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コンビニおもてなし 5号店の2 その3

 店舗検討部門のブリリアンのゴーサインを受けた僕は、早速ルア工房ナカンコンベ店を訪ねました。
 当然、マクローコも一緒です。

 このルア工房ナカンコンベ店ですが……
 以前はポルテントチーネが経営していたいかがわしい食堂があった場所です。
 ポルテントチーネの悪事がバレてナカンコンベから逃げ出した後に空き店舗となったところを、ルアが買い取ってルア工房の支店にしたんですよね。
 相手がポルテントチーネだったもんですから、その後も何度か騒動がありましたけど、今はルアの工房の支店として繁盛している次第です。

「ふむふむ、マクローコの美容室を2階建てにして、コンビニおもてなしと美容室を併設したいのね」
「あ、あと、美容室コーナーの半分はクキミ化粧品の作業場にしたい、みたいな?」
 ルアとマクローコはそんな会話を交わしています。
 マクローコの提案を受けたルアは、その場ですぐに図面をおこしています。
 で、その図面を見ながら、
「じゃあ、ここから水を出す?」
「あと、こっちからもお願いしたい、みたいな?」
「あ、一階のここにもお願いしたいな」
 僕も加わって、そんな感じで打ち合わせを進めていきました。

 話し合いは、1時間ほどで終了しました。

「うん、だいたいわかった。じゃあ、すぐに正式な図面を書くからさ、それから最終打ち合わせしよう」
 ルアは、メモを確認しながらそう言いました。
 そんなルアに、僕とマクローコも、
「うん、よろしくお願いするよ」
「ルアっち、よろしく!みたいな」
 そう言いながら頭を下げた次第です。

◇◇

 そんなわけで、お店の改築に関しては目処が立ちそうです。

 となりますと……今度はコンビニおもてなしの開店準備をしないといけません。
 
 棚やレジ、それに商品などはすぐに準備出来ますけれども……そんな物よりもまず準備しないといけないのは店員です。
 店員を確保出来ないことには、いくらお店が出来ても営業出来ませんからね。

 反面教師になっているのが、神界にありますコンビニおもてなし出張所神界店でしょう。
 ここは、神界でヤルメキススイーツのお店を経営している神界の住人のマルンが、その店舗の二階に開店させようとしているお店なんですけど、いまだに店員候補が見つかっていないために開店出来ない状態なんですよね。

 ……以前、僕が無理矢理連れ込まれまして1日だけ営業を手伝ったことがあったんですけど、あの時は神界以外の住人を無許可で神界に連れ込んだってことで、危うく捕まりそうになったんですよね……

 そんなことにならないように、早速店員募集を行わないと……僕はそう思っていたのですが、
「あ、店長ちゃん、そのことなら是非是非お願いしたいことがある、みたいな?」
 そんな僕に、マクローコがそう切り出してきました。

 マクローコの話によりますと、なんでもコンビニおもてなしの店員として雇ってほしい人達がいるんだとか。
「じゃあ、一度会わせてもらえるかな?」
「おっけー! まかせて! みたいな」
 僕の言葉に、いつもの舌出しW横ピースで答えるマクローコ。

 そんなわけで、翌日のコンビニおもてなしの営業終了後に、その人達をコンビニおもてなし本店まで連れてきてもらうことにしました。

 で、翌日になりました。

「店長ちゃん、来た!みたいな!」
 閉店作業を行っていたコンビニおもてなし本店の中に、転移ドアをくぐったマクローコがやってきました。
 その後方には、マクローコが連れて来た面々が続いています。

 で……その面々を見つめながら、僕は思わず苦笑してしまいました。

 いえね……マクローコが連れてくる人達なので、予想はしていたのですが……その予想どおりといいますか、マクローコに続いてやってきたのは、

 ガングロ・ピアス・アクセサリーをじゃらじゃらつけて、露出過剰気味な……僕の世界で言うところのギャル全開……それも、一昔前のギャルとでもいいますか……

「クキミ化粧品の製造をバイトで手伝ってくれてるみんな、みたいな! ついでにコンビニおもてなしでも働きたいそうなの」
 そう言うと、マクローコは深々と頭を下げました。
 すると、それに続いてマクローコの後に続いてやってきた4人も一斉に、
「「「ちょりーっす」」」 
 そう言いながら頭を上げた次第です、はい。

 みたところ、みんなダークエルフのようですが……マクローコやクローコの友人のエルフ達って、ガンガンに日焼けしている人もいますので、なんとも判断しにくいんですよね……

 で、そんなみんなを見回した僕は、
「じゃあ、早速明日から研修に入ってもらいたいんだけど、いいかな?」
 そう、エルフ達に言いました。
 すると、エルフ達は
「マジ!? もういいの?」
「やっべ、マジやばいわ」
「うん、やるやる!ちょーやるから」
 口々にそんな言葉を発しながら、僕の周囲に集まって来た次第です。

 一見すると、チャラチャラしているエルフ達ですけど……僕的には結構期待していました。
 
 いえね、クローコにしてもマクローコにしてもですが……客商売をする店員としての第一印象ははっきりいって最悪でした。

 およそ店員にふさわしくない言動・衣装・化粧とまぁ、相当問題ありに思えたもんです。

 ですが……いざ、働いてもらってみるとですね、クローコは何をするにしても一生懸命で、手を抜きません。
 確かに、いつまで経っても直らない言葉遣いなどの問題もありましたけど、それでも多少は改善された気がしますしね。
 衣装も、じゃらじゃらつけていたアクセサリーも、
「お店に出てる時は控えてくれるかな?」
 そうお願いすると
「わかった、みたいな!」
 そう言って、すぐに改めてくれましたしね。
 お化粧も、ゴージャスサポートメンバーのキョルンさんとミュカンさんと一緒にクキミ化粧品を製造しているうちにナチュラルメイクを覚えて、かなり改善されましたしね。
 何より、仕事はいつも手を抜かずに頑張ってくれていました。
 
 そんな2人を見ているからこその期待というわけです。

◇◇

 翌日早朝……
「で? 店長様、私はこの者達に新人研修をすればよろしいのですね?」
 いつもの調理作業を終えた僕と魔王ビナスさんの前に、昨日のエルフ4人組が立っています。
 そんな4人を見つめながら、魔王ビナスさんは笑顔を浮かべています。

 そんな魔王ビナスさんの前に立っているエルフ4人組なのですが……

 全員、眠たそうな表情をその顔に浮かべつつ、一様にだらーっとしています。
 しかも、全員から酒臭い匂いが漂っています。

 事情を聞いてみますと、
「なんかぁ……働けることになったんでさ、前祝いした、みたいな?」
「朝まで飲んでたしぃ」
「スアビール、まじやばいっすよ」
「タクラ酒もマジネ申」
 時折あくびをしながら、そう説明してくれたエルフ4人組。

 そうですね……普通なら一言申し上げないといけないところですが……なぜか僕は若干躊躇していたといいますか……
「店長さん、タクラ酒を良く言われたからといって、遠慮は禁物ですわよ」
「あ、はい……すいません」
 心の中を見透かされてしまった僕は、苦笑するのが精一杯です。

 で

 そんな僕の横でニコニコ笑っておられる魔王ビナスさんは、エルフ4人組を見回していきました。
「ふふ……鍛え甲斐がありそうですわね」
 そう口にした魔王ビナスさんなのですが……そう言いながら魔王ビナスさんが、あり得ない音響を響かせながら両手をゴキゴキならしていたのを、僕は聞き逃しませんでした……

 エルフ4人組……生き残ることが出来るのでしょうか……

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