クルテルとユリナシア{済}
ここはユリナシアの書斎。
ユリナシアは机に寄りかかり本を読んでいた。
(最近、面白いことがなくてつまらないですわ。なにか楽しいことはないのかしら)
ユリナシアは本を閉じ立ちあがると窓の外をながめる。
すると、扉をたたく音がしユリナシアは振り向いた。
そして扉が開きクルテルが部屋の中に入ってきた。
クルテルはユリナシアの側までくると一礼し挨拶をする。
「ユリナシア様。遅くなり申し訳ありません」
「クルテル。本当に遅かったわね。まぁそれはいいとして……。それで、バルロス様には会えたのですか?」
「はい。会うことはできましたが……」
クルテルはユリナシアにバルロスと涼香のことやガディスのことなどを話した。
「そうなのですね。バルロス様とその涼香という異世界の者とが同化し、その涼香という者の身体の一部が龍化した、と。プププ……」
それを聞きユリナシアは、笑いを堪えようとするが耐えきれず腹をかかえ笑いだした。
「ちょ、ちょっと待って……。ププ……キャハハハハハ……。あのバルロス様が、人間と同化。それも女と。プッ。ちょ、クルテル。笑えるのですけど」
ユリナシアは腹をかかえ笑いながら、クルテルの頭を数回たたいた。
「ユ、ユリナシア様。これ以上たたかれると、私の頭が馬鹿になります。き、気持ちは分からないわけではないのですが」
クルテルはその時のことを思いだしている。
「現に私もその現場をみてしまい。笑い転げ……。しばらく、その場を動けずにいましたので。ククク。あーいえ、失礼しました。つい思いだしてしまい」
「そうなのですね。ププ……。あっ、まぁそれは置いとくとして」
ユリナシアは気持ちを落ちつかせると再び話しはじめる。
「その、ルトルシニア国の四天王、魔氷剣のガディスが。ブレグランの者たちからクルテル達を助けたと言いましたわね。そういえば確か……」
(魔氷剣のガディスといえば。確か噂では、あまり感情を表にださず、敵に回せば厄介な男だと聞いていましたけど。
そして、女性の間では……。そのクールな眼差しがたまらないとも。あーこれはまぁいいとして。……)
ユリナシアは慌てて頭の中で考えたことをかき消し、新たに考えだした。
(そうですわね。確かクルテルの話では……。ガディスは、バルロス様と同化した涼香という者のことをルトルシニアに引き入れたい。
そのためにあとをつけていたが、そこにブレグランの者たちが現れクルテル達を襲った。それをみかねたガディスはクルテル達を助けた。
そして、その後ガディスになぜあとをつけたかを問い詰め吐かせた。だけど言っていることが信用できず条件をだした。
なるほどね。その条件も面白そうだし。あのガディスをどう扱おうが、好きにできるとはねぇ。
それに、一度は会ってみたいとは思っておりましたし。これは楽しみですわ。……)
「ユリナシア様。急にどうされましたか?顔がにやけてますが。そのお顔はなにか企んでおられますね」
「ハッ!あーこれは……。ただ色々と考えていただけで、企んでいたわけではないですわ」
ユリナシアはクルテルに言われ焦りをみせた。
「それではよろしいですね。街の中に入れても」
「そうですね。入れても問題ないでしょう。そうなると私も、バルロス様たちのことをお迎えにあがった方がいいですわね」
「その方がよろしいかと……」
(ユリナシア様が、バルロス様たちをお迎えにあがるってことは……。これは、ただですむかどうか。まぁただじゃすまないでしょうね。どうなるのやら……)
「それでは行きますわよ」
クルテルが頷くとユリナシアは準備をはじめる。
そして準備がおわるとクルテルとユリナシアは、屋敷をでて街の門の方へと向かった。