第10話 目覚めてみると? (8)
「…………」
じゃない。じゃないよ。
もう~、私は、どうかしている。いるよ。
憎むべき相手である魔王のことを『彼』、『あのひと』、『家のひと』と思わず。親近感を込めて思い。己の口に迄出し、漏らしてしまうような、情けないことを想い。生じて、口走ってしまったのだ。
私は勇者エルなのに……。
もう、バカ、バカ、エルのバカと、自分自身のことを思わず自戒する羽目にまで陥ってしまった。しまったの。
私自身が思いのほか、この手の悪態行為、拷問に弱い者であり。直ぐに堕ちて、魔王の物へとなることに抵抗をみせない。軟な女───。
勇者だとは思いもしなかった。しなかったのだよ。
私は案外、異性に対して弱いタイプ、情の深いタイプのようなのです。
だから私自身どうしよう? どうしようか?
ああ~、どうしたらいいのだろうか~? 我がエルフの神木! 神! 神よ~! と、声を大にして叫びたい衝動に駆られる。駆られるけれど。
グッと、堪えて、耐え忍ぶしかない。ないのだ。敗戦者の私が悪い。悪いのだから……。
と、言って、嘆いても仕方がない。ないから。今後私はどうする? どのようにして生きていく。生きていくかを思案しないといけない。
と、いうよりも?
私の純情と生娘、鮮血を奪った魔王を許さない。許さないから。刺し違えてでも殺してやる。殺してやるのだと己の心の中で決め! 覚悟!
と、なれば?
抜き足、差し足、忍び足と、睡眠、寝ている魔王へと近づく私、勇者エルだったのだ。
◇◇◇◇◇