スア製太陽光発電パネルのその後
コンビニおもてなし主導で始まった、オール人工魔石化事業ですが、徐々に魔法使い集落の皆さんの手で運営してもらう方向に転換し始めています。
と、いいますのも
この作業は魔法を使える方でないと出来ません。
そこでその作業の大半を魔法使い集落の皆さんに手伝ってもらっていたのですが、これが予想以上に上手くいっているんです。
元々、この魔法使い集落というのはですね、コンビニおもてなし3号店の中にありますパルマ大陸最大級の品揃えを誇っている魔導書などを超豊富に扱っている書籍コーナー目当てでわざわざ転居してこられた魔法使いの皆さんによって構成された集落なんです。
そのため、産業らしい産業は、魔法薬作りくらいしかなかったんですよね。
その魔法薬は、コンビニおもてなしが優先的に買い取りさせていただきまして、スアの検査をクリア出来た商品のみ、『スア認定魔法薬』としてコンビニおもてなし各本支店ならびに出張所で販売しているんです。
で、
そんな魔法使い集落のために、何か大きなお店か、工場的な何かを誘致できたりしないかな、と、常々考えていた僕だったんですけど……この人工魔石精製作業を、この魔法使い集落の皆さんが営む工場に出来たらな、と、思ったわけなんです。
これには、現在の魔法使い集落の長的な立場になられているヘリオミさんも
「そうしてもらえると、集落のみんなもとても喜びますわ」
そう言って、いつも以上に生真面目な表情をその顔に浮かべながら頷いてくれました。
そんなわけで、この、人工魔石精製作業などを行う工場を
『魔女のパーティ会場』
と命名し、その作業場をコンビニおもてなし3号店が入店しています、僕の屋敷の地下ってことにした次第です。
一応、魔女のパーティ会場はコンビニおもてなしの関連企業の1つってことにしてありますけど、魔法使い集落の皆さんが望まれるようでしたら、いつでも独立してもらっても構わないと伝えてあります。
とはいえ
「せっかく私達に、こんなやり甲斐のある仕事を与えてくださった、コンビニおもてなしさんを裏切るような真似は出来ません」
と、ヘリオミさんは言ってくださいました。
ヘリオミさんによりますと、これは魔法使い集落の皆さんの総意でもあるそうなんです。
なんだか、すごくありがたいお話です。
「うん、これからもよろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ」
僕が差し出した右手を、ヘリオミさんは最敬礼なさりながら両手で握りしめてくれました。
こうして、魔女のパーティ会場が始動していきました。
◇◇
ただ、こうしてスタートした人工魔石の作成をメインの仕事にしている魔女のパーティ会場ですが、問題を抱えていないわけではありません。
この魔女のパーティ会場製の人工魔石を導入してもらうにあたりまして、1つ大前提があるんです。
それが
『コンビニおもてなしがある都市でしか運用出来ない』
と、いうことなんです。
これは、コンビニおもてなしの地下に巨大な人工魔石を設置しておいて、オール人工魔石化した各店の地下に設置してある人工魔石とこれをリンクさせることによって、各人工魔石の残り魔力量の把握と、備蓄魔力量が減少している人工魔石に魔力を遠隔操作で補充しているからなんです。
最初は、この管理・補充作業のすべてを魔法使い集落にある3号店の地下から行おうとしていたのですが、スア曰く
「……ナカンコンベくらいまで離れちゃうと、ちょっと難しい」
とのことだったため、急遽、コンビニおもてなしの各本支店の地下に、この人工魔石管理・補充用の作業を行うスペースを設けて、その作業をスア製のチュ木人形達にお願いしているわけなんです。
ですので、このオール人工魔石化は、現在コンビニおもてなしの本支店ならびに出張所が出店しています
辺境都市ガタコンベ、同ブラコンベ・同ララコンベ・同ナカンコンベ・オザリーナ村・テトテ集落/魔法使い集落
現状これらの都市などでしか展開出来ないんです。
とはいえ、多くの商会が店を構えている辺境都市ナカンコンベで、このオール人工魔石化がジワジワすすでいるもんですから、魔女のパーティ会場はそれなりに日々忙しかったりするそうなんです。
この調子で、このオール人工魔石化作業が軌道にのって、魔女のパーティ会場が大繁盛してくれるといいのですが……
とにもかくにも、この魔女のパーティ会場の設立に関わった僕としては、スアと一緒にこれを全面的にバックアップさせてもらおうと思っている次第なんです。
まだ試行錯誤なところが多い魔女のパーティ会場ですが、今のところ順調に推移している感じです。
ちなみに、この魔女のパーティ会場には、スアとパラナミオが特別顧問として参加していまして、2人して人工魔石の材料になります骨人間達を3日に一回の割合で納品している次第です。
この骨人間召喚ですが、魔法使いだからって全員出来るわけはないそうなんです。
特にこの召喚係の魔法は、使役者との相性もあって、かなり難しいとされているんです。
パラナミオの場合、サラマンダーが召喚魔法と非常に相性が種族だったもんですから、この魔法をあっさり習得出来ちゃっていたんですよね。
そういった面から考えると、パラナミオもなかなか侮れないな、と思ったりするわけです。はい。
……まぁ、過分に親馬鹿要素が混じっていますが。気にしないでください。
◇◇
各地にありますコンビニおもてなし。
その地下に人工魔石を設置し、その人工魔石に魔力を補充するために、人工魔石を地下に設置した店舗の屋上にはスア製太陽光発電パネルを設置してもいます。
この作業は、人工魔石の地下設置と会わせてスアが全て引き受けてくれました。
一応僕も、時間の許す限りスアの作業の手伝いとして一緒に回っています。
……まぁ、ただの人間でしかない僕が、そういった魔法の現場で役立つことはまずなかったんですけどね。
チュ木人形達の配属や、太陽光発電パネルと地下に設置した人工魔石との接続作業並びに、その都市内でオール人工魔石化に対応した家との間に魔法でケーブルを接続する作業をスアにお願いしているんですけど、スアはこれらの作業を一箇所あたりわずか10分少々で終えてしまっているんですよね。
ホント……わが妻ながら、その技量にはホントいつもびっくりさせられます、はい。
ちなみに、ヘリオミさんの話によりますと、
「スア様が行っている作業を、私達「魔女のパーティ会場」が請け負った場合、確認作業が出来るようになるまでに、1ヶ月とか2ヶ月はかかってしまいそうです、はい」
とのことでした。
オール人工魔石化を希望してくださった商会などに出向いていって、その地下に人工魔石を設置する作業なども全てスアが行ってくれているのですが、この際には魔女のパーティ会場で働いておられる魔法使い集落の皆さんも同席なさって、その様子を見学することが少なくありません。
少しでも早く、すべての作業を自分達だけで行えるようになりたいんでしょうね。
ホント、みんなには頑張ってほしいものです、はい。
◇◇
そんな中……
数日経ったコンビニおもてなし本店の厨房に、魔王ビナスさんの姿がありました。
はい、これ、育休中だった魔王ビナスさんが自らの希望でこの育休を破棄し、即座に現場復帰されたわけです。
僕個人としては、まずはしっかり子供さんの側にいてあげてほしいな、と、考えたりもしたものの……ぶっちゃけ、魔王ビナスさんがいてくださると弁当作成作業もすごくはかどりますからね。僕としても非常にありがたいわけです、はい。
そんなことを考えている僕に、魔王ビナスさんは
「えぇ、店長さん。これからも一緒に良い仕事をさせてくださいね」
魔王ビナスさんは、そう言いながらにっこり微笑んでくれました。
それでいて、その手の動きは止まっていません。
今も炒め物を大量に作成している魔王ビナスさんです。
……こうしちゃおられません。
僕は魔王ビナスさんに
「こちらこそよろしくお願いしますね」
笑顔でそうお返事させてもらいまして、それから早速、厨房作業を開始した次第でした。