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    俺は悲しき猫である。

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                  西の茶店







 俺は猫である。



 名前はマリーだ。



 なぜ俺が猫で、なぜマリーなのかは、俺もよくわからない。



 だが、俺はどうやら、生後四か月の三毛猫のメスらしい。



 どうして一人称が「俺」なのかというと、前世の記憶がしっかりと残っているからだ。



 俺は城田祥太郎42歳。中堅企業勤務のサラリーマン。妻と娘がいる。



 いや、いたはず、だった。



 それがどうしてこうして、今はマリーと呼ばれて保護猫シェルターの世話になる毎日だ。



 母猫や兄弟猫はどうしているのだろうか。



 気が付けば、一人だった。



 誰かに抱かれ、連れてこられたことは覚えている。



 まだ小さすぎて、意識がもうろうとしていた。



 自分がマリーと呼ばれて、いや俺は城田祥太郎だ、と答えようとしたら「にゃー」と声が出てびっくりしたものだ。

 

 そして、自分の手がクリームパンのような愛らしい猫の手であり、ひげがあり、耳があり、しっぽがあり、三毛猫であると認識したのだ。



 どうやら前世の記憶を持ったまま、俺は猫に転生したらしい。



 異世界に転生ファンタジーなどは巷で流行っているらしいが、現世に猫に転生とはどうなのだろう?



 しかも今は一体いつなのだろうか?



 シェルターという限られた世界の中では、情報はほとんどなく、知る術はない。



 俺は時間が来ると与えられるカリカリを食べながら、毎日を過ごしていた。



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