第8話 主、王の前にて……(6)
回りが! この場にいる二国の少年王健太の妻、妃達皆が! 驚愕! ワッと、騒めき始めるのだよ。 王が! 自分達の白馬の王子さまが狂乱をした! だから気が荒くなってしまったのだとね。と、言いたいところではあるのだが。
「ああ、女王が……」
「長が……」
「姉さまが……」
「アイカ姉が……」
「族長が……」
「アイカが王を……」と。
誰ともなく呟けば。
「殿を……」
「御方を……」
「旦那さま……」
「健ちゃんを……」
「うちのひとを……」
「あのひとを……」と。
各自各々が、自身の主、健太のことを各々が呼びながら。
「怒らして、致し方が無い奴だ」と。
皆が呆れた声、台詞を漏らし始めるだけでね。余り気にした素振りを見せないようなのだ。
だから二国の王健太が自身の妻、妃の喉元、首を締め続けようが、気にもしない素振り。様子を示す。表すのみでね。他人の夫婦喧嘩には首を挟まないし。意見も告げる。述べる気もないようなのだ。と、言いたいところではあるのだが。
一人だけ己の主である健太のことを制御! 止めようと試みる者がいる。