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 いつも玄関で話すときのように、靴を履くときに使う椅子にリゲルは腰かけていた。「これなんだけど……」と、リゲルにネックレスを差し出す。
 リゲルはそれをつまみ、目の前にかざしてしげしげと見て、そうしてから手のひらに乗せた。チェーンの切れ目を確かめているようだ。
 一体どうなるのかと、ライラはその前にしゃがんでどきどきしていたのだけど、リゲルはすぐに、にかっと笑った。
「なんだ。金具が壊れただけだ。直せるぞ」
「ほんとうに?」
 声は弾んでしまった。リゲルはライラのその喜びを後押ししてくれる。
「ああ。家に帰れば道具で、ちょちょっと」
 確かにリゲルの家にはそういう、工具といえるものも豊富にある。大概が彼の仕事や趣味に使うものだそうだが。
「直してくれるの?」
「ライラの頼みとあらばな」
 そんなことを言われて、きゅっと胸が締め付けられた。うれしい、とシンプルな感情が胸を満たす。
 とてもあたたかい。そう言ってくれたことが、手間をかけてくれることが、なにより自分を特別だと言わんばかりの口調で言ってくれたことが。
「ありがとう!」
 ライラの顔が盛大に輝いたからだろう。リゲルもほっとしたような笑みを浮かべる。
「ん、しょぼくれた顔よりずっといい。ちゃんと直るから安心しろ」
 言われてちょっと恥ずかしくなった。情けない表情を晒してしまったことに。
「じゃ、これは預かってくからな。今度持ってきてやる」
 ごそごそとポケットを探って、リゲルはハンカチを取り出した。黒系のチェック柄の、なんの装飾もついていない男の人らしいものだ。それにネックレスをそっと包んでくれる。
 彼のそういう丁寧さが好きだと思う。単に、ネックレスが繊細だからそうしないと更に崩れてしまうものだからだとしても。まるで自分のことを大切にしてくれるみたい、などと思ってしまって、ライラはちょっと恥ずかしくなった。

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