コンビニおもてなし6号店奮闘中
なんか気がつきましたら、ヴィヴィランテスがティーケー海岸から出勤してくるようになっていました。
で
おもてなし商会ティーケー海岸店兼コンビニおもてなしティーケー海岸出張所の管理人をしてくれているファニーと妙に仲が良くなったといいますか、なんか、同棲まで……
「ちょおっとアンタ! なんか変な勘違いしてるようだけどさ、アタシはあくまであのファニーって女の日頃の生活態度とか姿勢とかがあまりにもひどいから、それをびっしびししごいてるだけなんだからね! 直ったらすぐにスア様の使い魔の森に戻るんだからね!」
僕に向かって慌てた様子でそう言うヴィヴィランテス。
……ですが
その後方にやってきていたファニーはですね、
「……ふぅ、店長さん、これ今日の予約分」
そう言いながら、今までとあまり変わらない
けだるそうな声
思いっきり猫瀬
そんな姿なんですよ。
で
それを見たヴィヴィランテスは
「きー! あんたってばなんでまた元に戻ってんのよ! 家であれだけびっしびししごいたでしょうが!」
声を荒げながら、ファニーさんに詰め寄っています。
で、その袖を咥えると、
「さぁ、すぐに家に戻って今日も特訓よ! いいわね!?」
そう言いながら、転移ドアの向かっています
そうやって引っ張られているファニーですが……
「……うん、いいよ。今日もいっぱい特訓しよ」
そう言うと、ヴィヴィランテスの顔に口を寄せていって
チュ
その頬に、はっきりそれとわかるようにキスをしていったんです。
「ちょ、ちょ~~~~~~~~~~~~~~~~あんた、人前で何してんのよ!」
ヴィヴィランテスは、その顔を真っ赤にしながら声を荒げています。
一方のファニーさんは
「……ふふ……ヴィヴィランテス、可愛い」
そう言いながら、楽しそうに笑っています。
「ぶ、ぶぁか! 何を言ってンのよ! 私は誇り高きハニワ馬のヴィヴィランテスよ! そんなアタシを可愛いとか言ってんじゃないわよ!」
必死に声を荒げながら、ヴィヴィランテスは、ファニーの袖を咥えて転移ドアをくぐっていきました。
そんなヴィヴィランテスに引っ張られているファニーさん。
その顔に楽しそうな笑顔を浮かべていました。
「……しかしヴィヴィランテスってば……水晶一角獣(クリスタルユニコーン)のはずだけど……よっぽどハニワ馬が気に入ったのか、それとも動揺して間違ったのか」
そんな2人を見送った僕は、そんなことを考えていました。
まぁでも、
スアと僕をはじめ
ルアとオデン6世さん
ヤルメキスとパラランサくん
ツメバとチュンチュ
これにブリリアンとメイデンを加えていいかどうかはちょっとあれですが……とにもかくにも、僕がこの世界にやってきて以降、めでたい話が少なくないわけですので続いてくれたら嬉しいかな、と、思ったりしている次第です。
少々ずぼらなファニーと、超几帳面なヴィヴィランテス。
ある意味お似合いといえなくもないといいますか……ねぇ。
◇◇
さてさて、そんなカップル誕生の予感をひしひし感じているコンビニおもてなしですが、毎日の営業も目一杯頑張っています。
本店ならびに支店、それに出張所を含めたコンビニおもてなしは、どの店舗も右肩上がりで収益があがっています。
その中で……一番売り上げが伸びていなかったのがオザリーナ村にありますコンビニおもてなし6号店でした。
ここは、元々何もなかったところに、近くにある辺境都市ララコンベの温泉を引き込んで、温泉郷を作ったわけなんですけど、
・ララコンベに近い
・交通手段が駅馬車しかない
そんなマイナス条件があったもんですから、オザリーナ村の温泉客がなかなか伸びなかったんですよね。
で、それに足並みを揃えるようにして、コンビニおもてなし6号店の売り上げもなかなか伸びなかったんです。
いえね、赤字は出していなかったんです。
ですが、売り上げがほぼ横ばいが続いていたといいますか……
それでも、6号店の店長をまかせたチュパチャップがですね
「みんなでしっかりがんばりましょう! まずは出来る事からです!」
店員のみんなを前にして、毎日笑顔で元気にそういい続けていたんです。
チュパチャップが頑張っていたのは
・笑顔でいらっしゃいませ
・笑顔で接客
・笑顔でありがとうございました
「とにかく、まずはこれを徹底しましょう!」
だった次第なんです。
で
それを真っ先に実践していたのが、アレーナでした。
コンビニおもてなし6号店に配属した新人がやめていった中、唯一店に残ったアレーナ。
いつもすっころんではチュパチャップのスカートをズリ下ろしてしまうアレーナなんですが
「い、いつも店長にはすっごく迷惑ばっかりかけてるんです……こ、こんな時にがんばらないと!」
と、気合い満々の様子でですね
「いらっしゃいませ! コンビニおもてなし6号店へようこそ!」
「ありがとうございます! ではお会計させていただきます!」
「ありがとうございました! またお越しくださいませ!」
と、誰寄りも大きな声と満面の笑みで接客にあたっていた次第なんです。
たまに、僕が様子を見に行った時にもですね、そんなアレーナの元気な声が店内に響いていた次第です。
それにつられるようにして、他のみんなも元気に声をだしていくもんですから、コンビニおもてなし6号店は相乗効果で、雰囲気がどんどんとくなっていた次第なんです。
それに呼応するように、コンビニおもてなし6号店の売り上げもじりじり上がり始めたんです。
これには、もう1つ別の要因がありました。
いえね、このオザリーナ村には、辺境都市ナカンコンベから多くのお店が出店してくださっているんですよ。
そのため、どのお店もララコンベから定期的に荷馬車を呼び寄せて商品を補充していたわけです。
で
そんな皆さんの交通の便を良くするために整備を続けていたナカンコンベーオザリーナ村街道の石畳化が完成したんですよ。
今までは未舗装の山道だったこの街道なのですが、その全てが石畳化されたことで、荷馬車の往復にかかる時間が大幅に短縮されただけでなく、ナカンコンベからオザリーナ村への直通の駅馬車まで開通したんです。
朝晩の、1日2便しかありませんが、ナカンコンベから温泉のあるオザリーナ村への駅馬車が開通したことでそれを利用してオザリーナ村を訪れる観光客の方がジワジワ増加している次第なんですよ。
ちなみに、この街道の工事をしてくれたのは、辺境都市ナカンコンベに支店を構えていますルア工房です。
で、この街道のおかげで交通の便がよくなったオザリーナ村に、新たに出店を申し出てくるナカンコンベのお店も増えているそうです。
この方々は、本当は定期魔道船が就航しているララコンベに出店したかったみたいなんですけど、すでにララコンベの中は、新たにお店を出店出来る余地がないんですよね。
そのため、その近くにあり、発展中のオザリーナ村に目をつけてくれたというわけです。
今はまだ街道開通のご祝儀みたいなところがありますけど、この調子でお客さんが増えていってくれたら……そう思っている次第なんです。
で、
その街道の開通とともに、コンビニおもてなし6号店も徐々に客足が伸びていまして、チュパチャップ達も気合いをいれて頑張ってくれているんですが……
「うわぁ、またこけてしまいましたぁ」
「ひゃあ!? またスカートがヵぁぁ」
前より多少減りはしたものの……相変わらずアレーナとチュパチャップのスカートをめぐる攻防は続いているようでして……