不思議な光景{済}
ここはエルラスタの街。
あれからラザリオとルナソルは、行商人になりすまし、この街に侵入していた。
そして2人は、街と隣接している鉱山の入口のあたりをうろうろしている。
鉱山の入口付近には、仕事がやすみのためか誰もいない。
ラザリオは鉱山の周辺を見渡している。
「ルナソル。そういえばアクアリュウムは、ここの鉱山でしか採れないんだったな」
「そうね。そのため、かなりの値がついていたと思ったけど。ハッ!まさかアクアリュウムを盗もうなんて、そんな変なこと考えてないわよね?」
ルナソルは、ラザリオがまたとんでもないことをするのではとヒヤヒヤしていた。
「いくらなんでも、俺はそこまで馬鹿ではない!ただ、どういう物か少し気になっただけだ」
「言われてみれば、確かにそうね。私たちは、加工された物しかみたことがない」
ラザリオとルナソルは、外側から鉱山の中を覗いた。鉱山の中は薄暗く、奥の方で微かに青白く光る物がみえる。
「ルナソル。おそらく微かにみえる、あの青白い光がアクアリュウムかもしれんな」
「ええ、そうみたいね。でもあんなに奥の方にあるのに、微かでも光がここまで発しているって?いったいアクアリュウムの原石って、どんな鉱石なのかしら?」
ラザリオとルナソルは、少し話をしたあとガディスをさがすため、鉱山から街の方にむかい歩きだす。
そして2人は、これからのことを話しながら街の入口の近くまできた。
するとラザリオは、こっちに向かってくる者たちがいることに気づき立ちどまる。
「ルナソル待て‼︎ 」
そう言われルナソルは立ち止まり、ラザリオがみている方角へと視線を向ける。
「あっ!あれはガディス。でも何で、手錠なんかしているの?」
「ん?確かに、これはこっけいな光景だ。それもユリナシアの手首にも手錠がはめられている」
ラザリオは、不思議に思い首を傾げた。
「うむ。みる限りユリナシアが、無理矢理ガディスを引っぱって歩いているようだな」
「そうね。それに、他にも誰かいるみたい。1人はドラゴナードの者だとして。あとの2人は、何者なの?」
ルナソルは、涼香たちをみて不思議に思った。
「ルナソル。これは、俺の読みが当たったかもしれんな」
「えっ?それって、どういう事?」
ルナソルは、不思議に思い問いかける。
「うむ。あの男と女は、おそらく異世界からきた者だ。俺が城で会った男も、やはり黒髪で黒い瞳だった」
そう言いながらラザリオは、ルナソルへと視線を向ける。
「じゃ、異世界の者がドラゴナード側にいるってことなの」
ルナソルは少し考えたあと、ユリナシア達をみる。
「そもそも何であのガディスが手錠なんかはめているの?ユリナシアも、同じように手錠をしている。それにガディスの唇が若干、腫れているのはどうして?」
「ああ、そうだな。それを確かめなければな。ん?ユリナシア達が、こっちに向かってきている。ルナソル、奴らを尾行しようと思うが」
「そうね。その方がいいと思うわ」
ラザリオとルナソルは、ユリナシア達に気づかれないように帽子を深々とかぶる。
そして2人は、間隔をあけ隠れながら、ユリナシア達のあとを追った。
一方ユリナシア達は、鉱山の入口の前までくると立ちどまり中を隅々までみまわす。
そしてユリナシアとクルテルは、身振り手振りをまじえ鉱山について説明しはじめた。