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スキー

「うーん…どの馬にしようかな」
「私はもう決めたよ!アロルも早く決めちゃいなよ」

 俺達は今、競馬場にいる。競馬なんてやった事がない素人だが、なんでも経験を積む事が大事だと思い、チャレンジしてみたのだ。しかし、やはり勝つには入念な計算が必要らしく、なかなか勝てない。全てのレースで負けているというわけではないが、大損している。まぁ金には困ってないから、金銭的な面では問題はないのだが。

「決めた!3番の馬に賭けよう」
「私は4番!」

 俺達はチケットを買った。レースはすぐに始まり、馬達が走り始めた。
 今度こそくる!勝利の女神からこの馬券を買えと伝令をうけた気がした。こんな感覚初めてだ。俺は神とつながっているに違いない。俺は瞳を閉じて、両手を合わせた。

「おーっとここで猛烈なラストスパートだー!速い、速い!ゴーーール!1着は4番のウスベスキーです!」

 なんだとー!?神の嘘つきー!もう何もかもが信じられねー!

「やったー、私の願いが通じたみたい!」

 サラは大喜びしている。
 くそっ、神の野郎、サラに味方しやがったな!裏切者めー!

「なんだよー、絶対3番がくると思ったのになー」

 と、近くで1人の男が嘆いていた。俺と同じ馬に賭けてる人がいたみたいだな。どんな顔した人なんだろ?俺は近寄り、顔を見るとなんとスクルだった。

「なぁ、スクルじゃないか?」

 スクルは俺の顔を見て驚いた。

「アロルじゃないか!サラも一緒かい?」
「ああ、そこにいるよ」

 スクルはサラに近づいた。

「やぁサラ、こんな所で会うとは奇遇だね!なんだか運命を感じちゃうな」

 スクルは満面の笑みを浮かべた。
 スクルはまだサラの事狙ってるのかな?サラはスクルの事をなんとも思ってないってそっと伝えてあげた方が親切かな?

「あら、久しぶりね。スクルは競馬好きなの?」

 サラはニッコリと笑いながら質問した。

「今日で2回目ぐらいかな!サラはどうなんだい?」

 ホントに2回目か?実はどっぷりギャンブルにはまってるんじゃないのか?

「私は今日が初めて!同じ初心者だね、んふふ」
「どころで俺とっても面白い所見つけたんだけど、この近くだから行ってみない?」
「どんな所なの?」
「それは行ってからのお・た・の・し・み」
「んー、気になるから行ってみようかな!いいよね?アロル」
「ああ、いいよ」
「よし、決まり!じゃあまた君達をしばらく飛べるようにしてあげるね」

 スクルは俺達に魔法をかけた。まさかまた自分の力で飛べるようになる日がくるとは思わなかった。たしか頭の中でこういうふうにイメージして飛ぶんだよな…おっ、体が宙に浮いた。よし、感覚を思い出したぞ!
 俺達はスクルの後について飛び始めた。グングンスピードを上げていく。前飛んだ時よりだいぶ速く飛べるようになった。しばらく飛んでいると、なんと雪山が見えてきた。

「ほら、あそこだよ」

 スクルは雪山を指さした。

「雪山に連れてきたかったのね。素敵。でもなんであの山だけ雪がつもっているんだろう?」

 サラは疑問を投げかけた。

「魔法の力だよ。あの山はスキーもできるんだよ」
「え?そうなの?やりたーい」

 そう言うとサラはさらにスピードを上げた。
 俺達は雪山に降り立ち、さっそくスキー板を借りにいった。スキーなんて何年ぶりだろう?今でもうまく滑れるかな?別にサラにいいところを見せたいわけじゃないがスクルよりはうまく滑りたいな。

「スキー板かして下さい」
「はい、1人2000ギンドになります」

 俺達はスキー板を借りて、滑り始めた。最初は初心者コースでノロノロと滑っていた。俺は器用にバランスをとりながら、なんとか転ばないように滑っている。このコースなら楽勝だな!上級者コースに行ってみるか!俺は上級者コースを見た。すると、急斜面を颯爽と滑りおりてくる姿があった。スクルだ。スクルってこんなにスキーうまかったのか。俺負けてるかも…
 俺は上級者コースを滑り始めた。ゆっくりだったらなんとか滑る事ができた。しかし、少しスピードを上げるとすぐに転んでしまう。上級者コースってこんなに難しかったのか…よくあんなにうまく滑れたな、スクルの奴。スクルに少し嫉妬しながら、修行を積んだ。何時間か練習していたら、かなりうまく滑れるようになった。よし、この調子で次はジャンプ台に挑戦だ!
 俺は天才だからこれくらいのジャンプだったらわけはないはずだ…自分の力を信じよう…
 俺は滑り始めた!あと少しでジャンプだ!いいぞ、いいぞ、俺は鳥になるんだ…それ行け!と思った瞬間、バランスを崩してジャンプ台から落ちてしまった。

 なんでこーなるの…

「あははは、相変わらず派手な転びかただね、アロル」

 サラにけなされてしまった。
 俺はジャンプは諦めて、上級者コースで腕を磨いた。だいぶうまくなってきたし、そろそろもう1段階レベルを上げてみるか!俺は後ろ滑りをしてみる事にした。慎重に慎重に滑るつもりだったが、けっこうスピードが出てしまった。マズイ、止まらなければ!と、思った時には時すでに遅し。おもいっきり人とぶつかってしまった。

「いってぇな!なにすんだ、てめぇ!」

 ガラの悪い男性だった。

「ごめん、ごめん」

 今のは完全に俺が悪いので、ゴチャゴチャ言われる前に軽く謝って、すぐに逃げ出した。この後も何時間もスキーを続けた。俺達はじっくりスキーを堪能したので、帰る事にした。スクルだけはまだ滑っているようだが、まぁ放っておこう。あっ、でもスクルにまた魔法かけてもらわないと飛べないんだった。俺達はスクルを待った。サラと談笑しながら待っていると、さっき俺がぶつかってしまった人が俺を睨みつけながら歩いてきた。

「さっきの借りはきっちり返させてもらうぜ」

 男はいきなり回し蹴りをかましてきた。俺は攻撃をよけて、反撃しようとしたが、俺が一方的に悪いのでやめておいた。男は右ストレートを放った。しかし、俺には当たらない。男は今度は足刀を繰り出した。これもまたうまくかわした。攻撃するか迷ったが、結局やめてしまった。男の打撃は止まらない。次から次へと技を打ち込んでくる。ひたすらかわし続け、お互い疲れてきた頃…

「ちょこまか逃げやがって…これで終わりにしてやるぜ!ふんっ!」

 いきなり体が重くなった。俺は自分の体重を支えきれず、地面にうつぶせになってしまった。どうやら魔法をかけられてしまったようだ。サラも同じ態勢になっている。

「きひひひ、これで動けないだろ?おらっ!」

 俺は脇腹を蹴られた。

「ぐはっ」

 男は何度も何度も俺の体を蹴った。
 いてぇ…くそっ、こんな事になるなら俺も攻撃しておけばよかった。俺ここでコイツに殺されるのかな…
 俺が絶望し始めた時…

「スピライアー!」

 スクルが風魔法を使い、渦巻く風が男を吹き飛ばした。男は気絶して、魔法が解けた。

「大丈夫か!?サラ、アロル」
「私は大丈夫。でもアロルが…」
「お…おれも大丈夫だ。な…なんとか生きてるよ」
「間に合ってよかったよ」

 スクルはホッとした表情で言った。

「ありがとう、スクル」

 サラは頭を下げた。

「また君達が飛べるように魔法をかけておいたから、いつでも行けるよ!それじゃあ俺はこれで失礼するよ」
「またね」
「おっと、言い忘れてた。サラ、大好きだよ!じゃあね」

 スクルはそう言うと飛び立っていった。
 この2人うまくいくといいな。と、少し思った。 

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