ハードゥスの創造神
時折勘違いされていることがあるのだが、別にれいは慈愛の神という訳ではない。管理者として必要なら与え、不要なら取り除くだけの存在。
確かにハードゥスが存在するのも、様々なモノが増えていくのもれいのおかげという部分が大きいが、だからといって何でもかんでも与える訳でもないし、助ける訳でもない。そして、れいが決めたことに反するモノはなんであれ取り除く。
とはいえ、れいが決めたことは二つだけ。一つ目がハードゥスの破壊を目論まないこと。二つ目がれいに敵対しないことだ。
二つ目に関してはそこまで気にしていないので、れいも忠告したりしなかったりであまり厳密には考えていない。しかし一つ目に関しては、実際には破壊は不可能だと知っていても、反したモノを絶対に赦しはしなかった。
「………………冗談なら赦すのですがね。とりあえずここは処理しておきますか。死因は心臓発作辺りで片付くようにしておきましょう」
なので、『ハードゥスの破壊を目論まない』というのは、何処の国でも自主的に法律の条文の最初の方に記すぐらいには徹底していた。
そういった活動のおかげで、漂着者になされていた警告の内容をハードゥス出身のモノ達まで理解している。それこそ、様々なモノ達が教えるので、魔物だけではなく植物にまで広く知られているほど。
それほどまでに徹底されていても、好奇心から計画するモノが多少は存在する。禁止されているが故に、という歪んだ考えのモノだって存在するのだから。
そういったモノ達は、本気で計画した段階でれいによって消されている。その死因は突然死が大半だが、同じ症状の死者が一斉に出るその規模の関係から、死者達がれいの逆鱗に触れたのだろうと理解されることも多い。
一夜にして十数人の者達が同じ建物内で同じ死に方をしているだとか、村ほどの規模の草木が一瞬で枯れるだとかが起きれば、誰でもそれが自然に起きたものではないと思うものだろう。中には偶然が重なった自然災害も存在するが、そんなものはごく少数の案件だけ。大抵は調査しても原因不明で終わっていた。
今回もまた、そんな輩が粛清された。ハードゥスを壊すどころか傷付けることさえ困難なのだが、それとこれは別である。
れいはハードゥスの全てを監視している。その中で設定している条件に抵触した情報はれい自らが処理して、他の情報は記憶だけして記録に残すだけ。その中で面白いと感じたものは注視するが、れいは基本的にそれぞれの営みに無関心であった。それこそが、ハードゥスの創造神たるれいという存在なのである。