バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第8話 主、王の前にて……(4)

 〈パチン!〉だ。

 〈パチン!〉なのだ。

 自身の妻、妃を公衆の面前でね、打つ。打つのだよ。女王アイカの柔らかい頬へと平手打ちを入れるのだ。

 まあ、公衆の面前と言っても、彼の。健太の数多くいる妻、妃達の面前でだけれど。

『アイカ~! 何だ! その不満がある顔は!』と、でも言いたい顔、不満のあるような真っ赤な顔をしながら鬼の形相、憤慨しながら健太は、力一杯! 自身の妃である女王アイカの頬を平手打ち、打つのだ。

 だから女王アイカは珍しく、その場にしな垂れるように倒れこむのだよ。

 それも、彼女は? 女王アイカ自身は、大変に驚愕をした顔……。周りの女達……。


 そう、女王アイカ以外の妃達皆も、驚愕するのだ。まさか、己の、自分達の主、夫、王である健太が……。いつもニコニコと朝陽、日輪が立ち昇って地面、地上を照らすように微笑んでいることしかしないし。妻、妃達の強引な我儘や性的欲望に対しても。いつもニコニコと笑って誤魔化しながら寛大に、『うん、うん。いいよ』と、快く。耐え忍んでくれる主さまが、初めて妻達に見せた、ではないか?

 この中で一人だけ、自身の主、夫の憤怒、憤慨しながら怒声! 罵声を吐く! 

 それも? 自分自身に何度も向けられたことのあるシルフィーだけは驚愕をしないで、『いつ』とでも声を漏らしそうな様子、感じで、己の瞼を閉じるのだよ。まるで女王アイカが夫に叩かれる様子が、自分自身でもあるかのようにね。と、言っても。彼女、ジャポネの女王シルフィーと女王アイカは、先程も説明した通りで、回想シーンを思い出せばわかる通りだ。二人は別の世界に産まれた者の同士の同一人物だから。自身の主健太が、女王アイカの頬を打ったのは、自分自身が打たれたのと同じ思い。感覚なのかも知れないね? ジャポネの女王シルフィーはね。

 でも、他の妃達は違うから、自身の主のいつもと違う様子に驚愕をするのだよ。先程、女王アイカとウォンを捕らえて束縛をした戦姫エリエ自身もね。

 でっ、健太に叩かれ、その場にしな垂れ崩れる女王アイカはと言うと。

「何故? 私を打つの、あなた~。いや、健太! あなたが悪い! 悪いのでしょうに!」と。

 とうとう女王アイカは健太へと荒々しく不満を漏らす。漏らしてきたのだ。自身の持つ紅の瞳で、二国の美少年王を憎悪のある目でと瞳で睨みつけながら。

しおり