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ある日のバレンタイン日記 番外編

ある日、泉のそばでサーヤとのんびり日向ぼっこしてると

「おいちゃんおいちゃん」
『どうした?サーヤ?』
「こりぇ、ちょこにてりゅにぇ」じゅるり
サーヤが泉のそばで拾った石を見せてきた。黒くて、つやつやしたコロンとした石。

『サーヤ、たしかに似てるが、食べられないぞ』
「あい…ちょこ」じゅるり
『サーヤ、指くわえて恨めしそうに見るのやめろ…』
「あい〜」へちょ
分かりやすく落ち込んだな。と、思った矢先

「おいちゃん、だいすち。どーじょ」
サーヤが何を思ったのか、その石を両手で大事そうに差し出してきた。
『あ、おう?ありがとな?でも、なんだ突然?』
慌てて辺りをキョロキョロ確かめる。サーヤ大好きジーニ様にここだけ見られたら何を勘違いされるか分からない。
「みんにゃ、だいすち、ちょこ、どーじょにょひ、あっちゃにぇ?」
『みんな大好き、チョコどうぞの日?』
なんだ?
「あい。おばあちゃんちょ、ちゅくっちぇ、おりぼんちゅけちぇ、おいちいにぇ」
『おばあちゃんと作って、りぼんつけて、おいしいね?』
サーヤがおばあちゃんと作って、リボン付けて…はラッピングか?それでおいしい?ん〜?
『あっ、バレンタインか!』
「あい。ちょこ…」じゅるり
そうだったな。バレンタインにはキヨさんとサーヤが作ってくれたチョコもらったな。ラッピングのリボンはサーヤが何度も結び直したらしくてちょっとシワシワで、ラッピング解くと、綺麗な見本みたいなチョコと、ちょっといびつだけど頑張って作ってくれたのが分かる可愛いチョコが入ってたな。『もったいないなくて食えないな』って言うと、頑張ったから食べてっ!て怒るくせに、食べると、あ~って泣きそうな顔してたな。

つんつん
『ん?悪い悪い、それで、どうした?』
服を引っ張られてサーヤが呼んでたことに気がついた。物思いにふけりすぎたな。
「さーにゃ、みんにゃに、あいがちょ、だいすち、ちたい。けぢょ、ちょこ、にゃい」うりゅ~う
『え?サーヤ?』
急に泣きそうになるサーヤを慌てて抱き上げて話を聞くと
「さーにゃ、みんにゃに、きにょみちょか、いしちゃん、もりゃっちゃ。けぢょ、さーにゃ、にゃにもにゃい」うりゅう~
『サーヤ、そうか…』
サーヤはみんなに色々してもらってるのに、自分は何も返せてないと思ってるんだな。サーヤが楽しくニコニコしてるだけでみんなは嬉しいんだけどな。
『サーヤ、バレンタインはな、本来チョコをあげる日じゃないんだぞ』
「うにゅ?」
『だからな、サーヤが今できることでみんなに大好き伝えればいいんだぞ』
サーヤにそう教えると、
「ちょこ、ちやう?」
『そうだぞ。チョコはカカオないと出来ないしな。チョコ以外で甘いものとか、そうだな、お花でもいいんだぞ。どうしてもチョコ作りたいなら、また今度な。必要なもの揃ってから作ろう』
「あい!ちょこ、まちゃこんぢょ!みんにゃ、なにすちかな~?」
サーヤにそう言うと、サーヤに笑顔が戻った。
『そうだな、ベリーとか、ナッツとかならみんな食べられるか?柑橘類もあったな』
「あい。でみょ、しょりぇじゃ…」
『それじゃいつもと変わらないか?』
「あい」
『それじゃ、そのいつものやつをちょっと違うのにしよう』
「ふお?」
お?顔つきが変わったな?
『ふふん。俺を誰だと思ってる?ただの木の実だって甘い菓子に変えるくらい簡単だぞ?もちろん、サーヤも手伝うよな?』
「ふおお!あい!がんばりゅ!」
ふっ。顔がキラキラになったな。
「くぅちょふぅでちょ~?ももちょすいでちょ~?はくちょ~あちょあちょ~」
サーヤが誰にあげるか指を使って数え始めると
「おいちゃん、ちゃいへん、ゆび、もうにゃい、くっく、にゅがにゃきゃ」
サーヤが両手の指使いつかして両手がグーになっている。足りないから足の指を使いたいらしいが、グーになった指じゃ数えられないだろ。
『ワハハハ!大丈夫だ。俺が数えてやる!大体、人数数えたところで役に立たないと思うぞ?何しろ食いしん坊だらけだからな』
「ふお?ちゃいへん、ちゃくしゃん、ちゅくりゃにゃきゃ」
サーヤの顔全体がガーンと言ってるな。
『ワハハ!そうだな!数え切れないくらい沢山だな!さ、働くぞ!』
「お、おー!」
それから俺とサーヤは森に入って美味そうな木の実やフルーツを取りまくり、蜂の女王さんに頼んで蜂蜜を分けてもらい、

「おいちゃん、あみゃ~いにょ、いいにゃ♪」
サーヤに天界で作っておいた割烹着セットを着せてキッチンに。俺たちが何かしようとしてることに気づいた兎と豹の獣人の子たちが手伝うと言って来た。もちろん、この子達にもプレゼントしたいサーヤが
「おにいちゃ、おねーちゃ、にゃいちょにゃにょ」
と、何とか秘密にしようとするが
『サーヤ、このお姉ちゃんたちは優しいから、きっと、ジーニ様たちにあったらお話しちゃうぞ?ジーニ様たちは強いからな』
「ふお?」
それは大変どうしたら?と言う顔だな
『だからな、この際、お姉ちゃん達に手伝ってもらおう。そしたら、たくさん作れるし、種類ももうひとつくらい増やせるかもしれないぞ?』ニヤッ
そう教えるとサーヤは俺と、胸の前で手を組んで縋るように見ている二人を代わる代わる見て
「わかっちゃ~。おにいちゃ、おねえちゃ、よりょちくおにぇがいちましゅ」
お願いして、手伝ってもらうことにしたようだ。
『は、はい!こちらこそ』
『お願いします!』
そうして、まだまだカチカチに硬いお手伝い二人と、わいわいと作り、完成したのは

「あみゃ~い♪しゅっぱい♪」
『すごいです!見た目も可愛いです!』
『はい!あんなに少ない材料でこんな物が作れるなんて!』
『うん。まあ、これだけ作れたら上出来かな?』
テーブルに並んだものは、蜂の女王さんからもらったハチミツで作った、ナッツのカラメリゼ、それから姫林檎みたいなのを見つけたから、串にさして作ったりんご飴、それからサーヤが「こりぇみょ~」と、言って聞かなかった、ベリーやみかんもどきもフルーツ飴に。余ったフルーツははちみつ漬けにしたから、ほかの機会に使えるな。さて、それじゃ

『そろそろ、みんなの所に持ってくか!せっかくサーヤが《《みんなに内緒で》》頑張ったんだからな』
わざとドアの外に聞こえるように大きめな声で言うと、外でバタバタと足音が。
『『ぷふっ』』
「うにゅ?おにいちゃ?おねえちゃ?」
吹き出した二人にサーヤが不思議そうな顔をする。ちょっとお鈍なサーヤはともかく、獣人の二人は耳がいいから気づいていたんだろう

〖あ〜ん、中入りたい~〗
『いい匂いねぇ』
『ダメですよ。サーヤは内緒にしてるつもりなんですから』

『お父さ~ん、甘い匂い~』
ぴゅいきゅい『『いいにおい~』』
『『食べたい~』』
『『『みるだけでも~』』』
『ダメだぞ、ハク。サーヤが頑張ってるんだ』
『モモ、スイ、みんなも今は我慢だ』
『そうよ。みんな我慢よ』
『あと少しの辛抱だぞ』

『『『『もう倒れそう~』』』』
『『『じぃじ、亀じぃ~』』』
『『『少しだけ~』』』
『ダメじゃぞ』
『我慢するんだのぉ』
ぷるるんっ

きゅるる(こどもたちもだめ。がまんする)
きゅるるん((((おかあさん~))))
きゅるるん(((ほどいて〜)))

匂いにつられたのか、きっとドアに耳をつけて仲を探っていたであろうみんなが、慌てて走り去って行った。

『さあ、それじゃ、行くか!』
「あい!よりょこんじぇ、くりぇりゅかにゃ?」
『絶対大丈夫です!』
『絶対喜んでもらえますよ!』
『ああ。頑張ったからな!自信もって渡して大丈夫だ』
「えへ~♪」
嬉しそうにするサーヤ。割烹着と三角巾をつけたまま、出来上がったお菓子とお茶を持ってみんなの待つリビングへ。そこには
白々しく席について気付かないフリをしている面々。思いっきりソワソワしてるな。ククッ

「みんにゃ、あいがちょ、だいすち!おかち、どおじょ!」にっこー!
輝かんばかりのとびきりの笑顔でサーヤが言うと、
〖はうっ〗っと、ジーニ様が心臓を撃ち抜かれ倒れた。その隙に

『私たちのために作ってくれたのぉ?』
「あい!おいちいよ!」
『ありがとう~サーヤぁ』
「あい!」にこにこ
ふわりとやってきた精霊樹の精様に抱き上げられて抱きしめられるサーヤ。
〖ああん、サーヤ~〗
気絶から復活したジーニ様が悔しそうにしている。
『サーヤ、ありがとう』
『こっちで一緒に食べよう』
ぴゅいきゅい『『こっちこっち~』』
『サーヤはやくおいでよ~』
『『おいしそう~』』
『『『これなあに~?』』』
「あい!あにょにぇ~」
みんなに呼ばれて嬉しそうにするサーヤ。バレンタインは成功したみたいだな。
良かったな。サーヤ。チョコはその内、必ずな。

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お読みいただきありがとうございます。バレンタイン、おいちゃん目線にしてみました。
皆様も良いバレンタインを♪

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