第16話 元エルフな勇者の凶変(4)
だって僕はエルの背中から抱きついて、そのまま羽交い締めにしている状態なのに。エルは、そのまま僕を背に乗せたままの状態で四つん這い。そのままジワリジワリと、歩行を続けるのだ。獣のようにね。自身が昨晩まで所持していた大刀剣を持ち、自らの命を絶とう。絶つつもりで向かっているのだ。僕とエルとの初めてできた魂と生命の後を追うためにとね。
でもエルの夫である僕は、それを許さない。許すつもりは全くない。
だからこんな台詞しか僕は、エルに対して吐くことしかできない。
「エル! いい加減にしろ! 何を考えているんだ!」だとね。
でもさ、僕の宇宙人さんは、でなく。エルフな妻は、「何を考えているって、死ぬに……。自らの命を絶とうとしているに決まっているじゃない。可笑しい事を言わないでよ。一樹」と、エルは! 僕の妻は! 未だ新婚ホヤホヤの、というか、未だ甘くて淡い新婚気分すらほとんど味わい堪能をしていない夫の僕を、いとも簡単に捨てる。別れる。永遠に離別をするのだと平然と、というか、怒り。荒々しい口調で告げてくるから。今度はエルではなく僕自身が憤怒! 怒りが頂点! 憤慨し始めるから。いくらエルが元勇者であろうが、女性であろうが構わない。僕自身も地元、この辺りの地域では、腕力では有名な不良、ヤンキーと言う奴だったから腕っぷしには自信がある。あるからね。僕はエルのことを荒々しい行為をおこなってでも止める。止めて束縛! 妻の頭を冷やしてやると心に決めると。
「わりゃ、あああ~。ええかげんにせぇよ~。このバカ女ぁあああ~」と、エルに罵声を吐きながら。金色の長い髪を後ろから強く。強引に引っ張って、僕の顔が見える状態へとしたのだ。