バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

10 いちばん軽いキスなら私でも…


(ゴクリッ !)

「今日は頑張って良く戦いましたね ! ワタクシの手にキスをすることを許しましょう !」

(上手くいくかしら ?)


「はい、ありがとうございます聖女様 ! 」

クラウは何のためらいもなく、細身の身体にブラウンでふわふわの髪を少し風になびかせながら跪いて私の手にキスをした。

「 ……チュッ」

「 ううっ !」

(なんてことかしら ? 私の小さな夢がひとつメチャクチャ簡単にかなってしまったわ !!

いいの ? これって本当にいいの ? だけど私の願望のままにこんなことをしてしまうなんて、ちょっと悪いことをしてる気分だわ ! だけど、これくらいなら許されるよね ? 足の裏を舐めろとか足の親指と人さし指の間を舐めろとかって言ってるんじゃ無いもんね !!!

いけない !! 私のフェチが少し出ちゃったわ ! 舐めるのは靴だったかしら ?(汗)

ホントいけないわ ! こんなにスムーズにいってしまったらどんどんあんなこととかこんなこととかお願いしたくなっちゃうじゃないの~ !! あとは…… ナニをしてもらおうかしら ?)



「聖女様 ! 過分な褒美をいただき、ありがとうございました !」

私があれこれゲスな想いを巡らせてあたふたしている間にクラウはとっくに下がっていた。

(頑張って鍛練した成果を聖女様に褒めていただいたよ。やったー、スゴく嬉しい ! )
アイリの一歩踏み出してしまった性的嗜好とは裏腹に素直なクラウディーは心から喜んでいた。


(あ~ 残念 !!!! もっとスゴい褒美を求めてくれても良かったのに~〜 ! )

私は山のようになった討伐済みの魔物をブツブツ言いながらアイテムボックスにしまい込んだ。

数え切れないほどの魔物を(ほうむ)って、私は平気だけどクラウは倒れ込みそうなほど疲弊(ひへい)しているように見えた。彼は両ひざに手を置いて腰をかがめ、まだ相当に息が荒いようで辛そうだ。

 体力もそうだけど魔力は枯渇しそうなほどだった。
それだけにレベルアップしてステータスに及ぼしたその恩恵はとても大きいものだった。

鑑定のスキルを使って二人のステータスを確認すると、私はレベルが4になりクラウは14からスタートして、なんと一日で22まで上がっていた。

「うわあ ! クラウはずいぶんステータスが上がったわね。剣術と風魔法のスキルも一つずつ上がったしSPがまだ182も貯まっているわよ」

「そうなのですか ? 聖女様は教会で見てもらわなければ分からないような事まで何もかもお見通しなのですね ?」

「あらそう。教会でスキルやステータスを教えてもらえるの ? 私にはこの世界のことは分からないことばかりのようね」

「はい、今のようにたまたまスキルレベルが上がることもありますし取得することもありますが、教会で神具を使ってスキルを取得したりレベルを上げることもできるそうですよ」

「ふ~ん、そうなの ? 」

なるほど ! と思いながらクラウのステータスのSPのポイントのところをピコピコと触っていたら、風魔法をレベル3からレベル4に上げるのにSPが40必要だと表示された。

「ええええええ~~~~~~~~~~ ??? 人のステータスまで操作できちゃうの~~~~ !? ああっ、女神様が言っていたスキル操作の能力だこれ !」

「女神様が ? なるほど、それは素晴らしいお力でございますね !」

クラウと相談した上で、風魔法をレベル4にして、更にSPを50消費してレベル5にした。
そして、剣術のスキルをSPを70消費してレベル2から4に上げた。これでSPの残りは22。これならかなり戦いの役に立ちそうだわ !

「 ……身体はヘトヘトなのに、聖女様の鍛錬の成果でしょうか ? なんだか力が溢れるような感じがします」

「そうよ、クラウ頑張ったもんね !」

「いいえ、これも全て聖女様のお陰です。本当にありがとうございます。ですが、もっともっと鍛えて下さい、この力で少しでもあなたのお役に立ちたいです」

「任せなさい ! 君を強くて素敵なナイトに育てるのが私の目標ですから。ガンガンいくわよ !」

クラウディー育成計画は双方同意のもとに順調に進められている。

「さあ、ゆっくりしてる暇は無いわよ ! まだ日は高いんだから。回復魔法を掛けたら次は魔物の素材を売りにコンテまで行くわよ~ !」

「なるほど ! 承知しました !」

私たち二人は手を繋いでコンテの町に転移で飛んだ。そして町の外で荷車に魔物をたくさん積んでジョエルズ商店にやって来た。

先日の素材はそろそろいくらかは売れた頃だろうと思ったんだよね。

「こんちわっ !」
「お世話になります !」

「あれっ、また来てくれたのかい ? お嬢ちゃんはアイリちゃんだったね !」

「覚えていてくれたんですね ! 頑張って近くで魔物を倒してきたので少しでも買い取って欲しいんです !」

「うんうん美人のお客さんは忘れないよ ! それに買い取りはこちらも助かるよ !」

こないだと同じように優しそうな夫婦が出迎えてくれた。

積み荷を見て何種類かの魔物を取り出した。レッドベアは大きすぎたので、バラして部分別にしたらいくらか買い取ってくれた。やっぱりジョエルさんの対応はなかなかに良いわ。

前よりも魔物をたくさん倒したから種類も豊富だし、素材も部位ごとに切り分けて交渉したことで割と多めに買い取ってもらえた気がする。
驚くことに全部で26万ギル分(日本円で約26万円)も買い取ってもらえたのだ。

「ええっ ? ギルドやビリーズ商店とは全然違って高額なんですけど…… 」

「ハハハ…… 確かに、他の店の悪い噂は聞くけどね。うちは真面目に商売してるだけで…… それだから信用してわざわざ来てくれるお客さんもいるんだよ」

「そうなんですか ? ありがとうございます ! だったらジョエルさんには少しでもたくさん儲けて欲しいので20万ギルにして下さい。おまけです !」

「え~ ?? 良いのかい ? まけろと言う客はいるけど僕がおまけしてもらう事なんて滅多に無いんだけどなぁ、驚いたよ !」

「良いのよ ! 私たちはたくさん魔物を倒して来るから、その分はまたしっかりと買い取って下さいね !」

「ああ、アイリちゃんの素材は処理も良いし活きが良いからぜひお願いしたいよ !」

ジョエルさんの店は高く買い取り安く売っているようなので小さいお店だけどお客さんは多い感じがする。だけどその分儲けは少ないのだろうか ?

それはそうだよね。お客さんを騙して荒稼ぎしてしまえば客が損をした分だけお店は儲かるんだもんね。だけどその客はもう来ないかも知れない ?

満足して喜んでもらえればまた来てくれるってことかぁ ?
商人は大変だ。う~ん。私には難しいな。だけど私は荒稼ぎボッタクリ商店には騙されないように気を付けよ~ !!

店を出て町を歩く。
「この町は人出が少ないのね」

「はい、元々小さな町ですし、何年か前まではもっと人が多かったのですが…… 」

やっぱり都会に近いネバーフルの町に移って行った人は多いのかしら ? ここは確かに町そのものも小さい気がするし全体的に古くさいしね。

その時ちょうどビリーズ商店の前に差し掛かった。    悪い事にこないだ私を奴隷にしようとしたビリーのおっさんと目が合ってしまった。

「おおーー !! お前はアルテ村の小娘ではないか ! そうかそうか、この前言ってた金がいるから来たんだろ ? こっちへ来なさい。可愛がってやるから心配いらないぞ~~ !」

「はあ ? あんたナニ言ってんのよ、そんなん違うわ !」

脂がのって太ったおっさんは舌舐めずりをしながら私を捕まえようとしている。私を奴隷にして、ナニをする気なの ? ヤバイ奴だわ。ゴブリンみたいに燃やしてやろうかしら ?

「ほらほらほらほら !! カワイイ子だのー、オッホッホッホッ !」

ペロペロ舐めた汚い手を更に伸ばして来た。違うって言ってるのに、信じられないわ ! 腕を掴まれた !! 危ない、捕まっちゃう。ゴブリンの時以来、これはアイリ最大の危機だわ !

「イヤーーーーーー !! 空を焼きつくせ…… 業火~~ !!」

私は突然のイヤらしい発言に驚き、ホントに気持ち悪くって逃げ出したくなった……

あ~~~ ビリーのおっさんに火魔法をブチかましたい……


しおり