やってやるぜ、大武闘大会! その5
午後から団体戦の決勝トーナメントが開始されました。
コンビニおもてなしから参加しているイエロ・セーテン・グリアーナチームは、その第一試合に登場しました。
相手は、青いビキニ・アーマーを身につけている女の子をリーダーに、弓を構えているダークエルフの女性と、司祭っぽい服装の小柄な女の子のチームです。
「さぁ、いくわよ!」
「ミサキコ、先行し過ぎないで!」
「はわわ、私はこっちを守りますねぇ」
ビキニ・アーマーの女の子が一気に飛び出したのを、イエロが剣でなぎ払っていきます。
それを軽々と飛び上がって交わすビキニ・アーマーの女の子。
とにかく身軽ですね、この子ってば。
試合は思った以上に白熱していきました。
正直、3人は見た目も若いし、1人戦力になってるの? 敵な小柄な女の子もいますし、イエロ達が圧勝するんじゃないかと最初は思っていたんですけど……そこは決勝トーナメントまで残ったチームということですね。
その小柄な女性が、何やら
「ふ~んへ~いほ~」
とか言いだしたかと思うと、体中から拳銃みたいなのを突き出しまして、いきなり乱射し始めたんです。
なんでも魔法の弾丸を飛ばしているらしいんですけど、いや、もうその威力ときたら、観客席に被害が及ばないようにと設置されている魔法壁にヒビを入れちゃうくらいすごかったんですよ。
さらに、弓攻撃だけだと思っていたダークエルフの女性が魔法も使えたもんですから、イエロ達は一気に劣勢に立たされていきました。
「イエロお姉ちゃん達がんばれー!」
パラナミオを筆頭に我が家の子供達の声援が飛んでいきます。
その声援のおかげがあったのでしょうか……そこから盛り返したイエロ達は、最後は空中に飛び上がったビキニ・アーマーの女の子を、セーテンが場外に蹴りだして失格にし、動揺した残りの2人を、イエロが場外に吹き飛ばしまして、見事に逆転勝利を飾った次第です。
その様子に、パラナミオ達だけでなく、会場中が大歓声に包まれていきました。
確かに、今の試合はすごかったですからね。
試合後の闘技会場では、6人が互いに握手を交わしていました。
「いやぁ、やられちったね。イエロちゃん達強いなぁ」
「いやいや、貴殿達もなかなかなであったぞ」
ビキニ・アーマーの女の子とイエロは、笑顔を交わしながらガッチリ握手を交わしていきました。
その時、その女の子のビキニ・アーマーの胸当て部分がいきなり落っこちちゃったんですよね。
どうも、セーテンの蹴りで継ぎ目が破損したみたいでして……
その直後、
「きゃーエッチー!」
女の子の悲鳴と、観客席から別な意味の大歓声が響き渡っていった次第です。
僕はといいますと、転移魔法で僕の頭上に登場したスアに上から目を押さえつけられたので見てませんけどね。
◇◇
その後、大会は順調に進んでいきました。
その合間に僕と魔王ビナスさんは、会場内を移動しながら弁当や飲み物を販売していきまして、かなりの売り上げを記録いたしました。
初戦の勝ち方からして、イエロ達ってばこのまま優勝出来ちゃうんじゃ……そう思っていたんですけど……結果から言いますと、イエロ達は次の試合で負けてしまいました。
その相手のチームなのですが、魔法使いの方と鳥人さんと女性のチームでした。
正直、その女性の人は戦力になっていない感じでした。
最初から最後まで自軍の旗にしがみついたままでしたからね。
「マドモワゼル様、やるっぴゃね!」
「えぇ、バンビィ。街の復興のためのお金を稼ぐわよぉ」
問題はこの2人でした。
バンビィという鳥人の女の子が会場内をすごいスピードで飛翔していきます。
その速さは、セーテンを凌駕していました。
そして、マドモワゼルと言われた魔法使いです。
まるでボディビルダーのような体をしているその女性は、
「さぁこの、ワンダーなウーマンの物理魔法をくらいなさぁい!」
そう言いながら、すさまじいパンチを繰り出しまくっていきました。
えぇ……魔法っていいながら、ぶんなぐってるんですよね……っていうか、なんなんですかね、物理魔法って……
その物理魔法のパンチをくらったイエロが、まず場外までふっとばされてしまったんです。
次いで、セーテンがそのパンチの餌食になって場外へ。
最後、一人残りになったグリアーナも多少は粘ったのですが、最後は
「物理魔法ベアハッグよぉ!」
とまぁ、鯖折りされて、マドモワゼルさんの腕の中で気絶して……はい、そこまでだった次第です。
試合後のイエロは
「いやぁ、世界には強い御仁がいるでござるな」
と、むしろ嬉しそうに笑っていた次第です。
「来年こそ優勝するでござるよ」
笑顔でそう言っていたイエロですけど……その後、通路の影に移動していったイエロはそこで肩をふるわせていました。
みんなの前では気丈に振る舞っていましたけど……やっぱり悔しかったんでしょうね。
「……イエロ、よく頑張った。お疲れさん」
僕がそう言ってイエロの肩を叩くと、イエロは僕の胸に顔を寄せて泣きじゃくりはじめました。
「……申し訳ない……今だけ……今だけ胸をお貸しくだされ」
イエロは大粒の涙をボロボロこぼしながら泣き続けました。
背後にスアの気配が出現した気がしたんですけど……スアも事情を察して気をつかってくれたんでしょうね、すぐにその気配は消えていきました。
僕は、泣きじゃくっているイエロの肩を抱き寄せて
「本当によくやったよ、イエロ……」
何度もそう言ってあげました。
◇◇
程なくしてどうにか気持ちを切り替えたイエロは、
「今度は販売のお手伝いをするでござる」
そう言うと、僕の代わりに観客席の中へ弁当類を販売しに行ってくれました。
すると
「お、さっきの鬼の姉ちゃんじゃねぇか!」
「いい試合だったぜ」
と、お客さん達が拍手でイエロを出迎えてくださいまして、皆さんどんどんお弁当を買ってくださいました。
イエロも、笑顔で応対しています。
セーテンとグリアーナも、敗戦の責任を感じてかなり落ち込んでいた様子だったのですが、イエロが頑張っている様子を見ると
「落ち込んでばっかじゃダメっキ」
「えぇ、私達も頑張るでござる」
そう言うと、屋台の手伝いを始めてくれた次第です。
すると、こちらにもお客さんがさらに集まってきてくださいました。
ちなみに、団体戦はイエロ達を破った物理魔法のマドモワゼルさん達がそのまま優勝いたしました。
ゲルターさんから賞金を受け取ったマドモワゼルさんは
「あら、いい男じゃなぁい? どう、この後アタシと19番ホールを楽しまなぁい?」
そう言いながら、ゲルターさんに抱きついていた次第です。
ゲルターさんがすごい勢いで逃げていったのは、まぁ、当然といいますか……ははは。
◇◇
僕達の移動販売は弁当だけでなく、スアビールも飛ぶように売れています。
前回の大会の時もすごく売れたんですけど、その時の味を覚えておられるお客様が多いのでしょう、
「おぉ! スアビールじゃないか!」
「これこれ! この味が忘れられなかったんだよ!」
「おい、こっちにもスアビールをくれ!」
「こっちもだ!」
そんな感じで、スアビールは飛ぶように売れていきました。
パラナミオサイダーも人気でして、子供連れの方がよく買ってくださっています。
子供連れで来場なさっているフラブランカさんも、3回ぐらい購入してくださっていた次第です。
なお、嬉しいことに
「あ、タクラ酒ください、これすごく美味しいですね」
と、あの太った騎士さんが、タクラ酒をたくさん買ってくださったんです。
僕が、ヤルメキスばりの土下座をしながら
「ご購入ありがとうございます!」
って言わせて頂いたのは言うまでもありませんでした。
タンクさん、あなたのお名前は一生忘れません!