度も都合よくつながって、都合よく人材交流よろしく人が行き来しれているはずが……ない、と、思うんだけどなぁ……
クマタンゴさんによりますと、このかまくらをクマタンゴさんに伝えた人って、この宿の周囲にデラマンモスパオンが出没し始めると同時にいなくなってしまったため、今は連絡がつかないんだそうです。
一度会ってみたかった気がしたんだけど、それなら仕方ありませんね。
◇◇
チウヤゲレンデでは、クマタンゴさんが運営なさっている『貸しソリ』のお店が出ているんだけど、ここには大勢のお客さんが列をなしています。
ここで貸し出されているソリなんですが、その大半はコンビニおもてなし本店にあります倉庫の奥に眠っていた不良在庫なんですよね。
……僕が元いた世界でも、僕が住んでいたあたり……っていうか、コンビニおもてなしがですね、僕が元いた世界で支店を出していたあたりにも、ソリ遊びを楽しめるほどたくさん雪が降る場所なんてなかったはずなんですが……この品物を仕入れた爺ちゃんって……いったい、これをどうするつもりだったんでしょうね……
で、まぁ、倉庫から引っ張り出してきたこのソリをですね、クマタンゴさんに全部お貸ししまして、このゲレンデで貸しソリをはじめてもらった次第なんですよ。
こちらの世界では、雪を使った遊びというと雪合戦くらいしかなかったそうなんですけど、このソリの運営が開始になったとたんに、
「まぁ!? このソリって乗り物、楽しいわ」
「もっと乗りたい!」
そんな声が予想以上に寄せられた次第なんですよ。
で
子供達に特に大人気になったこのソリなんです。
ソリは20個くらいあったのですが……その全てがすでに貸し出し中でした。
とはいえ
『ソリ遊びが大人気クマ』
クマタンゴさんから、事前にそうお聞きしていましたので、今日の僕達はソリを持参してきた次第なんですよ。
ソリの大半はクマタンゴさんにお貸しさせていただいているんですけど、何かあったときにあれば便利かな、と、思ったわけなんです。
……ただ、ここまで大人気になるというのは、僕にも予想出来なかったんですけどね。
◇◇
そんなわけで……
ソリ遊びに関しては、スアが準備してくれたソリを使用して、僕達は僕達で遊ばせてもらった次第なんです。
木製なんですけど、魔法でコーティングしてもらっているもんですから、そのおかげでとてもよく滑るんです。
すると、
「そのソリはどこで買ったの?」
「どこで売ってるのかしら?」
そんな感じで尋ねてこられる方々がすごく多かったんです。
これはスアに販売用のソリを作成してもらって、それを、おもてなしゲレンデ宿の中に設置していますコンビニおもてなしチウヤゲレンデ主張所で販売してみるのもいいかもしれなあいな、と、思っている次第です。
そんな感じで、意図せず目立ってしまった僕達は、ソリ遊びを早々に切り上げてですね、今度は雪合戦を行っていきました。
「あはは、まてー!」
「やだ、またないクマ!」
雪玉を手にしたパラナミオが、走って逃げているクリッタちゃんを追いかけています。
2人ともすごく楽しそうな笑顔をその顔に浮かべています。
その周囲では、リョータ達も笑顔で雪玉を投げています。
そんな感じで、僕達はお昼になるまで、みんなでわいわい楽しくすごしました。
◇◇
クマタンゴさんが作成したかまくらは
「ご自由にご使用ください」
そう書かれた札が、近くに立てかけられていました。
そんな中の1つ。
一番大きいかまくらの中に入った僕達は、このかまくらの中で食事を食べることにしました。
このかまくらの中に、宿の食堂の食事を配達してもらうことも出来るそうなんです。
ちなみに、これは有料のサービスなんだとか。
ちなみに、僕達はですね、コンビニおもてなしの幕の内弁当を中心に何種類かのお弁当を魔法袋に入れて持参してきていますので、そのサービスは利用しなかったわけです。
で
カマクラの中で、僕の弁当を口にしたパラナミオなんですけど、
「んん!? パパ! 、これすっごく美味しいです!」
満面の笑顔でそう言いながら、弁当をすごい勢いで口にしていきました。
「そんなに焦らなくても、お代わりもあるから」
僕が笑顔でそう言うと、パラナミオは、
「パパ! ありがとうございます」
満面の笑顔でそう言ってくれました。
そんな感じで、カマクラの中で昼食を終えた僕達は、一休みした後、夕方まで雪合戦をして遊んでいた次第です、はい。
「来て良かったね、スア」
僕の目の前ではしゃぎまくっているパラナミオ。
その姿を見つめながら、僕はそう言いました。
そんな僕に、スアも
「……うん、みんな楽しそう……よかった」
満面の笑顔でそう言ってくれました。
そんな感じで……僕とスアは、子供達の様子を笑顔で見つめ続けていた次第です、はい。