秋の収穫祭アフター
秋の収穫祭も無事終了しました。
終了した翌日、ララコンベ温泉宿の宴会場を使って慰労会が開催されました。
今回の収穫祭は、ララコンベ温泉郷とオザリーナ温泉郷の合同開催でした。
ですので、慰労会には両温泉郷の関係者の皆様が一堂に会しています。
秋の収穫祭の翌日と言いましても、温泉郷を全休にするわけにはいきませんので、比較的お客さんが少ないお昼の時間帯に、参加可能な関係者だけを集めて開催されています。
僕の場合、お昼の時間帯は、お弁当を買いにこられるお客様が殺到するまさにかき入れ時のため、少し遅れて参加させてもらった次第です。
コンビニおもてなし本店で接客業務を行っていた僕は、お客さんが少なくなってきた頃合いを見計らって
「じゃ、ビナスさん後はお願いしますね」
「はい、お任せくださいな」
副店長の魔王ビナスさんとそんな会話を交わしてから、転移ドアでララコンベ温泉郷へと出向きました。
転移ドアの出口にあたります、コンビニおもてなし4号店の中では、
「はいはいお客様~、こっちのレジでお受けします、みたいな!」
いつものように、店長のクローコさんの元気な声が響いています。
ここララコンベ温泉郷のお客さんの少ない時間帯とはいえ、
その時間を利用して、温泉郷で働いておられる皆さんが自分達のお昼を買いに殺到なさるもんですから、コンビニおもてなし4号店はこの時間も大勢のお客さんで賑わっています。
4号店独自のサービスとして、レジ横を店外に突き出した構造にしてありまして、そこで温泉まんじゅうや焼き温泉まんじゅう、焼き芋など乃実演販売を行っているんですけど、そこにも大勢のお客さんが殺到しています。
「みんなご苦労さま」
そんなみんなの邪魔にならないように、一声だけかけた僕。
「あ、店長ちゃんおツカ~」
「おう、店長殿、お疲れさん」
クローコさんや、実演販売コーナーを仕切っているララデンテさん達が笑顔で挨拶をかえしてくれます。
そんなみんなに見送られながら、僕はコンビニおもてなし4号店を出て、そのすぐ近くにありますララコンベ温泉宿へ向かいました。
その2階、宴会場に通された僕。
「失礼しま~す。遅くなりました~」
控えめな声でそう言いながら、宴会場のフスマを開けると……
宴会場の中は、まさに宴もたけなわの状態でした。
会場の中心では、オザリーナ温泉郷のシャラが、ハープの音に合わせて楽しそうに踊っています。
すでにお酒が入っているのか、その動きはどこか酔拳を思わせました。
主賓席では、
「無事成功してよかったですわぁ」
そう言いながら号泣しているオザリーナの姿があります。
そんな感じで、会場の中はすでにすっかり出来上がっている感じですね。
あまりにも盛り上がっているもんですから、僕が入って来たことも、最初はほとんど気が付かれませんでした。
しかも、席につくなり
「ねぇ、タクラ店長聞いてくださいよぉ!」
と、すっかり酩酊しているオザリーナが、まるで僕が随分前からここに座っていたかのような勢いで話しかけてきたもんですから、僕は一瞬にして慰労会に加わることが出来ました。
その後の僕は、
ご機嫌な様子のオザリーナの相手をさせられつつ、
ようやく僕の存在に気が付いた皆さんにお酌をされつつ
慰労会を満喫していきました。
ブラコンベ辺境都市連合の中では一番規模の小さいララコンベですが、オザリーナ温泉郷を加えても、ガタコンベにはかなり及びません。
ですが
そんな中でも、今回の秋の収穫祭をみんなで頑張って成功に導けた。
そんな連帯感といいますか、一体感がすごく伝わってくる感じです。
「オザリーナ温泉郷もララコンベ温泉郷も最高だね!」
踊っているシャラが、楽しそうに声をあげています。
それに合わせて、
「ララコンベ温泉郷ばんざーい!」
「オザリーナ温泉郷ばんざーい!」
そんな声が会場のあちこちからあがっていきました。
そんな感じで、この慰労会は閉会予定時間の夕方ギリギリまで、賑やかに開催されていきました。
◇◇
酩酊しまくっていたオザリーナはさすがに今日はもう仕事が出来そうにありませんでした。
この事態を予見していたらしく、オザリーナ温泉郷で、オザリーナの元で働いている彼女の元メイド達が会場に来ていまして、
「オザリーナお嬢様は私達が連れて帰りますので」
「あとはお任せくださいませ」
そう言いながら、2人がかりでかついで連れ帰っていました。
温泉宿前から、オザリーナ温泉郷へ向かう臨時駅馬車が準備されていましたので、慰労会に参加したオザリーナ温泉郷の皆さんは、これに乗り込んでいました。
「店長ちゃん、今度お店にも来てね! 店長ちゃんには目一杯サービスしちゃうから!」
駅馬車に乗り込んでいくシャラが、腰をくねらせながらそう言いました。
その後方に付き従っている、シャラの店の従業員達も笑顔で頷いてくれています。
そんな一同に、僕は、
「そうだね、近いうちにお邪魔させてもらうよ」
笑顔でそう答えました。
その後、オザリーナ温泉郷のみんなを乗せた駅馬車が、オザリーナ温泉郷に向かって出発していきました。
駅馬車から手を振るオザリーナ温泉郷の皆さん。
そんなオザリーナ温泉郷の皆さんを見送るララコンベ温泉郷の皆さん。
僕も、ララコンベ温泉郷の皆さんと一緒に、オザリーナ温泉郷の皆さんを見送りました。
再建途中のララコンベ温泉郷
出来たばかりのオザリーナ温泉郷
どちらも、協力しながらどんどん成長していってほしいな、と、心から思った僕でした。
◇◇
その後、ララコンベ温泉郷の皆さんに挨拶をしてから、僕はコンビニおもてなし本店へと戻りました。
片付けが終わると、店内の最終チェックと、魔法レジを操作してコンビニおもてなし全店の売り上げ状況を打ち出すまでが僕の仕事になっています。
コンビニおもてなし全店で魔法レジを導入していまして、本店にある魔法レジで一括管理されています。
各支店がレジの締め処理を行うと、中のお金がすべて本店のレジに転移する仕組みになっています。
この際、売り上げデータとレジ内金額の照合も行われていますので、差異が生じることはありません。
ちなみに24時間営業している3号店だけは、他の店が就業する時間に合わせて仮締め作業をしてもらっていまして、その際に釣り銭用のお金を残し、それ以外のお金が送金される仕組みになっています。
以前は、各支店の売り上げは全支店長に毎日コンビニおもてなし本店まで持参してもらっていたんですけど、スア製のこの魔法レジを導入してからは本当に便利になっています。
売り上げ状況のチェックと、各支店の売り上げ状況を日報にまとめたら、僕の1日の仕事は一応終了になります。
明日、朝一で、中央レジを通して3号店以外の各支店のレジに直接釣り銭を送信するのを忘れないようにしないといけないんですけどね。
◇◇
自室に戻って、日報作業を終えた僕は、売り上げをスア製の金庫にしまいました。
「パパ、もう大丈夫ですか?」
部屋のドアのあたりから、パラナミオがのぞいています。
「うん、もう終わったよ、さぁ行こうか」
僕がそう言うと、パラナミオは満面の笑みを浮かべました。
いえね
今日は我が家でも秋の収穫祭の打ち上げをすることにしているんです。
我が家の子供達も、出店で頑張ってくれましたからね。
で
いつもでしたら、こういう時の料理は僕は作るのが常なんですけど、今日は子供達が頑張って作ってくれています。
パラナミオやアルト、ムツキ達も、最近は僕や魔王ビナスさんと一緒に料理を勉強していますので、そのお披露目といったところです。
すでに実践を経験しているアルカちゃんもいますしね。
ただ、今日はですね、ここにルアの娘のビニーちゃんも加わっていて
「わ、私だって料理出来るんだからね」
と。言いながら、リョータを挟んでアルカちゃんに火花を飛ばしていたんですけど……
と、とにもかくにも、
「みんな、本当にお疲れ様でした」
僕はリビングに入るなり、みんなに笑顔でそう言いました。
えぇ、まずはしっかり慰労会を楽しみたいと思います。