②
「でもなんで、朗読なんかすることになったの?」
話がひと段落したとき、何気ない調子でミアが言ったこと。きっかけなんて、なにも隠す必要ないことであったのだけど、そのとき起こったことゆえにライラは一瞬、言い淀んでしまった。ミアが、きょとりとする。
「あ、えっと、リゲルが『やってみないか』って誘ってくれたの」
「……うん?」
ミアは不思議そうに言った。リゲルがライラの幼馴染であることは知っている。
そして一応、言ったことはある。リゲルに片想いをしているのだと。
言った、というか、恋愛話をしている間に言わされたのだけど。だいぶ前のことだ。だから、想いを寄せているリゲルに誘われて嬉しいと思ったことは、わかってくれるはずで。
でも、その『恋心』が今、ライラが言い淀んだ様子とどのように繋がるとは、ミアにはわかっていないであろうだけで。
「良かったじゃない?」
シャウラも『よくわからない』という様子で、やはり不思議そうに言った。
「う、うん! いい機会だったの。さっき言ったみたいに」
朗読についてはさっき話した通りだったので、そこへ持っていくつもりだった。けれど、二人の視線はそれを許してくれなくて。ライラは内心、う、と詰まってしまう。
「あ、あのね! お礼ももらえたのよ。今度紅茶でも飲みに行こうよ」
思わず誤魔化すようなことを言ってしまったのだけど、ライラの様子が明らかにおかしかったからだろう。
「お茶飲みに行くのはいいけど。で、なに? なんか様子がおかしいなぁ。なんかあったんでしょう」
絵本談義を聞いていたときとは打って変わった様子で、ミアがらんらんと目を輝かせてライラに、ぐいっと身を寄せてきた。言わされようとしていることを胸の中に思い浮かべてしまって、どくんと心臓が跳ねて、顔が熱くなる。
朗読会であったこと。話すのは大変恥ずかしい。
「えっとね、なんかね……」
でも、ほんとうは言いたいのだ。聞いてほしいのだ。
好きなひとの話を。
それに関して良いことがあったということを。