第127話 聖国への帰省
「フェイウェル・グリフィン侯爵閣下、聖国聖教会1級司教クリス・フィッツジェラルド・シェリーと申します。此度は拝謁いただき感謝の言葉もございません」
僕の前に跪いて挨拶をしているのは聖国使節団の代表。僕はその大げさな挨拶に苦笑するしかなかった。
「クリスさんですか。とりあえず立ってください。跪いていただくほどのことは無いですよ」
そんな僕の言葉にクリスさんは頷かなかった。
「とんでもございません。侯爵閣下にはとんでもない冤罪を擦り付け10年以上ものあいだ謝罪さえしておりません。そのような国の使者である私が閣下の前に立つなどととんでもないことでございます」
「ふう、あなたの言っているのはフェイウェル・ハウンドの事でしょう。僕はフェイウェル・グリフィンです」
「え、しかし」
「あなたは帝国侯爵の言を否定するのですか」
とんでもないこじつけだというのは僕自身分かっている。なにしろ本人なのだから。
「わ、かりました」
「では、立っていただけますね」
渋々という感じでひざを床から離すクリスさん。
「では、改めて、帝国侯爵フェイウェル・グリフィンだ。クリス・フィッツジェラルド・シェリー司教を歓迎する」
「つまり、聖国としては、僕を聖国に招待したいということですか」
「はい、そうして是非関係修復の場をというのが、大司教チェイニー・モルダー・ミラー猊下のご意思です」
僕は、横にいるミーアと視線を交わした。そしてミーアがふっと表情を緩めるのを見て。
「良いでしょう。準備が出来次第伺いますと伝えてください」
「ありがとうございます」
再度頭を下げるクリスさん。
クリスさんが屋敷を辞したところでミーアと一緒にギディオンに聖国訪問の準備を頼んだ。
「聖国に行ったら、村の様子も見に行きたいな」
「そうね、あとギルドマスターのゲーリックさんにも挨拶にいかないとじゃない」
「他にも聖騎士団団長のフェリーペさんにも挨拶しないとね」
「アーセルにも遊びに行くって連絡しておかないと」
クリスさんの訪問から20日、準備を整え僕たちは聖国に向けて出発した。
何しろ最低限の人員しか手元に置いていない僕達なので、屋敷を守る最低限を除いて騎士団から料理人まで全員が同行する。子供たちにも僕やミーアの故郷を見せてあげられるだろう。特に用事の無い今回は大司教と謁見した後、のんびりと思い出の場所を回るつもりだ。