禁術とお父様
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人の話し声がする。
真っ暗だけど、グラスをおく音、椅子を置く音いろんな音が鮮明に聞こえた。
これは、夢?それとも······。
「ラード、アレはどうするきだ?」
怒ったような男の人の声がする。
ラードは、わたしのお父様の名前だ。
「封印すべきだ」
(封印?)
これってもしかして、私のお母様の話?
「大丈夫だよ。彼女に悪の心はない。このままにしておこう」
お父様は、やっぱり優しい。
ダンッと、テーブルを叩く音がした。
「禁術で生まれたアレに情緒なんてない!あの禁術は代償がいるんだ。お前の寿命と、襲いかかる災い!あんな力を野放しにしていたらまた国が……!」
「情緒は俺が教えていく。……ハクは少し真っ白なだけだ。優しく接すればきっとそのとおりになる。俺は信じてるよ」
「······お前は甘い。いつか身を滅ぼすぞ」
「どのみち長くないからな」
「私はとてもだがあんな化け物······」
ガタンと音がした。
「は、ハク聞いていたのか」
ゴウと音がし、
「うわああぁ」
男の叫び声と炎が燃えるような音がする。
続いてお父様の必死な声が。
「ハク!やめてくれ!!」
私は信じられない思いで炎の音を聞いていた。
(なにこれ、うそよ。お母様がこんなことするなんて。)
「ゼル、しっかりしろ!」
「だ······から、言ったんだ。こいつは人を殺すために生まれたんだ。心なんて······」
それでもお父様は、
「違う、救うために生まれたんだ。今は怒りの感情しかもたないかもしれないが、俺が必ず変える!」
「だから、消すなんて言わないでくれ······」
(お父様······)
お父様がどれだけお母様を思っていたか、痛いくらいに伝わってきた。
(でもきっとだめだったんだ)
だってお母様は今どこかに封印されているから。
(私、この会話を前にも聞いたことがある気がする。どうしてだろう。まだ生まれていないはずなのに。)
その間も炎は燃え続けていたみたいだった。
こんなのは嫌。
お母様、貴方を想うお父様の気持ちを傷つけないで。
こんなことしないで。
お母様が笑顔じゃないと、私は、お父様は、悲しい思いをするのー······
意識だけの世界で私はきっと今、泣いていた。